![]() | 笑う招き猫 (集英社文庫)山本 幸久集英社このアイテムの詳細を見る |
「行くよ、アカコ」
「合点、ヒトミ」
「笑う招き猫」山本幸久
豆タンクのアカコと180cmオーバーの巨人ヒトミ。2人合わせて「アカコとヒトミ」。30を目前にしたいい歳の2人は、お笑いコンビとしてカーネギーホールで(何故)漫才するのが夢。プロダクションの永吉やアカコの育ての親・頼子さん。頼子さんの友達で、ゲイのメイクアップアーティスト・白縫ジュン。売れない芸人・乙と、似ても似つかない可愛い娘・エリ。様々な人が応援してくれる中、2人は一歩ずつ成功へのステップを上っていくが、その一歩はただの一歩ではない。涙と汗をたっぷり滴らせた重い重ーい一歩なのだ。
女の子(?)2人の漫才にかける情熱と友情が熱い。
正直いって、女性のお笑いコンビって好きじゃない。下ネタかいやらし笑いか不細工が売りの人たちばかりで、正攻法のネタを見たことがないというのがその理由だ。
しかし、この「アカコとヒトミ」にはそういった男に媚びたり自己卑下したりといったようなところがまったくない。「こぶとりちび」や「のっぽ」をネタにしたりはするけど、それはいかにも自然なものだし、王道の漫才師という目標も美しく清々しい。
肝心要のネタ部分は、まああくまで紙面上のものだから面白さも並程度なのだけど、この2人がやっているのだと想像すると、どこかくすりとしてしまう部分がある。
周囲を固めるキャラも良い。特にアカコの育ての親・頼子さん。御歳80になんなんとするお婆さんなのに、顔立ち品良く立ち居振る舞いがしゃきしゃきしていて、喋りもいちいち的を射ている。ああ、素敵な歳のとり方をしている女性だなあ、と素直に好感を持てた。「アカコとヒトミ」を見守る優しい視線には、文面以上の温もりを感じさせられた。こういう老人になりたいね。
ラーメンズ片桐仁のあとがきは、片桐仁なりの作品への賛辞と作者への敬意がこめられていて良かった。某国営テレビのお笑い番組に関する理解と戸惑いには、思わずはっとするものがあった。
お笑いの好きなすべての人に薦めたい。良作。
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