はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

くるみ

2007-08-24 07:21:06 | マンガ
「私なんか」と何回言った?
 人生はアミダくじ。選ぶのはあなた。幸せじゃないのはあなたが自分で選んでいないからよ。
 戦士(ウォリアー)におなり。人生は戦って勝ち取るのよ。
 
「くるみ」深見じゅん

 山田くるみ31歳。結婚して滝井くるみ。子供はいない。夫の親族経営の会社で経理を勤めるが給料は出ない。家事も任されっきりでなかなか休む暇もない。ひさしぶりに会った友達と一緒に豪華ディナーを楽しみたかったが、お金がなくていけなかった。ぽつんと待ち合わせ場所のデパートで佇みながら思い出すのは、友達と会う前に偶然再会した後輩の柿崎美也。大学で東京に行き、見違えるほどに美しく成長した彼女の横顔を思い出した。大恋愛、田舎では考えられない東京での暮らし。「私なんか」と心の中でつぶやくと、不意に声をかけられた。誰にも見えない、自分にしか見えない謎の老女。魔法のような言葉で彼女は目覚めた。
 一ヶ月だけの期限付きで、くるみは家出をした。家からも亭主からも遠く離れた東京で、たったひとり生活を始めた。日割りで貰いながらの飯処「きよい」でのバイト代は時給780円だけど、お金じゃない生きてる実感を感じられることにくるみは楽しさを覚えていく。そのためならば、寂しさも心細さも目じゃない。 そんなくるみに、周りの扱いは手厳しい。「30過ぎて家出……なにやってんだか」、「人生甘く見るなよ30のお姉ちゃん」「そんな嫁をもらった亭主がかわいそうだぜ」、「うっとうしい。早くすませてさっさと帰れ」、「家出するくらいならなんで結婚したんだ?」……などなど、きつい発言が飛び交う中、わかってくれる人もいる。きよいの夫婦に出入りの魚屋の妻。自分で勝ち取った人との繋がりの中で、くるみはいったい何を見つけるのか……。
 少女漫画も抵抗なく買えるのはアマゾンのいいところだ。読んでみるとなかなかどうして名作が多い。この「くるみ」もその中のひとつ。金も才能も美貌もない31歳の人妻が何に出会いどう成長していくのか。世の男性諸君にとっては洒落にならないテーマだが、自分がもしくるみと同じ立場になったとしたら、きっとすごく興奮すると思うのだ。いつでもどこへでも行ける自由な生活。新たな環境と友人。閉じこもっていた殻の破れる音が聞こえるほどの大変革。嬉しくて楽しくて、眩暈がするんじゃないかと思うのだ。今後、例えどんなに辛い現実が待ちうけていようと、その一瞬だけで生きていけるというほどの眩暈が。

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