はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

鉄風(4)

2011-06-30 00:28:07 | マンガ
鉄風(4) (アフタヌーンKC)
クリエーター情報なし
講談社


「鉄風(4)」太田モアレ

 来たる女子格イベント「Ggirl」に参加するべく、続々と精鋭が紙面に集う。グラップリング最強・本間三津子、対する東の女帝・紺谷可鈴。リンジィにユズコ、女子プロ連……。 
 是非出なければと焦る夏央に課されたのは、可鈴からの課題。グラップリングのみのイベントに出場し、参加させるだけの説得力を魅せること。この土壇場で、夏央の秘められた才能が開花する……。

 個人的に、女子プロって好きじゃない。女性同士が髪を掴んで「うらー」とか「バカヤロー」とか叫んでるのは美しくない。今もその思いは変わらず、そのせいか、女子格も見たことがない。男子に比較してミニマムなイメージがあるのもある。
 でも、最近株価が上がってきた。「オールラウンダー廻」のマキちゃんや、この漫画の夏央たちのおかげ。彼女たちは美しい。それは見た目というだけでなく、精神性まで含めて。闘争心、求道心、システマチックな思考の筋道のたどり方のひとつひとつが美しいと思う。
 夏央の場合は、ユズコを圧倒し、ぼろぼろにしてやろうという黒い人格が素敵。他の人間はその踏み台にしかすぎないという思い切り方も。本巻では、その性格に加えて秘められた才能までも開花して、とんでもないことになっている。いやまさか、こんなに強くてひどいとは……。これで引きこもりのお兄さんパートがなければ最高の漫画だけどなあ……。

魔女

2011-06-26 13:55:41 | 小説
魔女 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋


「魔女」樋口有介

 アフロヘアーの母、テレビリポーターにして自由奔放な姉・水穂、実業家にして雇い主な恋人・美波。3人の強い女に囲まれた主人公・広也は、大学を卒業したにも関わらず定職を持たず、美波のガーデニング業を時折手伝うモラトリアムな日々を過ごしていた。未来への展望も気力もない広也は、ある日、大学時代の恋人・千秋の死を知る。
 特ダネの匂いを感じた水穂の命令で、千秋の死の真相を探る広也。次々と浮かび上がる、とても同一人物とは思えないような様々な千秋の姿に、広也は困惑する。いったい、彼が付き合っていたのは誰だったのか。死んだのは、本当に千秋だったのか……。

 ま、いつものやつです。さすがにぶれない、青春ハードボイルド職人、樋口有介。
 広也と千秋のつき合いは、たかだか3か月だけのもので、実際たったそれだけのつき合いで彼女の何がわかるという感じはするのだけど、それでもあまりにも証言者と自分の持っているイメージの食い違いがひどすぎて、そこがミステリな部分なわけです。死んだのは千秋なのか。千秋だとして、じゃあ20何年かの人生の中で、広也に見せたその一瞬の姿は、いったいどういう意味のあるものだったのか……。

「あんた、フロイトの初歩も知らないの」
「なんだよ」
「忘れるためには分析と認識が必要なの」 

 ところで、作中のこんなセリフにふと感じるものがあったのは、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」の影響がまだ残っているせいかもしれません。分析と認識、知ろうとしなければ、考えようとしなければ、忘れられないことってある。そういうことですかね。

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない

2011-06-24 19:36:58 | アニメ
あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 1 【完全生産限定版】 [Blu-ray]
クリエーター情報なし
アニプレックス


 引っ越し。転職。いろいろ忙しいので更新ペースが遅くなってます。

「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」

 最終話見ての感想。
 ちょっとした事故からいなくなってしまった小学生時代の幼馴染にしてみんなのアイドルだったメンマ(あだ名ね)が、主人公にしてみんなのリーダー格で、いまはひきこもりやってるじんたんの目の前にだけ現れるようになった。メンマがいうことには、メンマの願いを叶えれば、メンマは成仏できるようになるらしいが、その願いを本人自体が知らないし、周りのみんなもメンマのことが見えず、メンマ死亡の件がもとで仲が疎遠になっている。でも、メンマの成仏のためにはみんなの協力が必須なので、あの頃の友情を復活させなくてはならない。
 みんなの、そして主人公であるじんたんの未練の物語。きちんと「じゃあな」ができなかったあの娘への、お別れの物語。
 終わり方に関してみんな違和感を感じているようだけど、個人的にはまったく違和感を感じなかった。むしろ、きちんとお別れができて拍子抜けしたくらい。最近のアニメは親切設計すぎるから……。
 最終話は、みんな号泣だった。視聴者が、ではなくて、登場人物が。不本意な形で別れてしまったメンマに抱いていた、みんなの屈折した感情があふれ出して、僕は堪らない気持ちになってしまった。自分の本音をぶつけられる相手がいることの幸せ、いないことへの不幸せ。大人になると、正直でいられることのほうが少ないよね。
 2011/3/11の大震災を例に挙げるのは汚いだろうか? ある程度の年齢を重ねればわかると思うけど、人生には、きちんとしたお別れができることのほうが少ない。むしろ突然に、「じゃあな」の一言もなく会えなくなる、そういう局面のほうが多い。本人が、どれだけその人のことを思おうと、思われようと。状況だけが動いて、連絡だけが途絶する。そのまま二度と、回復することはない。
 そういう経験をしたうえでこのアニメを見ていたら、幼いころの思い出や、現在の状況がオーバーラップして、涙が止まらなくなってしまった。言いたかったこと。言えなかったこと。守りたかったもの。守れなかったもの。現在の状況。あり得たかもしれない未来。いろんなものが、一気に肩にのしかかってきた。その重さと悲しさに、ひたすらうちひしがれた。本当はね、やりたいことがあったんだ。あなたのために。自分のために。今では伝わらないし、伝わっても意味がないことかもしれないけど。
 でもひとつだけいえること。それは、あなたを愛していたということ。あなたを守りたかったということ。あの日、あの空間が、あなたと共に佇んだあの陽だまりが大好きだったということ……。



鉄風(3)

2011-06-16 15:32:53 | マンガ
鉄風(3) (アフタヌーンKC)
クリエーター情報なし
講談社


「鉄風(3)」太田モアレ

 女子格闘技界のスター・紺谷可鈴のジムに入門し、本格的に総合格闘技を学び始めた夏央。アマチュアの大会に出場し、早速1RKOするなどさすがの実力。
 さて、馬渡ゆず子と戦うためにはどうしたらいいのかしら? と思ってそちらに目をやると、ゆず子と同レベルの実力のリンジィが、日本の女子総合格闘技界の次期エースを鼻歌まじりで粉砕していた。
 奴らの領域はいまだ遠い。寝技がおぼつかない今の私では、きっと相手にもならない。でも、夏央は思うのだ。私が頑張ったら、絶対いける。いって、戦って、その笑顔を潰してあげる……。

 MかつSなビッグ女子高生・夏央のダークな感情が相変わらず素敵。僕っ娘空手家・我如古の挑戦を圧倒的戦力で退け、心折れるまでいたぶる様にはぞくぞくさせられた。こういう主人公で、しかも女子ってのはなかなかいない。この先も是非続いてほしい。

僕は友達が少ない(5)

2011-06-13 20:40:40 | 小説
僕は友達が少ない (5) (MF文庫J)
平坂 読
メディアファクトリー


「僕は友達が少ない(5)」平坂読

 父親の隼人からの電話を受けた小鷹は、その内容に驚いた。なんでも、星奈の父親が、娘と小鷹が結婚するものと思いこんでいるらしいのだ。
 ということは、星奈もその話を聞いているのだろうか。互い身に覚えがないこととはいえど、これは気まずい……。と思ってどきどきした小鷹だが、当の星奈はそんなそぶりも見せず、いつものように小鳩を偏愛し、一緒に遊園地に遊びに行こうと複数で行けるタダ券を持ってきた。
 そんなこんなでいつものメンバーが集った遊園地編。いきなりの絶叫マシーンで全員の度肝が抜かれまくったあとは、それぞれ思い思いの形でアトラクションを楽しむ流れ。夜空と星奈は怖い乗り物苦手のくせに、互いに意地を張って絶叫マシーン連続乗車のチキンレースを展開。マリアは食べ物という食べ物を食べまくり、高度の高い乗り物に乗りまくって大笑い。小鳩は小鷹と一緒に回りながら、子供だましのヒーローショーに大人げなくつっこみ。理科は絶叫マシーンのせいで恐怖の臨海を越え、放送禁止用語を吐きまくる暴言マシーンに。幸村はなぜかひとりだけメイド服で登場、冷静な顔でなぜかお経をとなえながらマリアの付き添い担当。それぞれがそれぞれのキャラに合った残念な楽しみ方をしたあとは、食事と温泉施設での入浴タイム。そこでなんと、驚愕の展開が……。

 あー、面白かった。「カンピオーネ」「電波女と青春男」「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」に次ぐ、個人的に楽しみなライトノベルの4強。今回もきっかり楽しませてくれました。
 星奈と小鷹が結婚? という前回の引きは当然のように軽い扱いをされてた。まあこのへんはいつものことだからしょうがない。遊園地で小鳩と小鷹と3人、できちゃった結婚したヤンキー夫婦に見られたりとかで、きっかりフラグは回収してたのでいいか。夜空は全編通して、小鷹に近づきたいというか小鷹に他の女を近づけたくない気持ちが表に出てた。ただ、キャラ的にそんなに出張るキャラでもないのでいまいち印象が弱い。要所要所でぼそりと吐く本音が可愛い。ちなみに、後半一気の巻き返しが有った。あとは理科と幸村だろうか。完全にイロモノキャラで、小鷹争奪にまったく名前の挙がらなかった2人だが、今回目覚ましい活躍を見せた。とくに幸村、まさかまさかの設定が炸裂して、個人的にも好感度アップ。夜空、星奈に勝るとも劣らない存在感を見せつけてくれた。

ミル(2)

2011-06-05 01:30:59 | マンガ
ミル 2 (ビッグコミックス)
クリエーター情報なし
小学館


「ミル(2)」手原和憲

 見た目は女子高生なのに、中身は猫でばあちゃん。86歳の化け猫・ミルとの同居生活にも慣れたアキの前に、新たな化け猫が現れた。彼女の名はハナ。通称鼻ピンク。ミルと違って見た目も中身も15歳だけど、そのぶん経験が足りず、野生っ気が抜けない。アキの通う大学構内で人気者だった(猫時代に)彼女がもう猫の姿に戻らない理由とは? アキも所属する猫好きサークル「CCC」の操作網を、彼女は逃れられるのか? 

 佐賀弁ばりばりの化け猫・ミルが可愛いシリーズ第2弾。
 携帯電話を買いに行ったり、アキと2人で学祭を回ったり、アキの家でサークルメンバーとハナと共に鍋をつついたり……ミルがいるそれらの風景が、そんなに長く続くものではないと知っているから、とても面白くて悲しかった。失うことばかり考えてないで、今を楽しもうというミルとハナの会話もいじましくて切ない。彼女らの生活が楽しそうなだけに、そのあとのことばかり考えてしまう。だってなあ……ミルはあの外見のまま歳をとらないわけだもんな。アキが良くても、周囲の目があるし、なら同じ場所には10年以上住めないし、サークルメンバーの前にだって、いつかミルが姿を見せるわけにはいかなくなる。アキだって、仕事とかどうするんだ? そう考えると、暗い未来予想図にぞっとせざるを得ない。
 ともあれ、面白かった。中高年には共感され、若者達にリスペクトされるミルの価値観と生活能力と対人スキルが、外見とのギャップで効いている。こういうおばあちゃんっぽい娘が現実にいたら「ほお~」と感心して眺めてほっこりしてしまうと思うもんなあ。うん、ミルいいよね。
 ラストの引きも良かった。実家に帰省したアキの前に転がり込むトラブルと切なさとミルの嫉妬。早く3巻出ないかなあ。でも月刊誌だからな……本誌購入するか、うーん……。