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はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

鬼が笑う

2007-12-30 16:16:42 | 出来事
 H19/12/29。雨。
 07:30帰宅。12:00に予定有り。徒歩10秒の距離にあるセブンイレブンにて弁当購入。食しながらお湯をため、湯上がりにPCをいじくり仮眠をとる。
 エクトプラズムにでもなったようにあちこちの景色を夢に見る。起きたら10:15。まだ早い。目覚まし11:00にセットして再仮眠も、起床11:55。今度は遅い。
 彼女のA君に謝りのメールをうって車に飛び乗る。12:40待ち合わせ場所到着。
「いつもは自分のほうが遅れてくるし、今日もやっぱり遅れそうだったのでかえって嬉しい」といわれ微妙な気分になるも、デートそのものは順調に推移。昼ご飯にと探した回転寿司が潰れていたり、駅ビルの中を迷い歩いたりという恒例のアクシデント以外は。
 個人的に探していた小銭入れは見つからなかったものの、「年越したら着てね!」と力強く渡されたパジャマは、クリスマスプレゼントであることを差し引いても素直に嬉しかった。申し訳ないがノロケだ。
 そしてこの日はもうひとつ大事なイベントがあった。それは二人の将来のこと。
 付き合い始めてもう二年。職場恋愛の秘密の逢瀬は、互いの複雑な事情もあって月に一、二度しか機会がない。いっそ結婚してしまえばいいではないか、ということで話はまとまったものの、仕事や実家の状況を考えると乗り越えなければならない難関がいくつもあり、すんなりとは決まりそうにない。
 煩悶のうちに23:30帰宅。現実逃避を決め込んでFF11。骨合成指定生産品のドラゴンマスクと日をまたいだカラパスガントレを一つずつ納品し、01:00就寝。リアル世界もこんな簡単に積み重なればいいのに。せんなきこと。

年の瀬

2007-12-27 23:58:15 | 出来事
 年の瀬も押し迫った12/27。晴れ。風弱く日暖かし。
 先輩の送別会より一夜明け、起床は08:30。
 痛飲した濁酒の傷み抜けやらぬまま、ボウとした頭でFF11ログイン。昨日より始めた合成専用のサブキャラの移動を開始する。具体的にはチョコボに頼っていた移動手段を飛空挺に改め、同時にアトルガン皇国・機船航路のチケットも取得する。世の中に、金にて贖えぬものはあらざりき。しめて100万ギル。
 ジュノ天晶堂の構成員に力ずくで気絶させられ、ワジャーム樹林中央に投げ出される。これで目の前にチョコボガールさえいなければ新鮮なのに……。うそぶきつつ、素直に100数十ギル払ってチョコボ騎乗。ビシージ開始寸前にアルザビに潜り込み、白門に移動。HP変更。子ミスラに羊皮紙と黒インクを渡してモグハウスの秘密を吐かせ、傭兵団の女頭目に媚を売る。有料のデジョンタルにジュノまで飛ばしてもらい、飛空挺でウィン本国へ。傭兵団の宣伝に駆けずり回る。とって返してアトルガンへの道筋をつけ、その足でナシュモへ。ドゥブッカ監視哨開通。すかさずモグロッカー40まで拡張し、ウィンへUターンして倉庫を整理する。
 13:30。本調子に戻った体で町へ繰り出す。買い物をしつつ、昨日グランドオープンしたばかりのパチンコ屋へ。14:00入場開始の列にまだ余裕がありそうなので並んでいると、やはり打ち納めにきた会社の先輩と隣り合う。200数十番目の入場のこととて、目ぼしい台は押さえられていた。15:00~21:00までの短時間オープンであることを踏まえ、確率の収束しやすい甘デジ「萌えよ剣」に座るも、相性の良い「CR新世紀エヴァンゲリオン~奇跡の価値は~」に空き台あるのを見つけ、一瞬の躊躇の後移動。127回転、430回転、531回転でそれぞれ大当たり。2、12、4の連チャンで、65500のプラス。改心の打ち納め。
 帰宅後夕飯をとり、サブマシンを起動し年賀状作成。長いこと火(電源)を入れてなかったせいか、プリンターともども甚だ動き悪し。人間関係にも似る。年賀状でのやり取りだけになった人のいかに多いことか。
 筋トレし、風呂に入って寝る。

メトロに乗って

2007-12-24 19:04:34 | 観劇
 風に揺れるワンピースの裾、マフラーに覆われた首筋、差し伸べられた両の手の平……今まで付き合ってきた女の子のことを忘れたことはない。記憶は霞み薄れ朧になりつつも、脳裏のどこかに名残がとどまっている。根本的に数が多くないせいもあるかもしれないが、それ以上に濃い付き合いをしてきたからだ。甘やかな感触も身を切る痛みも含めて、抜き差しならぬ関係を築いてきたからだ。
 それだけに、失ったあとの空白は大きい。時に何年も自己嫌悪に苛まれる。だがそれでいいと思った。相手の心に消えない「何か」を残せぬ恋など、なんの意味がある?
 いい思い出も悪い思い出も抱え込んで、死ぬまで生きること。それはエゴではなく、礼儀なのだ。最大限の敬意のあらわれなのだ。

「音楽座ミュージカル~メトロに乗って~」原作:浅田次郎

 同名小説の舞台化。
 小沼真次(広田勇二)は闇市から裸一貫で成り上がった小沼グループの代表・小沼佐吉(吉田朋弘)の長男だが、反発して飛び出し、いまはしがない衣料品会社の営業マンをやっている。スーツケース一杯に女性物下着を詰めこみ、地下鉄に乗って年がら年中営業先を回っている。家には妻と祖母と子供が二人。会社の同僚のデザイナー・軽部みち子(秋本みな子)との不倫。動脈瘤破裂による佐吉の入院など、とみに騒がしくなり出した周囲の出来事に振り回され、心身共に疲れきっていた。
 25年ぶりの同窓会で凋落ぶりを嘲笑われ泥酔した帰りの地下鉄のホームで、真次は元教師の野平(服部演之)に再会する。野平との会話で今日が30年前に自殺した兄・昭一の命日であることを思い出した真次は、辛い記憶に苛まれながら地下鉄の階段を上がり……昭和39年の兄の命日にタイムスリップしてしまっていた。
 その日は無事に帰ることができた真次だが、不思議な体験はみち子の身にも起こる。口論の末に昨夜の出来事の真偽をたしかめようとした二人は再びタイムスリップする。今度は戦後の闇市。離れ離れになったみち子が警官に連行される中、真次はアムールと名乗る満州帰りの帰還兵と出会う。
 食い詰め者たちの世話を焼き、一攫千金の野望に燃えるアムールが実は若かりし日の佐吉であることを知らぬ真次は、心ならずも共闘する中で友情を深め合う。
 一方みち子も、闇市から出征兵士を見送る新橋駅、満州、昭和初期と佐吉の過去を目にする傍ら、顔も知らぬ父やすでに亡くなった母・お時(井田安寿)と出会い、呪われた我が身の真実を知る。
 
 いがみ合う父と息子の心の邂逅。そういうベタなテーマを描かせたら浅田次郎の右に出る者はいない。ついに結ばれぬ男女の悲恋というアナクロなスパイスも、濃すぎてかえって新鮮に描けている。
 といいつつも真面目な浅田次郎は読みづらいので原作は未読なのだが、舞台を見ただけでも号泣ものの一作になっているだろうことは想像に難くない。大好きな母と語り合うみち子が、その母と真次の幸せを秤にかけるせつない決意など、ハンカチなくしては鑑賞できないような名シーンの連発で、苦手な舞台であるにも関わらず満足できた作品なのだ。

2007/12/8 K-1 GP

2007-12-21 17:02:29 | 格闘技
「2007/12/8 K-1 GP」

 先頃行われたK-1のテレビ放映分をいまさらになって視聴。最初のGP王者「鉄の拳」フランコ・シカティックから実に15年もの月日が流れていることに感慨を覚えた。ナチュラル・パワー隆盛のご時世に、せめて年末くらいは血沸くような試合を見せてくれよと願いつつ、でもすでに結果はわかっているのであまり気は乗らない。

○ジェロム・レ・バンナVSチェ・ホンマン× 判定3-0
 左腕に入っていた大量のボルトが抜け、ようやく本調子の出つつあるバンナ。今年3月の澤屋敷戦の敗戦の記憶など吹き飛ばすが如く、「俺様最強」、「俺様ロックンロール」な煽りV。最強はともかく、ロックンロールを標榜しすぎてくどい感もあるが、パワフルなバンナの復活に会場の期待は高まる。鍛え上げられた肉体に羨望。
1R 左のボディからバンナが先制。ホンマンの出足へローを飛ばし、痛いミドル。飛び込みざまのボディフックでペースを掴む。足技が出てるのはバンナ冷静な証。
 ホンマンの抵抗は弱く、動きが遅い。
2R ホンマン逆襲。パンチで前へ出る。
 バンナは右へ回って圧力に真正面から挑まないようにしつつ、時折パンチにカウンターで左のミドルを合わせる。が、後半ガス欠で精彩欠く。左いいのもらってぐらつくシーンも。
3R 互いに打ち合う。有効打でバンナ。
 判定3-0で勝者バンナ。もうホンマン相手は楽勝か。致命打をもらわずに相手に確実なダメージを与えることができる。

○セーム・シュルトVSグラウベ・フェイトーザ× 判定3-0
1R グラウベが左へ回りたそうな動きを見せるも、シュルトそうはさせない。長い左で突っつき、プレッシャーかけつつ右のローでグラウベの行く手を遮る。クレバーな対応。
 グラウベはワンツー+ロー。プラスαで多彩な蹴り技を披露する。しかしシュルト得意のパンチから膝のコンビネーションがどうにもならない。一方的におされながらも必死のガードで有効打だけは避けている。
2R 半ば、グラウベ必殺左のブラジリアン・キックがシュルトの顔面を直撃。出足での、ミドルからハイへの急激な変化にシュルトの目が追いつかない。完全な死角からの一撃。巨人がぐらつくのに会場のボルテージがいきなりヒートアップする。
 しかし、なんだかんだいってもそこはGP2連覇の王者シュルト。パワープレイで押し返し、逆に前蹴りとミドルでグラウベのボディにダメージを与える。膝での猛攻が止まらず、一気にペースはシュルトサイドに。
3R ガードが固いグラウベになかなかとどめさせないシュルトは少々ガス欠気味。だが両者の力の差を埋めるには至らず、そのまま何事もなく試合は終了。

○レミー・ボンヤスキーVSバダ・ハリ× 判定2-0
 GP2度の覇者対悪童。因縁の(?)一戦。
1R 両者ローの打ち合いから開始。共に動き早く、面白い試合になりそう。
 先にペース掴んだのはバダ・ハリ。早いワンツーから左のボディフックor右ローの二択に膝やミドルを練りこんだいやらしい攻め。 
 レミーは独特のフック気味のワンツーからローを返すが、バダ・ハリのローでダメージを受けたのか動きが鈍い。
2R レミー、ガード固めてローで攻める。魔裟斗いわく、レミーのローはオランダ特有の脛の硬い部分をぶつけるローなんだとかで、なるほど面白いようにバダ・ハリの動きが止まる。
3R 足止まったバダ・ハリにレミーが襲い掛かる。フック気味のパンチ連打からロー、という得意のスタイル。
 バダ・ハリ果敢に打ち返すも、攻撃に腰が入ってない。あれでは何発打ってもきかないだろう。
 引き分けを含めた判定2-0。レミーの試合巧者ぶりが光った一戦。

○ピーター・アーツVS澤屋敷純一× 1R29秒KO
「あの頃」の強さが戻りつつあるアーツに対するは、バンナを破った日本の新星・澤屋敷。パワー、テクニック、経験に身体能力とどれをとっても勝る相手にどう戦うのか、会場中の期待が集まる。
1R アーツの強烈な右ローでぐらつく澤屋敷。一気にペースを握られ、アーツのラッシュを浴びる。20秒弱でアーツの右ハイ……を防ぐも、ガードの上から薙ぎ倒されダウン。
 攻めどころを知っているアーツ。ローをまったくカットできない澤屋敷を滅茶苦茶に攻め立て、1分29秒に右ストレートを直撃させKO。
 相手にならない。試合後は泣いていたが、若い澤屋敷これを発奮材料に這い上がれるか。

○セーム・シュルトVSジェロム・レ・バンナ× 2Rセコンドがタオル投入
1R ホンマン戦で見せたように、右へ右へと回るバンナ。プレッシャーかけつつ、シュルトの前蹴りに右のジャブをひっかけ、左フックでカウンター気味に飛び込む。
 考えられた戦法がうまくいき、バンナ優勢。だがそこで調子に乗りすぎてしまうのがバンナ。回らずにまっすぐ詰め寄る場面が増え、危険だなと思っていたら、案の定、終わり際にシュルトの右膝の直撃を受ける。
2R 足引きずり精彩欠くバンナ。まったく何も出来ずに攻められ、右ローで出足を払わダウン。すかさずセコンドがタオル投入。
 敗れはしたものの、バンナが巨人退治の道筋を作った。あとに続く者はいるか?

○ピーター・アーツVSレミー・ボンヤスキー× 判定3-0
 スパーリングパートナーを務めたこともある両者。これが初対決。
1R 一回戦目を瞬殺で切り抜け、まったく疲れていないアーツ。左右フックにローのコンビネーションが有効。打撃が重く素早く積極的。
 レミー応戦するもアーツの一撃一撃が重く前に出れない。しかたなくガード固めるも、そうしたらそうしたでアーツは上下に打撃を散らして確実にヒットさせる。うまい。 
2R アーツさらに前へ。有効なボディフック中心の攻めの組み立て。
 スタミナを奪われジリ貧のレミー。しかし後半突如豹変したように怒涛のパンチラッシュで攻守逆転。アーツに何発も有効打を当てる。
3R 地力はアーツが上。じわりじわりとレミーを押しきり、判定ながらも磐石の勝利。
 
○武蔵VSデビッド・ダンクレイド× 1R終盤KO
 謎の男ダンクレイドと武蔵のスーパーファイト。
1R ダンクレイド足技はそれなりに早いが、手が出ない。故に単発。武蔵はガードを下げる余裕すら見せ、ラウンド終了際に左ミドル一閃。ひさしぶりのKO勝利だが、あまりのかませ犬ぶりに会場の反応は薄い。 

○セーム・シュルトVSピーター・アーツ× 1R1:40KO
 今一番シュルトに近い男アーツ。かつて判定ながらもシュルトに勝利した実績があり、また距離が合うというナチュラルな利点も含めて期待がかかる。願わくば面白いK-1を。
1R シュルトのストレート気味の左ジャブをもらったアーツ。そこで変に踏ん張ってしまったのが原因か、右膝を痛めて倒れこむ。
 あっさりと勝利。祝福もブーイングもない3連覇のGP王者。今のK-1を象徴するようなつまらない一戦。

インジェクション・ミート

2007-12-19 19:18:36 | 出来事
 新聞の社説を見て知ったことであるが、世の中にはインジェクション・ミートというものがあるらしい。直訳するなら「注射した肉」で、言葉の通り、豚、牛、鶏等の畜肉に一手間加えたものを指す。一手間は調味料であったりとろりとした牛脂であったり様々だが、程度の良くない肉を高級な肉と勘違いさせるほどには効果があるそうだ。
 このインジェクション・ミート。加工販売しただけでは罪にはならない。むしろ美味しい肉を安価で提供できるのだから、家計の力強い友だともいえる。実際このからくりを知ったあとでも、「健康に害がないならいいや」という向きの方々は多そうだ。
 俺もその一人ではあるが、嘘をつかれるのは気分が良くない。死ぬまで騙して、とまでは言わないにしても、技術者たちの作り上げたいじましい努力の結晶を、もう少しマシな形で活用してほしいと切に願う。

スーパーサイズ・ミー

2007-12-17 21:48:48 | 映画
スーパーサイズ・ミー 通常版

クロックワークス

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「お客様を大切に。そうすれば商売は自然とうまくいく」
                   マクドナルド創立者 レイ・クロック

「スーパーサイズ・ミー」監督:モーガン・スパーロック

 2002年11月。米国在住の二人の少女が訴訟を起こした。相手はマクドナルド。「人体に有害であるとわかっているものを販売している」という彼女らの訴えは「因果関係が認められない」として却下されたものの、この裁判では同時に興味深い見解が得られた。
 つまり危険性が立証されればいいのだ。
 身長187cm、体重84kg、体脂肪率11%。モーガン・スパーロックは三人の医師と一人の栄養士の助力の下、一つの実験を行った。それは、「30日間マクドナルドの食事のみで生活する」こと。なるべく運動せず、3食きちんと摂り、勧められたら必ずスーパーサイズを選ぶなど縛りを加え、自分の体を実験体にマクドナルドで販売される加工食品の危険性を立証しようという。
 こうして開始された「マックアタック」に、最初は誰もが楽観的な予測を立てていた。体重、血圧は上がるだろうが、人体には強い適応性がある。劇的な変化はないのではないか。
 しかし実験は意外な方向へ傾く。10日もしないうちにスパーロックは体の変調を訴え始め、20日をまわる頃には医師のストップがかかった。これ以上は命に関わるという。周囲の助言や心配にも耳を貸さず、30日を無理矢理完走したスパーロックのマックアタックは、体重11kg増、体脂肪率7%増、躁鬱、性欲減退、脂肪肝と様々な症状を引き起こした。彼が元の健康体に戻るまで9ヶ月を要したという。

 どこぞのテレビ局のバラエティー番組ででも行われそうな実験映画だが、舞台が米国とくるとそうもいかない。なにせ名うての「大盛りベタ甘」帝国。リッターサイズの(!)コーラや巨大バーガー(吐くほど大きい)の連打で、スパーロックの体調がみるみる悪くなっていくのが恐ろしく、皆で笑いながら見るというわけにはいかない。少なくともこの映画を視聴したいくつかの家庭では確実に食事メニューが変わったはず。
 米国の給食産業や食品営利団体の舞台裏へのインタビューなど多角的なアプローチもあり、膨張する加工食品産業への問題提起として見ても十分面白い。だが一番興味深いのは、公開から程なくして米国のマクドナルドからスーパーサイズのオプションが消えたこと。この映画との因果関係はないといっているが果たしてどうか。
 メガマックやらメガ牛丼やらの大盛りブームに待ったをかける問題作。食生活改善のためにも見る価値は大いにある一作なのだ。

ブラッディ・マンデイ③

2007-12-14 21:11:51 | マンガ
BLOODY MONDAY 3 (3) (少年マガジンコミックス)
恵 広史,龍門 諒
講談社

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 ワイズマン。賢者、知恵ある者。転じてウィザードという。知識秘術の限りを尽くして奇跡を起こす者のことだ。だがそれだけに常人の理解の及ばぬ彼らのことを忌み恐れる思想は根深い。超越者に比較的寛容な電脳世界でも、それなりに縛りはある。破ってはならは掟は当然あって……。

「ブラッディ・マンデイ③」龍門諒×恵広史

 米国国防総省に侵入した過去から日本の秘密情報組織「THIRD-i」の監視下に置かれることとなったファルコンこと高校生・高木藤丸。父親・竜之介を罠に嵌め、テロを企てる謎の組織と対決することとなった彼の活躍を描く第三巻。
 生徒思いの教師かはたまた悪魔の使者か? テロリストの容疑のかかった美人女教師・折原マヤとの命がけの腹の探り合い。
 殺戮を無上の喜びとする特殊部隊上がりのキリング・マシーン、ジャック・デイモンとの文字通りの殺し合い。
 容疑者のマンションで、人気のない研究施設の暗がりで……。警察権力の介入の期待できない状況での孤独な戦い。それに挑むのが高校生たちだというのだから燃えずにはいられない。「ただの」ではなくそれぞれ一芸に秀でた若者ばかりとはいえ、相手は百戦錬磨のテロリスト。一歩間違えば仲間たちもろとも皆殺しに合いかねない危険な状況で見せる、極限の集中力に手に汗握った。
 無敵のハッキング能力に加え、和弓使いと空手女子、ついでに大人の集団である「THIRD-i」まで手足の如く扱うファルコン。武力を伴った知性の恐ろしさをまざまざと見せ付けた。だが一方で組織の全貌はまったく見えてこない。底の見えぬ悪意の圧力が背景に見え隠れしているのも「いつひっくり返されるかわからない」緊張感に結びついていてよい。
 肝心要のハック関係も悪くない。強力なウイルスで一発解決! なごまかしかたをしないし、その場その場で身近なものを武器にする即応能力にも磨きがかかっている。フラッシュメモリーやエアコンのリモコン、IP電話にスカイプと、決して珍しくない日常のものを駆使してテロリストたちを追い詰める様がなんとも小気味よい。現在形のハイテク・サスペンスの今後にさらなる期待が募る。

相棒~警視庁ふたりだけの特命係~

2007-12-12 08:58:02 | 小説
相棒 警視庁ふたりだけの特命係 (朝日文庫 い 68-1) (朝日文庫 い 68-1)
輿水 泰弘/碇 卯人
朝日新聞社

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 亀山薫は途方に暮れていた。
 首筋にはトカレフ。周囲には機動隊員、同僚の刑事連中、マスコミ、物見高く集まった野次馬たち。指名手配の凶悪犯に逆に捕まり、人質にされるとはあまりにも不甲斐なく情けなく、かといって暴れるには危険を伴う。一触即発のところへ、一本の電話がかかった。薫の上着の内ポケットで音をたてる携帯電話。それがすべての始まりだった……。

「相棒~警視庁ふたりだけの特命係~」脚本:輿水泰弘 ノベライズ:碇卯人
 
 シーズン6始動に映画化決定。「はぐれ刑事純情派」の後釜としていまや不動の地位を築きつつある刑事ドラマ「相棒」満を持しての(?)ノベライズ。
 公衆の面前で刑事としてあるまじき醜態を晒した薫は、生活安全部の特命係という聞いたこともないような部署に左遷された。他の課からの厄介事を押し付けられる便利屋ポストを管理しているのは上司の杉下右京ただひとり。しかもこいつが折り紙付きの変人で……。
 上等の仕立てだと一目でわかるスーツのポケットからポケットチーフをのぞかせ、折り目のついたズボンをサスペンダーで吊るした英国紳士風の杉下右京は、慇懃無礼な物腰で正論ばかり吐き、警視庁の縦社会になじめず島流しにあい、以来一匹狼を気取るという筋金入り。ガチガチの体育会系の薫とは真逆の人間だが、犯罪を憎む熱い魂だけは変わらない。
 怜悧な頭脳と偏執的な熱意で事件に迫る右京。暴走する肉体と情熱だけで捜査する薫。二人の異なる警察官が絶妙のバランスで混合され、特命係は数々の難事件を解決していくことになるのだが……。
 
 本書はまだ、二人の出会いと始まったばかりのぎこちない二人三脚を描いているのみだ。
 薫の恋人・新聞記者の美和子、楚々とした料亭のおかみにして右京の元妻・たまき、「特命係の亀山ぁ」の捜査一課・伊丹、「暇か?」の薬物対策課・角田、アキバ系の鑑識課・米沢。個性豊かな面々に囲まれ、さらには杉下右京なんていう素晴らしいキャラがいるのにも関わらず、どうにも小粒なノベライズ。各方面に配慮し、ドラマから離れぬようにとの気遣いのせいか、文章が平坦でおとなしくつまらない。正直読みながら何度も挫折しそうになった。よっぽどのファン向けの一冊、としておきたい。

まりあ十ほりっく②

2007-12-09 13:23:14 | マンガ
まりあ・ほりっく 2 (2) (MFコミックス アライブシリーズ)
遠藤 海成
メディアファクトリー

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「じゃあ皆さんお祈りの時間には何を考えてるんでしょう?神様の事なんか考えませんよねそんなんじゃ。……だったら何の為に祈るんですか?」
「何かとても美しい事の為に、かしら。例えば家族の事。友人の事。もっと広く視野をを持って国や世界の事。電車でご老人に席をゆずっていた青年。見知らぬ他人に落し物を届ける為走って迷子になってしまった少女。小さなすれ違いで仲違いした親友とどう仲なおりしようかという事。祈りの時間はそんな小さな優しい事の数々に思いを馳せるきっかけを作ってくれますわ。神様や奇跡を信じていなくても、それはすごく素敵な事ではないかしら?」
 たまには目の覚めるようないい事もいうこの話。

「まりあ十ほりっく②」遠藤海成

 運命の恋を求めて女学園に編入した変態レズビアン・宮前かなこ。尋常ならざる悪意と絶世の美貌をあわせ持つ仮面生徒・祇堂鞠也からの調教はすでに骨の髄まで染み込んで、ドブネズミ呼ばわりされてさえ喜んでしまう始末。同性愛好癖もとどまることなく、日々磨きのかかる妄想力は、すでに取り返しのつかない水域にまで達していた……。
 かなこと鞠也の紹介がメインだった一巻。二巻では鞠也の手ひどい扱いにも慣れたかなこが、持ち前の弄られ力全開で学園の様々なイベントに体当たりしては撃沈していく様を面白おかしく描いている。
 隠し方に独創性を求められる寮での持ち物検査、レズビアンのはらいそ身体測定、天使のコスプレイヤーでごった返す聖母祭……色濃いキャラが織り成す賑やかな少女たちの友情や、それを見つめるかなこの偏執狂的視線がいびつで楽しい。清くも美しくもない欲望とは、かくも甘美なものであったろうかと思ってしまうほど、作品全体に漂う雰囲気は実に淫猥だ。
 鞠也の双子の妹・静珠にまつわる交換通学の謎や、鞠也の幼なじみで仇敵同士の会長・志木絢璃の回想シーンなど、話は緩やかに展開を見せつつ三巻へと続く。次巻もかなこは表紙を飾れないだろうけど、キリスト教に理解を深めるかなこの成長には期待したい。性別も趣味嗜好の垣根も越えて、真に美しいものを愛せるように。例え変態であったとしても。汚物にだってカメムシにだって、存在する権利はあるのだから。

私が語りはじめた彼は

2007-12-06 18:56:40 | 小説
私が語りはじめた彼は (新潮文庫 み 34-5)
三浦 しをん
新潮社

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「村川の魅力は、ある種の女にはたまらないものです。どこを掴まれたかのかは自分でももうわからない。けれど、彼によってふいにもたらされた痛みと驚きだけは、いつまでも新鮮に残る。外見や性格とはかかわりのない、そんな種類の魅力です」

「私が語りはじめた彼は」三浦しをん

「風が強く吹いている」の三浦しをんの手による恋愛(?)小説。
 大学教授・村川融は女にもてる。酒も飲めないくせに肝臓を悪くした狸のような風貌をしていて、研究テーマだって万人受けするような類のものではない。だけど不思議と女を惹きつけるものがある。それをフェロモンというかどうかはわからない。冒頭に参照したある女のセリフがもっとも彼をよく表している。つまりは、「なんだか知らないがよくもてる」。それは常識も貞操観念も越えて、多くの者に影響を及ぼす。
 これは村川融を廻る物語だ。だが一度たりとも村川融の視点は映らない。妻・実の息子・不倫相手・その娘・部下……村川融によって人生に甚大な被害を受けた人たちの生活を群像劇のように次々と描くことで、逆に彼を描いている。
 だからというか、彼らの村川融への思いは激しい。村川融によってもたらされた痛みと驚きが延々と続いていくことを、程度の差こそあれ呪い続ける。あるいは慕い続ける。その感情を、存在を独占し続けようとする。それはついに、村川融の死の瞬間まで続くのだ……。

 生暖かい汗のようなぬめりが、作品全体を覆っている。一人の男によって翻弄される多くの運命が、かすかに揮発して立ち上っていく。揮発する瞬間に奪っていくのはなんなのか。それを考えるのがとても怖く、とても楽しく、どこか悲しい。
 隠微さを漂わせるそれぞれのエピソードももちろんだが、なんといっても印象深いのは三浦しをん独特の表現。
「予言。椿の言葉は予言のようだった。世界が滅ぶとか、みんな死ぬとか、そんな不吉なもんじゃない。雨が降る前には雨のにおいがするように、朝の光より早く鳥が囀るように、だれのことも脅かさない予言」
「激しい感情は書物と同じだ。どれだけ厚くても、いつか終わりがやってくる。僕はもう、激しさをすべて使いきってしまったから、あとはただ、はじまりも終わりもなく続いていくだけなのだ。すごく長い時間をかけて、死んではまた星を生み出す銀河のように」
 やさしく静かな、心に染み入るようなフレーズの流れ。最後までそれは途切れることなく、感動の海へと繋がる。
 寒風吹きすさぶ屋外の気配を感じながら、じっくりと読みたい一冊。おすすめ。