「殺戮ゲームの館(下)」土橋真二郎
かつて、ネットで知り合った者同士が集団自殺したといういわくつきの廃墟を探していた、福永らオカルトサークルのメンバー11名は、気がつくと、見知らぬ場所に閉じこめられていた。
そこで待ち受けていたのは、兎という司会者によって提示される一方的なルールの数々。ルールを守らなければ死亡。守っていても、「村人」役の中に潜んだ「魔物」役を見つけださないと、村人は一晩に一人ずつ殺されてしまう……。
上巻で3名を失ったメンバーは、しかしこの段に至っても殺戮ゲームの謎解きに本腰を入れて乗り出そうとはしない。自分たちの中に裏切り者が、それも連続殺人を犯すほどの者がいるとは思えないし思いたくないのは当然だが、このままでは座して死を待つのみだ。そう考えた福永と後輩の藍は、ゲームを解決するために、強引な手段に打って出る。待つのではない、こちらから能動的に魔物をいぶり出すのだ……。
「扉の外」でデビューし、「ツァラトゥストラへの階段」、「ラプンツェルの翼」と、本当にそれ系の話か書いていない土橋真二郎。最新作ももちろんそれ系で、そして圧倒的に面白かった。
どこがいいといって、巻き込まれているのが見知らぬ人たちではない点。サークルメンバーとして、日頃から仲良くやっている人たちを疑わなければならない。その中には親友や恋人まで混ざっている。このえげつなさ。
条件付けも凝っている。
・村の中に村人になりすました魔物が潜んでいる。
・魔物は夜中に行動し、毎日人間を食べる。
・夜中に家の外にいる人間は全て食われる。
・村人全員が家に立てこもると、魔物は一軒の家に入り一人を食べる。
・魔物を一刀両断する斬魔刀という武器があり、夜中に効力を発揮する。
・斬魔刀を持った村人の家に魔物が入ると、魔物は斬り殺される。
・村人の勝利条件は魔物を殺すこと。
・魔物の勝利条件は村人を一人以下にすること。
誰がどの部屋に入るか、一本しかない斬魔刀を誰に持たせるか、またその人はどのタイミングで部屋を選ぶか。戦略性があるルールが楽しい。
しかし、なんといっても一番は、福永の後輩の美少女・高梨藍のキャラに尽きる。冷静で冷酷で、物事をなんでも割り切って考えることができて、それでいて外面は良い。自分の表情が周りに与える効果すらも想定して完全にコントロールできる。そういう「怖い」女が、実は福永のことを好いている。でも、福永には恋人の亜美がいて、しかも同じ密室内に閉じこめられている。だけど亜美はみんなと同じく疲弊していて、物事を割り切って考えることができない。ゲームクリアを第一に考える福永の相方は、藍しかいない。急接近する2人……。この背徳感がたまらん。
ラストの余韻も独特で、読了したあとかなり長い間浸らせてもらった。文句なしのおすすめ。