ふたたびの恋 (文春文庫)野沢 尚文藝春秋このアイテムの詳細を見る |
「ふたたびの恋」野沢尚
「わたしを助けて」
休暇で沖縄を訪れた脚本家の前に、かつての恋人が現れる。教え子でもあった彼女は、いまや「恋愛ドラマの教祖」と呼ばれて売れっこになっているはずなのだが、土曜ドラマのためのシナリオ作りに困っていて、知恵を貸してほしいと頼み込んでくる。彼女のためのシナリオ作りは、昔の自分たちの恋を踏襲するような辛く切ないもので……。
というような「終わった恋」の萌芽や行く末にまつわる短編ばかりを揃えた短編集。遺作となった次回作のプロットも掲載されている。
さすが脚本家が出自な作者だけに、いずれも単発ドラマにできそうなメリハリのきいた内容のものばかり。ただ、テーマがテーマなだけに、全体的にトーンが暗めで、そこが本書の評価を下げるかもしれない。実際、誰が読んでも明るい気分にはなれないだろう。かつての恋人や家族を思い出しながら飲む悲しい酒にはぴったり……?