中国軍の孫建国・副総参謀長(海軍上将)は5月31日、シンガポールで演説し、中国が南シナ海で進める岩礁埋め立てや施設建設について「中国の主権の範囲内の問題だ」などと述べ、中止しない方針を表明した。埋め立ての目的については「軍事防衛の必要を満たすため」とし、軍事利用を含むことを明確に認めた。▼2面=中国を止められず

 

 南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島で中国が進める埋め立てをめぐっては、米国のカーター国防長官が5月27日に「即時中止」を求めた。その後、中国軍高官としては初めて、米側の中止要請には一切応じない中国の姿勢を国際会議の場で公に鮮明にした。

 経済発展と軍事力増強を背景に自信をつけた中国は、米国に対しても、これまでにない強硬姿勢に踏み込んだとみられる。中国が南シナ海での実効支配の既成事実化を進め、軍事利用にもつなげていくことになれば、地域の緊張はさらに高まる。

 孫氏は、日米や欧州、東南アジア諸国の軍や政府高官が参加した「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)」(英国際戦略研究所主催、朝日新聞社など後援)に、中国代表団を率いて出席。最終日の31日、約30分間演説した。

 演説では、南シナ海の埋め立てと施設建設について「駐在する作業員の生活条件を改善し、軍事防衛上の必要性を満たすためだ」と明言。そのうえで、「海上捜索や防災、気象観測、環境保護などで、一層、国際的な責任を果たすためでもある」と説明した。

 南シナ海の「航行の自由」が損なわれるとの懸念に対しては、「影響を与えることはない」と主張。米国を念頭に「自らの主観に基づく無責任な発言をするのは控えるべきだ」と反発した。さらに「小国は挑発的な行為をとるべきでない」と述べ、南シナ海で領有権を争うベトナムやフィリピンなども批判した。

 埋め立てや施設建設は、南シナ海での防空識別圏設定もにらんだ動きとの見方もある。孫氏は「(防空識別圏の設定は)空域の安全が脅かされるかどうか、総合的に判断して決める」と述べるにとどめた。

 孫氏の講演後、中国軍幹部は記者団に対し、南沙諸島に建設中の滑走路について「軍民共用になる」との見通しも示した。中国は26日に発表した国防白書で「海上の戦闘準備」を強化する戦略を明記しており、米国は埋め立て地の建設施設が軍事拠点となることに強い懸念を示している。

 (シンガポール=倉重奈苗、益満雄一郎

 
 
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