はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

マージナル(3)

2009-03-29 18:06:37 | 小説
マージナル 3 (ガガガ文庫)
神崎 紫電
小学館

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「マージナル3」神崎紫電

 連続猟奇殺人犯・クロウメモドキとの対決も佳境にさしかかり、いよいよもって窮地に追い込まれるヴェルツェーニこと摩夜京也。闇の世界のフィクサーなんて呼ばれるわりにはステレオタイプな過去の幻影に叩きのめされまくりで息も絶え絶えで、正直いって幻滅した。肉弾戦は強くなくたっていいけどさ、精神的にその脆さはねえ……。最後の決闘もけっきょくは「それ○○○でしょ?」と、まあ答えはいえないけど、あまりにもつまらない結論だったし。
 一方、ヒロイン南雲御笠ももう1人もピンチらしきピンチには遭遇せず残念。作品の傾向からすればいくらでもひどいめには合わせられたはずで、はっきりいって「日和りやがったな」という印象。
 エピローグもどっちつかずという感じだったし、2・3巻は蛇足だった。1巻だけならよかった。御笠を殺したい京也のぎりぎりの葛藤がエロティックに書けていて緊迫感があったものなあ。返す返すも残念な作品。

脳内格闘アキバシュート(3.4)

2009-03-27 23:06:53 | マンガ
脳内格闘アキバシュート 4 (4) (アクションコミックス)
本田 真吾
双葉社

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「脳内格闘アキバシュート(3)、(4)」本田真吾

 キックのプロテストに合格した脳内格闘家・秋庭秀斗はトーナメントでは一回戦でコテンパンにノサれたけれども、匿名掲示板では現役プロであることで調子にのりまくり、コテハン「闘神」を名乗るちゃんねらと言葉の勢いでスパーリングすることとなってしまう。
 さぞや口先だけの格闘オタクが現れるだろうと思いきや、深夜の公園に現れたのは、元柔道五輪候補・柔の神童こと神崎信だった。
 多くのちゃんねらが見守る中で公開処刑された秋庭。即座に挫折しかけたところを氷堂真理愛に救われる。首相撲からの膝蹴りという秘策を胸に試合に臨む。
 で、神崎との試合が衝撃的な結末を迎えたところで、突如の打ち切りモード突入(!)。
 タイ(?)での修行から帰ってきた秋庭、氷堂ジムを裏切った梶原と直接対決へ。氷堂とはなぜだかいい雰囲気になっているし、修行の成果もあんまり見られないし、オチもあまりにひどい。いやまあ、打ち切りじゃ精一杯なんだろうけど……これではあまりにも……。
 作者もあとがきで書いているように、好き嫌いの別れる本作、どうしようもない主人公がけっきょくどうしようもないまま、という構造的欠陥を持ったまま終了となってしまった。

月光条例(4)

2009-03-25 15:55:26 | マンガ
月光条例 4 (少年サンデーコミックス)
藤田 和日郎
小学館

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「月光条例(4)」藤田和日郎

 月の光の呪いによって、歪んでしまった童話の世界を正さねばならぬ宿命を背負った主人公・月光は、本当のことがいえない意地っ張り。美味しいものはまずいし、気持ちのいいことは気持ち悪いし、好きなものは嫌い。ヒロイン役のエンゲキブは、そんな月光のことが好きだけど、面と向かって好きとはいえず、なぜか他の男をとっかえひっかえしてしまう。藤田和日郎らしい意地っ張りばかりが集った本だけに、敵役とのやり取りもすんなり素直にとはいかない。それぞれに譲れない主張をぶつけ合い、血や涙を流しながら「本当に大事なもの」をその手に掴むために戦う。
 そういったことを、童話の中の主人公たちにやらせてしまうのが面白さ。子供向けに作られた、ほのぼの暖かかったりきっちり教訓的だったりする、お高くとまったお話たちに対する疑問「おまえら、本当にそれでいいの?」というクエスチョンが、気持ちいいほどに浮き彫りになって表現されている。
 それだけに、短編よりも感情移入の出来る長編のほうが面白いのだけど、前巻から引き続いての「シンデレラ」が終わったあとは、短編が連続していたのが残念。もっと長く、そしてもっと熱い主張を読ませてほしい。 

眠り姫

2009-03-23 00:44:42 | 小説
眠り姫 (富士見ファンタジア文庫)
貴子 潤一郎
富士見書房

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「眠り姫」貴子潤一郎

「12月のベロニカ」でファンタジア長編小説大賞を受賞した同作家の短編集。本当は「12月のベロニカ」にしようとしていたのに間違ってこちらを購入してしまったあの時の自分に数年ぶりに気づき(積み本だった)、なんともいいようのない後悔をしている。
「眠り姫」この表題作が「12月のベロニカ」の外伝だというが、肝心の本編を読んでいないのでよくわからない。バセドー病により一日の大半を眠って過ごすことになったヒロインと主人公の切ない恋愛物。徐々に長くなっていく睡眠時間が2人の絆をもぎとり、疑似タイムスリップのような感覚を味わえる。
「汝、信心深き者なれば」王と12使徒による議会制の敷かれている架空の中世のとある領主の悪政とエロとしっぺ返し。オチがすっきりしない。そういう設定である必要ってあったのかな? 手癖みたいなもんだと思うのだが。
「さよなら、アーカイブ」読書感想文コンクールで賞をとるために架空の書籍を作り出した主人公と、その存在しない書籍を読みたいとせがむ図書館司書のとある青春。テーマがきれいで好印象。もっと膨らませて長編にしたのが見たい。
「水たちがあばれる」12時間ごとに満ち引きを繰り返す怪しい水によって人口の激減した未来。最後に残った13人の間で起こる不和と殺人。SF……なんだろうけど、情景が思い浮かべられない。浮かべられないところに生々しいキャラ間の愛憎がきて、胃にもたれた。
「探偵真木1~3」ヤクザの下請けをして糊口をしのぐ、正義ではない探偵・真木の3連作。ハードボイルドかな。軽口ばかり叩く主人公の真木が気に入るかどうかで評価は別れるところ。信念が感じられなかったので僕は好きになれなかった。事件の解決方法もかまかけに比重をおきすぎていてマイナス。しゃべくりだけで解決するといえば聞こえはいいけど……。2作目のヤクザたちと麻雀を打つシーンは良かったんだが。
「さよなら、アーカイブ」が良作で、他はどれもいまいち。ジャンルもばらばらで、読んでいて落ち着かない。
 ところでこの人の名字はなんて読むのだろう? きし? たかこ?

図書館革命

2009-03-19 19:35:01 | 小説
図書館革命
有川 浩
メディアワークス

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「図書館革命」有川浩

 メディア良化委員会の検閲に真っ向から抵抗する図書館との戦いの日々を描いた人気シリーズ最終巻。
 テロリストによる敦賀原発襲撃を端とする対テロ特措法の可決は、襲撃事件と酷似した内容の小説を書いた当麻蔵人の身柄拘束という形で言論・表現の自由を侵そうとしていた。転がり込んできた当麻を守ろうとする図書基地の、図書館特殊部隊の戦いは、いよいよもって熾烈を極め、ついにあの人が凶弾に倒れてしまう……。

 最後だけあって、さすがに規模もノリも段違い。実力人脈権力をフル活用した多角的な「戦い」は、これまでの積み重ねを踏まえた説得力のあるもので、メディア良化委員会と図書館の存在そのものの立脚にも迫る、意義ある戦いだった。また、事件そのものも、同じく原発で働く身としては他人事ではないし、漫画から着想を得た犯罪の増加による現代の状況との絶妙なオーバーラップは、言論統制へと傾く不吉な未来を想像させて、より一層の緊迫感を生んでいる。
 郁と堂上の関係も、いよいよ佳境に迫っている。初デート。手を繋いでの基地への帰還。不器用な2人の距離は、大事件を経ていよいよ臨界へと達する。気恥ずかしさもベタ甘も、過去最高の最終巻は、必見の完成度の高さだ。意外にあっさりしたラストも、余韻を残していて良い。

ぷりぞな6(1)

2009-03-17 19:18:03 | マンガ
ぷりぞな6 1 (サンデーGXコミックス)
金月 龍之介
小学館

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「ぷりぞな6(1)」作:金月龍之介 画:KOJINO

 えー。むかーしむかし、イギリスで「プリズナー№6」というドラマがありましてですね。
 諜報員だった主人公が組織を抜けようとしたところ、催眠ガスによって眠らされて、目が覚めると見知らぬ村に拉致られていた。そこは地図にも載っていない国籍もない村で、村人は名前もなく皆番号で呼ばれていて、主人公もまた自らの出自を隠しつつ脱出を図るけど毎度捕まるという……。
 本作はそれをもろに下敷きにしています(その割には出典書いてないけど)。主人公の女子高生は№6でむっちん。ある日目が覚めると国籍のない島にいて、ついでに記憶も失っている。他に苺、二胡、珊瑚、ごっちん、ナナコという数字に由来するあだ名で呼ばれている女の子たちがいるんだけど、彼女たちも誰一人として自らの出自を覚えておらず、食料も配給物資(!)も届く島の平穏な生活に慣れきっていて、自ら脱出しようという志を持っている者はいない。
 とまあここまで書いた時点で違和感バリバリなわけで、来たばかりのむっちんは環境も住人ももちろん信用できない。その孤独感が話を動かす原動力になる。島の秘密を探るため、山に分け入ったむっちんの行く手には、驚くべき真実が待ち受けていた……。

 下敷きが下敷きなだけに、さすがに面白い。どこか郷愁の漂う島の家々のたたずまいも、ロリからメガネ、大人の魅力まで幅広い読者層を狙ったキャラ設定も悪くない。何よりナイフ二刀流で島を駆けずり回る、元気で男前なむっちんの姿が見ていて非常に気持ちが良い。良作。

ジウI 警視庁特殊犯捜査係SIT

2009-03-14 15:33:09 | 小説
ジウ〈1〉―警視庁特殊犯捜査係 (中公文庫)
誉田 哲也
中央公論新社

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「ジウI 警視庁特殊犯捜査係SIT」誉田哲也

「武士道シックスティーン」で人気の誉田哲也が描くは警察モノ。主人公が2人とも女性で性格が正反対、と書くと前著を想起するかもしれないが、いや全然違います。
 レスリングと柔道を極めた基子は、戦い凌ぎ合う中にしか生の意味を見いだせない「武」な女性だし、交渉担当の美咲は人当たりが良く犯人の説得の他、頑なな被害者遺族の心をもほぐすことのできる優しい女性。2人は共に警視庁捜査一課の特殊犯係に属していたが、とある籠城事件をきっかけに道が分かれる。
 武の才能を認められた基子は、特殊急襲部隊、いわゆるSATに編入され、さらなる戦場へと駆り立てられた。籠城犯人のなすがまま、あられもない姿を全国に晒した美咲は、碑文谷署の交通課への転属を命じられた。ソリが合っていたわけではない2人は別々の道へ進み、今後一切関わり合うことなどないと思われていた。
 籠城事件の犯人・岡村の語る謎の男・ジウ。ジウの起こした誘拐事件。かつて警察が敗れたその事件に挑む東警部補と美咲。バラバラな捜査本部。SATで訓練に励む基子に突き刺さる男たちの侮蔑の視線。雨宮と基子のさばさばしたロマンス。様々な要素が渾然一体に絡まり合い、そして基子と美咲は再会する。そこは、血と硝煙の匂いの漂う戦場だった……。

 警察という圧倒的な男社会で生きる2人の女性には様々な危難がふりかかる。だけど2人はめげず、2人なりのやり方でそれにあらがい、それぞれの居場所を確保していく。
 その姿がいいな、と思える。可憐で、逞しくて、儚げで、目が離せない。本当に、この作者は女性を書くのがうまい。男性作家、なんだろうけど、いつも感心させられる。 
「武士道シックスティーン」みたいな爽やかさはあまりなく、どこか生々しさが匂う印象なので、そのへんは留意しておくべし、です。

マージナル(2)

2009-03-12 20:37:47 | 小説
マージナル 2 (2) (ガガガ文庫 か) (ガガガ文庫)
神崎 紫電
小学館

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「マージナル2」神埼紫電

 世間を、そして舞台である月森市を震撼させたバラバラ殺人事件を終わらせた摩弥京也に、しかし平穏な生活は訪れていなかった。事件の犯人「エクスター公爵の娘」を粛正したことで、猟奇殺人などの総合アングラサイトの管理人・ヴェルツェーニとしての名声が高まり、結果的に「クロウメモドキ」を名乗る人物よりコンタクトを受けた。「クロウメモドキ」は、殺人者と真人間の境界人間(マージナル)であり、月森市の暗部を支配するヴェルツェーニを牽制する為、大胆な告白を始めた……。
 憎からず思っている同級生の南雲御笠は依然として姉の死を、京也の真実の姿の存在に怯えているし、数年ぶりに再会した宇佐美風香は京也の変貌ぶりに怒り出すしで、実生活ではなかなか報われない京也。忘れたい昔の悪夢に苛まれ、本人も不眠症でボロボロ。唯一絶対的愛情を注いでくれる妹・蘭にも乱暴な言葉をつかって泣かせてしまうし、読んでいて辛い。
 フーダニットはあっさりで、「え、本当にその人でいいの?」と思うような人の家に乗り込む京也。残りページもわずかでどんでん返しもできそうにないし、どうするんだろうとはらはらしていたら、なんのことはない前後編でした。期待していたので良かった良かった。といって裏切られることもあるかもしれないけど……。
 地の文は相変わらず大仰な熟語の連発で、上っ面しか伝わってこなくて読みづらい。まあ境界人間である京也の苦悩と願望の板挟みという状況が面白いからそれでも読めるんだけど。
 今回は新キャラの妹の蘭がいい味出してた。ちょっとべたべただけど、全体的に辛い話の流れの中で、そこだけほっと一息つけた。絶対的愛情ってのはいい。家族でも友人でも恋人でも、その人がいるだけで救われる部分ってある。

放課後プレイ

2009-03-09 14:50:40 | マンガ
放課後プレイ (電撃コミックス EX 電撃4コマコレクション)
黒咲 練導
アスキー・メディアワークス

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「放課後プレイ」黒咲練導

 電撃4コマ初のエロ漫画……ではない。ではないんだけどエロい。エロすぎる。
 一応話の筋としては、高校生カップルの男子の家に毎度女子が訪れ、くっちゃべったりゲームを延々プレイしたりというだらだらした日常漫画なんだけど、女子のほうがかなり積極的で、黒制服に黒タイツというフェチシズム全開な格好で男子の頭を踏んだり首を絞めたりとちょっかいかけまくる。そのくせウブで、というか感じやすい体質で、相手に撫でられるだけで感じてしまう狂いっぷり。
 うちのA君はゲームとはまったく無縁の人生を送ってきた人なので、ゲーマー男子とゲーマー女子みたいな遊びはしたことなくて、そういう意味ではかなりうらやましい。好きだけどまだなんもしたことない女の子と自宅でドキドキってのもポイント高い。
 でもまあ……ちょっとやりすぎの感はある。

哀愁の町に霧が降るのだ〈上巻〉

2009-03-07 21:44:41 | 小説
哀愁の町に霧が降るのだ〈上巻〉 (新潮文庫)
椎名 誠
新潮社

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 これから書く話はいったいなんなのだろうかと、ぼくは早くも分からなくなっている。

「哀愁の町に霧が降るのだ〈上巻〉」椎名誠

 著者のテキトーな学生時代、テキトーなアルバイト歴、テキトーな文筆姿勢などをつまみ食うようにぽつぽつと語りつつ、徐々に徐々ににじり寄るようにようやく触れたのは、様々の奇人変人を寄せ集めた六畳間での同居生活。あ、そうか、青春長編だったのかと気づくまでにえらい時間がかかる。
 椎名誠の著書は正直初見なのだが、こういう作風だとは思わなかった。読者を煙に巻くような地の文が気に入るかどうか、というのがおすすめの境目。六畳間の貧乏酒びたりの生活は、そもそもこの手の作品にたどり着く人なら好きなものだろうし、触れる必要もないだろう。一言だけ言うなら、読後にえらく酒が飲みたくなった。