「集合ー!!」
どこからか、怒鳴るような声が聞こえてきた。時計を見ると、午後十一時五分前をさしている。
なにごとかと思いながらドアを開けると、同じようなことを考えたらしい隣近所が顔を出した。
「…何今の?」
「上っぽくね?」
「いってみるか」
どこかよそよそしいやり取りをしながら、新入生はひとかたまりになって二階を目指した。
階段をあがると、他の階の新入生はすでに一例に並んでいた。
上級生のひとりが竹刀で床を叩いた。
「集合遅ーぞ!やり直し!!」新入生はわけもわからず自室に戻り、結局この夜はもう二回、同じことを繰り返した。
大学一年目は寮に入った。一年しかいられない期限付きの寮で、選ばれた人間だけが上級生として残っていくというスタイルをとっていた。基本的に体育会系で、上級生とすれ違う時は立ち止まって通り過ぎるのを待たなければならなかった。
起床点呼。消灯点呼。先輩には絶対服従。女人禁制。寮歌を覚え、掃除当番をさぼらずやっていさえすれば、とくに不満のない環境だった。
何より大きいのは飯が出ること。食うのに困らないというのは大きかった。
平日の朝夜は寮母さんが飯を作ってくれた。水曜はカレーの日。パイナップルの入った甘いカレーだった。
特段おいしいというわけではない。ただ、不思議と記憶に残っている。ルーに覆われたパイナップルのほのかな甘味が、今も舌の上で踊る。
どこからか、怒鳴るような声が聞こえてきた。時計を見ると、午後十一時五分前をさしている。
なにごとかと思いながらドアを開けると、同じようなことを考えたらしい隣近所が顔を出した。
「…何今の?」
「上っぽくね?」
「いってみるか」
どこかよそよそしいやり取りをしながら、新入生はひとかたまりになって二階を目指した。
階段をあがると、他の階の新入生はすでに一例に並んでいた。
上級生のひとりが竹刀で床を叩いた。
「集合遅ーぞ!やり直し!!」新入生はわけもわからず自室に戻り、結局この夜はもう二回、同じことを繰り返した。
大学一年目は寮に入った。一年しかいられない期限付きの寮で、選ばれた人間だけが上級生として残っていくというスタイルをとっていた。基本的に体育会系で、上級生とすれ違う時は立ち止まって通り過ぎるのを待たなければならなかった。
起床点呼。消灯点呼。先輩には絶対服従。女人禁制。寮歌を覚え、掃除当番をさぼらずやっていさえすれば、とくに不満のない環境だった。
何より大きいのは飯が出ること。食うのに困らないというのは大きかった。
平日の朝夜は寮母さんが飯を作ってくれた。水曜はカレーの日。パイナップルの入った甘いカレーだった。
特段おいしいというわけではない。ただ、不思議と記憶に残っている。ルーに覆われたパイナップルのほのかな甘味が、今も舌の上で踊る。