風の日にララバイ (ハルキ文庫) | |
クリエーター情報なし | |
角川春樹事務所 |
「風の日にララバイ」樋口有介
有名宝石店の美人社長が何者かに殺された。彼女は5年前に分かれた元妻だった。
とある理由から大学を辞め、絶賛無職中の佐原は、お手伝いのお松さんや娘の亜由子に自堕落な生活態度を呆れられながら、いつもの日常を送っていたのだが、元妻の死に感じるところがあって、事件の真相を探ることにする。
元同級生で刑事、元同級生で妻の親友だった老舗宝石店の女社長、退職した汚職警官など、ひとくせもふたくせもある連中と渡り合いながら佐原は徐々に真相へと迫る。
妻よ、どうして君は、殺されねばならなかったのだ……?
切なる声が、真実の深い闇へと光をもたらす。
まあ、いつもの樋口節です。柚木草平と佐原を入れ替えてもまったく問題なく話が通じる、というくらいキャラも似てます。マンネリ? うん。でもこれがいいんだよね。樋口ファンってみんなそうでしょ?
ヒロインは、大学で彫金を学ぶ萌。ポニーテールに少林寺拳法に明るい性格、という、樋口作品にしては珍しいタイプ。少年漫画にでも出てきそう、という意味で。
とめどもなく流れる時間と、それぞれの人間関係の中に降り積もった澱と、倦怠感の間で揺れ動く佐原を軽やかに爽やかに癒し、ついでに心までも融かしていく様は、微笑ましく愛らしく、描写が少ない割には印象深かった。
佐原の研究家としての側面や、大学辞めた設定などがなにひとつ生きていないのは残念だけど、ところどころに光るコミカルな要素(お松さんとか)や素敵な未来予想図のおかげで、最後まできちっと楽しめました。
願わくば続編やスピンオフを、といいたいところだけど無理ですかね。なにせ15年前の作品だし。佐原・萌コンビ好きなんですがね。この2人とお松さんと亜由子も含めた絡みを見て見たい。
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