はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

月見月理解の探偵殺人(2)

2011-11-29 15:35:50 | 小説
月見月理解の探偵殺人 2 (GA文庫)
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ソフトバンククリエイティブ


「月見月理解の探偵殺人(2)」明月千里

 あの事件からしばらくたった。都築初は、相変わらず妹とギクシャクしたまま、同級生の宮越さんとは普通に接するようになり、所属する放送部の京にこき使われるという普通の日々を送っている。あの狂気の少女・理解がいた頃とは違う平和な日々……。
 だがそれは、一人の少女の出現と共に壊れた。彼女の名は星霧交㖨(イスカ)。実の姉・花鶏(あとり)を殺すことを目的としているという彼女は、初と妹のいざこざの元凶である、初の父の死の訳を知っているらしい?
 動揺する初の前に再び理解が現れ、すったもんだの末、京も含めた4人全員が、「ノアズアーク」と呼ばれる怪しいシェルター施設に閉じ込められることに。そこにはすでに何人かの先客がいて、初らと共に、冷徹なルールに支配された脱出ゲームの参加者にされていた……。

 こ、このシリーズ続いてるのか……と変な感動を覚えた。いやだって、こんなアクの強い作品なかなかないぜ……? どういう人が読むの……? 
 まあ僕ですけど。
 ともかく、相変わらずクセのある作風だった。理解の他人に対する凶悪さは増す一方で、初はあんまりそれに対応できてなくて。宮越さんは可愛いなと思うけど、出番少なすぎて泣けた。イスカは……悪くないけど趣味でもないかな。無口少女とか食傷気味なんで。京はキャラづけがぶれてたかな。理解のせいだとは思うのだけど、豪放磊落キャラになりきれてなかった。
 あとはゲームなんだけど……無理矢理すぎじゃね? 内容も変に複雑にしてるけど、結局は人狼ベースのままだし。もうちょいひねりが欲しい。デスゲームものは好きなんで次巻も読むけどさ……もうちょいなんつうか……。

社会的には死んでも君を!

2011-11-27 01:56:04 | 小説
社会的には死んでも君を! (MF文庫J)
クリエーター情報なし
メディアファクトリー


「社会的には死んでも君を!」壱日千次

 とある男子高校生・薩摩八平には、ある呪いがかかっている。それはラブコメ現象と呼ばれるもので、転んだ拍子に女の子のスカートの中に頭を突っ込んでしまったり、何の気なしに頭をかこうとした手が女の子の胸にあたってしまうという現象だ。漫画や小説の中ではよくあることだが、現実で起こってしまうと当然リアルに変態扱いされてしまう。そのために八平は努力していた。各種漫画や小説で知識を蓄え、いつ何時強制力が働いても平気なように体を鍛え、運命に抗おうとしていた。中学時代は、力及ばずに変態の烙印をおされはぶられていた。
 そんな八平にも味方が一人いる。それは幽霊の香月だ。アイヌの着物のようなものを羽織ったこの美少女幽霊が、幽霊故の視界の広さで八平に危機を教えてくれる。まあもともとが、ラブコメ現象が起きるようになったのは香月が八平にとりついてしまったせいなので、当然の手助けといえばいえるのだが、八平は常に彼女の献身に感謝していた。ぶっちゃけ愛していた。他人からは見えも聞こえもしない存在である彼女と添い遂げようと心に決めてすらいた。たとえ周りからどんな目で見られようと。社会的には死んだとしても。

 序盤の無理矢理くさいハーレム展開な出会いシーンの連続と、地の文のくせがひっかかって、ちょっと読むのに手間取った。ストーカー気味の義姉や、思い込みマックスな級友、品行方正文武両道な生徒会長など、直球テンプレートなハーレム要員たちも鼻について、半ばまでは読むのをやめようと思っていた。
 後半になって香月の存在を揺るがす事件が起き、そこから一気にイメージが変わった。八平だ。魅力的な女性たちに慕われ好かれ、ふらふらしていた彼が、きちんと香月を愛していることが伝わってきたのが原因。一途にまっすぐに香月を求める彼がかっこよかった。もちろん、香月が受け入れてくれても、2人は愛を口にすることしかできないのだけど。そのもどかしさも含めて良い話だった。
 昨今の鈍感ハーレム体質主人公たちの作品群とは一線を画す本作。次巻にも期待です。

レイヤード・サマー

2011-11-24 19:48:29 | 小説
レイヤード・サマー (電撃文庫)
クリエーター情報なし
アスキー・メディアワークス


「レイヤード・サマー」上月司

 黒瀬涼平のある夏の朝は、いつものように幼馴染の茜野々子の説教から始まった。可愛くて面倒見がよくて、誰からも愛される委員長な彼女との、とくに何事もない平和な日常は、一人の女性の登場で壊れた。
 流堂庵璃。怪我を負って倒れていた彼女を救った涼平は、その美しさと女っぽさにどきどきしながら一夜を過ごす。初めて出会ったはずの彼女はしかし、涼平の素性を知っていた。涼平がもうすぐ死ぬことまでも……。
 未来から犯罪者を追って来たという彼女は、涼平にその犯罪者に関わらないように告げる。
 狐につままれたような心持ちの涼平。しかし彼女の真剣さを信じた彼は、約束通り、犯罪者に関わらないようにしようと誓う。
 翌朝、彼が起きた時には彼女はいなくなっていた。
 そうか、彼女は犯罪者を探しに行ったのだ。
 ならば、彼女を助けねばならない。
 命を賭けた戦いに挑むことになった一高校生の涼平の、夏の日々。
 時間跳躍が描く、甘く切ない思い出を君に……。

 タイムスリップの考え方が珍しくて(SF界ではどうか知らないけど)、なんでも、時間は上書きされていくものらしい。つまり、積み重なっていく変革された未来の影響を受けない。ダメだった過去は、ダメなまま。
 でもそれって、ただの自己満足なのでは……。
 どれだけ頑張って過去に影響を及ぼそうとも、変わらない世界がきちっとある。それは悲しい。
 そんなお話。作者あとがきによると、庵璃が「わざと」涼平に語らなかった設定があるそうなのだけど、僕にはよくわからなかった。解釈も間違っている可能性はある。
 でもまあ、文句なく面白い作品。野々子の涼平への一途な想いや、それに答えられない涼平のまだるっこしさや、庵璃のまっすぐさ、最後のお別れシーンに至るまでが丁寧に描かれていて良かった。タイムスリップものに外れなし。彼らがいた夏の夜の匂いを思って切なくさせていただいた。

この彼女はフィクションです。(4)

2011-11-21 20:04:34 | マンガ
この彼女はフィクションです。(4) <完> (講談社コミックス)
クリエーター情報なし
講談社


「この彼女はフィクションです。(4)」渡辺静

 フーコ先輩の自作キャラ・アムのヤンデレぶりに悩まされながらも海や遊園地へと遊びまくって楽しい夏休みをおくるユーリ。ミチルや文芸部の綺麗どころにいじられ好かれ、フーコ先輩との恋も実り人生花盛りな彼に、最大のピンチが迫る!?

 ううむ……とうとうこの日が来てしまったか……。
 感慨深い気持ちで手にとった、第4巻にして最終巻。
 3巻の最後に登場したフーコ先輩の自作の小説キャラの具現化たるアムが、どう絡んだ上に最後を迎えるのか不安でしょうがなかったのだが、意外やきっちりまとまっていた。彼女に関してもう2、3話欲しい気はしたが、それでもうまいこと存在感をアピールしていた。ヤンデレ成分はミチルで間に合っていたので、フーコ先輩の手のかかる妹的なポジションを追及していってくれれば、もう少しよくなったかも。まあいまさらだけども。
 それでは各キャラについて。
 ユーリ:友達も恋人もいない、だけではなく、けっこう過酷なイジメにあっていたせいで他人と接することに臆病になっていた彼が、4巻とおして一番成長したようだ。フーコ先輩と相思相愛にもなったし、友達もできたし、部員にもなじめたし。そして、一番大事なことだけど、ミチルを生み出したことの責任をとってくれた。男としてのけじめをつけた。自分のもっとも恥ずかしい過去に、真正面から向き合うことの怖さは彼ならずともわかるはずで……。
 最後の決断もグッジョブ。ミチルはきっと幸せになった。そう思います。
 フーコ先輩:彼女がメインヒロインであることに異論のある人はいないと思う。近年稀にみる可愛さ。それは最後まで崩れなかった。彼女もまた、才能ある作家故のコミュ症に悩まされていたが、ユーリとの出会いによって確実に変化を遂げた。蛹が蝶になるように、とはベタな例えだが、彼女の場合はまさにそう。今後も陰に日向にユーリを支え、共に人生を歩んで行ってほしい。
 ミチル:フーコ先輩には及ばぬものの、ミチルも可愛かった。ライバルがフーコ先輩でさえなければ、瞬間最大風速で一気にユーリの心を鷲掴みにしていたはず。残念。
 彼女の場合は、存在そのものにも魅力があった。どこまでいっても創作物である悲しさ。思考も嗜好も、行動すらもけっきょくユーリの思い通りでしかないということのむなしさ。
 にも関わらず、ユーリは常にフーコ先輩のことを見ていて……。
 それでも、彼女はユーリを愛した。
 エンディングの行く末は、きっと誰もが想像した通りだと思うけど、それでも僕は、彼女が自分自身の意志でそれを決断したのだと思いたい。プログラムされたユーリの妄想だけでなく、現出した彼女自身の意志として……。
 
 打ち切りなんだとは思うけど、とてもそんなふうには見えなかった。海辺の公園の夜のシーンからの展開はちょっと唐突だったけど(ここに省略されたエピソードがあると踏んでいる)、エンディングのまとめ方もきれいで、不満はほとんど残らなかった。きちんと完走できていた。最後にフーコ先輩が漏らしたように、「寂しい」その想いだけが残った。
 ユーリたちにもう会えないことが寂しい。これは最大級の賛辞です。面白い漫画をありがとうございました。

6000(1)

2011-11-19 10:42:34 | マンガ
6000-ロクセン 1 (バーズコミックス)
クリエーター情報なし
幻冬舎


「6000(1)」小池ノクト

 中国企業・上海巨星に買収された江古田工機の技術屋・健吾は、同じく上海巨星に雇われの身となった先輩・壇崎が先行して入っている仕事に参加するため、フィリピン海の海上プラットフォームを訪れた。そこには上海巨星の高圧的な上司・温がいた。
 ろくに仕事内容も告げられずに6000メートル下にある巨大深海プラント「コフディーヌ」へと連れて行かれた健吾は、道中首元から出血して意識不明の壇崎とすれ違い、さらに多くの信じられないものを見ることになる。その信じられないものとは……。

 日本と中国の巨大企業の思惑とか、高圧的な上司とか、仲良くなれそうもない同僚とか、怪しげな行動ばかりの女とか、原因不明の事故で30数名の作業員が全滅した謎とか、3年もたっているのに今なお「何か」が巣食っているコフディーヌの謎とか、舞台設定の作りこみが重厚で、すんごい面白い。
 この1巻では相手の影くらいしか見えないけど、もったいつけてる感がいかにもホラーって感じで良い。血どばー内臓ぐちゃー、ジェットコースターアクショーンってのもたしかに良いけど、ホラーはやっぱり雰囲気が大事だ。助けの来ない深海で圧壊の恐怖に怯えながらのパニックホラーなんて、最高じゃないか。
 さらに特筆すべきは主人公属する管理業者の方々の施設に対する視点のリアルさ。自分たちのいる施設そのものに対するシビアな認識が、それ故の現状への違和感が、不気味さの相乗効果を起こしていて怖い。これは期待できそう。

この彼女はフィクションです。(3)

2011-11-15 19:33:06 | マンガ
この彼女はフィクションです。(3) (少年マガジンコミックス)
クリエーター情報なし
講談社


「この彼女はフィクションです。(3)」渡辺静

 ミチルとフーコ先輩をダブルヒロインに据えた自主制作映画の主役として、いろんな意味で精神的に追い込まれているユーリ。普通に考えたらミチルやフーコ先輩クラスの美少女と合法的にキスするチャンスがあるなら大歓迎、なはずなんだけど、周囲からの嫉妬はもちろん、相変わらずミチルはユーリの想い人探し(そして殺す)を続けているし、うーん……。
 などと思っていたら、いきなりフーコ先輩がキスシーンをカットしようと言い出した。実はユーリとのキスの緊張に耐えられないために考え出したフーコ先輩の苦肉の策とも知らず、純粋にフーコ先輩への尊敬を重ねるユーリ。がっかりするミチル。自分の身勝手さに胸を痛めるフーコ先輩。3者3様の想いが交錯する中、ついに訪れた学際当日。
 壇上で見つめ合うユーリとフーコ先輩。2人がまさかのマジ告白。さらにマジキスまでしちゃったからさあ大変。真実を察したミチルの殺戮劇が始まった……!

 最後はちょっと嘘。でも想像していなかった展開に驚かされた。まさかこんなにあっさりと、ユーリとフーコ先輩が通じ合うとは。もうちょっともったいつけると思っていただけにびっくり。
 しかしまあ、相変わらずフーコ先輩の可愛さは異常。告白前のドキドキと、告白後のドキドキと、微妙なニュアンスの変化まで含めて眼福の極み。
 ミチルもいい娘だし、可愛いとは思うんだけどねえ……相手が悪いや。もうちょいヤンデレ風に攻めてみると面白くなるかな? それでもユーリの気持ちまでは奪えないだろうけども。存在自体もあれだし、報われない娘じゃ。
 んでだね、そんなことより問題は、こんな面白い漫画が打ち切りってこと。もうすぐ4巻が出るけど、どうやらそれで終わりらしい。はあ~。何がいけなかったのかねえ……。

地球の放課後(1)

2011-11-13 20:19:58 | マンガ
地球の放課後 1 (チャンピオンREDコミックス)
クリエーター情報なし
秋田書店


「地球の放課後(1)」吉富昭仁

 2年前。ファントムと呼ばれる謎の存在の襲撃により、人類は壊滅的な被害を受けた。人間のみを狙って存在を消滅させるファントム。その目的も数も生態も一切不明のまま、なすすべもなく地球の人口はわずか4人になった。
 メガネボブで真面目な早苗。
 茶髪ポニーテールで勝気な八重子。
 元気いっぱい暴走幼女の杏南。
 黒一点の正史。
 住む場所も生活もまったく異なっていた4人は、最後の人類として寄り添い協力し合い、残された物資をやりくりし、畑を耕したりしながら細々と暮らしていた……。

 生鮮食品等は全滅しているので自分で魚を捕まえたり野菜を植えたり。電気は自家発電(たぶん発電機?)。水道は……わからない。ガソリン等はいくらでもありそう。
 人がまったくいない静かな東京の片隅で暮らす彼女らの生活は、とくに泣いたりわめいたりするでもなく、家の屋上で花火パーティーしたり、海で投網しながらクジラを目撃したり、道路にテーブルを持ち出して食事したり、ほのぼのとその日暮らしをしていて楽しそう。
 水の流れや空気の匂いや草木のざわめきや風の行く末を味わう。まったりと、地球の放課後を味わいたい人にはおススメ。
 吉富昭仁というと、個人的には「ローンナイト」みたいな動的な漫画家のイメージしかなかったのだけど、こういう漫画も描けるようになっていたのだねえ。

断裁分離のクライムエッジ(4)

2011-11-11 19:39:17 | マンガ
断裁分離のクライムエッジ 4 (MFコミックス アライブシリーズ)
クリエーター情報なし
メディアファクトリー


「断裁分離のクライムエッジ(4)」緋鍵龍彦

 髪が伸びなくなってしまった祝と、おかげで髪が切れなくなった切。前巻で晴れて恋人同士となった2人は、ちょっとぎくしゃく。
 そんな折、祝の前に一人の幼女が現れた。彼女の名はエミリー。祝の父に拾われ育てられた娘で、造られた受注製品の殺人鬼だった。
 すさまじい切れ味を誇るエミリーの技に圧倒される切。血に塗れながら彼は、突如頭の中に沸き起こった、彼の殺害遺品の根本たるノーマ・グレイランドの記憶と意識に体を乗っ取られていく……。
 
 切覚醒。というかノーマ・グレイランド覚醒編。
 ぶっちゃけそんなに強くなかった切へのテコ入れ。「ぬらりひょんの孫」じゃないけど、シリアルキラーの強さって「恐れ」の強さでもあると思うし、そういう意味では至極まっとうなバージョンアップなのではないだろうか。彼が何を望み、何を思って人の体を切り刻んだのか、その黒い欲望の底の底……までは未だ描かれていないけど、このシリーズの核になる部分のはずなので、今後に期待。
 受注製品に関してはちょっと興ざめ……かな。高名な殺人鬼同士が殺し合うのが売りなのに、殺人鬼を造ってどうするよ。
 恋愛面では、祝と切に関してはとくになし。恋人になった、ってだけの状態。この年齢でゴールとかないだろうしね。まあそんなもんだろう。

はたらく魔王さま!(3)

2011-11-09 01:10:47 | 小説
はたらく魔王さま!〈3〉 (電撃文庫)
クリエーター情報なし
アスキーメディアワークス


「はたらく魔王さま!(3)」和ヶ原聡司

 六畳一間の人間界での魔王城の庭に、異界エンテ・イスラからのゲートが開いた。現れたのは小さな少女アラス・ラムス。彼女はたどたどしいながらも言葉を発することが可能だった。彼女は魔王のことをパパと呼び、勇者のことをママ呼んだ。
 芦屋やちーちゃん、何より当人同士が衝撃を受ける夏の暑い日、魔王と勇者とその仲間たちによる子育て奮闘記が始まった……。

 まさかの子育て編。
 まあこういう展開ってベタだけど、あまり異性として距離の縮まっていなかった魔王と勇者の間を接近させるにはいい方法かもしれない。実際、今回も魔王のいい奴っぷりは健在で、子育てがうまいとはお世辞にも言えないけれど、アラス・ラムスにもきちっと愛情を注いでいたし、あれやこれやで魔王・即・斬だった勇者の気持ちはかなりぐらついたようだった。
 でもそうなるとかわいそうなのがちーちゃん。彼女は今回も、昨今の女子高生にあるまじきスペックの高さを見せつけてくれたのだが、話の流れ上、魔王が勇者に持ってかれるフラグが立っちゃったので……。健気でいい娘なんだがなあ……。
 芦屋と勇者の同僚の梨香にも進展があった。魔王と勇者とアラス・ラムスの遊園地デートをちーちゃんも含めた3人で尾行している最中に、まさかのアドレス交換。芦屋のほうにはそんな気全然ないと思うんだけど、梨香が意識しまくりでやばい。この2人の関係が好きなので、今後も定期的に観測をしていきたい。
 今回は子育て中心なので、あんまりマグロナルドなお仕事してません。しょうがないんだけど、ちょっとさびしいね。アラス・ラムスを抱いているちーちゃんに対するみんなの反応は良かった。店長もいい反応だった。

妄想ジョナさん

2011-11-06 19:20:57 | 小説
妄想ジョナさん。 (メディアワークス文庫)
クリエーター情報なし
アスキーメディアワークス


「妄想ジョナさん」西村悠

 呼吸するように妄想を見るせいで、もはや現実と妄想の区別がつかない主人公は、大学生にして依然ぼっちだった。実際、電信柱を現実の女性と勘違いして恋に落ちるようなやばい人間とお近づきになりたい人はそうはいないと思うけど、あまりにもぼっちすぎた。かろうじて砂吹というスナフキンみたいなやつが勝手に部屋にあがりこんできて酒を飲んでいったりするくらいで、それ以外の人間とは没交流だった。
 そんな主人公に、転機が訪れた。妄想の中の巨大うさぎが着ぐるみを脱ぐと、そこには美少女がいて、彼女は自分が主人公の妄想であると告げた上で、彼の妄想癖をとっぱらい、真人間に戻る手助けをしてやるという。
 彼女の名はジョナさん。どっかのファミレスみたいな名前だけど美少女で、世界中のあらゆるものに興味津々で、常に主人公のために考え、行動してくれた。だからというか、いつのまにか、主人公は彼女に恋をしていた。報われぬ恋だと知りながら……。

 妄想型主人公が本気で妄想なヒロインに恋をするとか救いがなさすぎる。
 だってわかるかい? いないんだぜ? どんなに彼女がかわいくても、健気でも、彼女との同棲が楽しかったとしても、でもいないんだよ!
 と、誰もがツッコむはず。主人公の電信柱の妄想に似ている安藤さんとの出会いにヤキモチを焼いてくれたり、学祭のゲーム研の無茶なイベントで共に知恵を絞ってくれたり、今日の夕飯は何にしようかとかいいながら手を繋いで帰ったり。かわいい。たしかにかわいい。一緒にいたい。この先もずっと暮らしていきたい。でも、そんな人はいないのだ。いないのに。
 いないはずのジョナさんとの別れ。これがすごく悲しかった。妄想から解き放たれる=ジョナさんは妄想なのでいなくなるというのがわかっていて、でも主人公にはもう妄想が見えなくなってきていて……。
 一連の流れが素晴らしかった。最後はちょっとあっさりだったかなとは思うけど、でもあれ以上は蛇足かもしれない。きれいな幕引きができて良かった。
 いずれにしろ、超がつくほどのおススメです。絶対に「なんだこの感動」と悔しい気持ちになるはず。是非是非!