狼魔人日記

沖縄在住の沖縄県民の視点で綴る政治、経済、歴史、文化、随想、提言、創作等。 何でも思いついた事を記録する。

東京大虐殺の米司令官に日本が勲章贈呈、東京大空襲に関して無関心な日本人

2022-08-29 11:10:52 | 政治
 

■今回の一冊■
The Bomber Mafia
筆者 Malcolm Gladwell 出版 Little, Brown

『The Bomber Mafia』

 アメリカ軍による第2次世界大戦末期の東京大空襲は必要だったのか? 女性や子どもを含む民間人を無差別に殺した東京大空襲を検証した歴史ノンフィクションだ。

 虐殺ともいえる空襲を指揮したアメリカ軍の司令官は戦後、日本から勲章を贈られた。そんな日本人も忘れた史実も伝える。広島や長崎への原爆投下に比べ、東京大空襲に対する日本国民の関心の低さを指摘するなど、日本人が読んでも多くの気づきがある良質の作品だ。

 本書はニューヨーク・タイムズ紙の週間ベストセラーの5月16日付ランキング(単行本ノンフィクション部門)において第2位で初登場した。アメリカではよく、第2次世界大戦に題材をとる歴史ノンフィクションがベストセラーとなる。

 こうした類書に共通する主張は「戦争を早く終わらせるには他に選択肢はなかった」というものだ。日本への原爆投下などアメリカ軍による非人道的な軍事行動はすべて、この論理で正当化するのがアメリカのベストセラーのお決まりといえる。

 本書は違う。アメリカ軍が日本本土での無差別な空爆に踏み切った経緯を丁寧に描く。アメリカ軍のなかにも、戦争による犠牲を最小限に抑えるために、空爆のターゲットを軍需工場などに限るべきだと考える一派があった。こうした良識派の司令官やパイロットたちはBomber Mafiaと呼ばれた。これが本書のタイトルである。

 しかし、第2次世界大戦当時は、爆撃機にレーダーも装備せず、ましてや現代のようなGPSで位置情報が簡単にわかるわけもない。爆撃の対象を特定の軍需工場に絞り込んでも、アメリカ軍の航空部隊には標的に正確に爆弾を投下する能力が乏しかった。おまけに、限られた標的を正確に爆撃するには、ある程度は目視に頼らざるを得えず、明るい日中に低い高度で爆撃機は飛ばなければならない。敵からの攻撃にさらされやすくなりアメリカ軍の被害が多くなる。

 実際、アメリカ軍はヨーロッパ戦線で、軍需工場だけを空爆しドイツの兵器生産能力を落とす作戦を実行した。その結果は、悪天候も重なり、狙った空爆の成果が出なかったうえに、アメリカ軍の多くの戦闘機が撃墜され失敗に終わった。

 本書は当時のテクノロジーの限界などもおさえながら、アメリカ軍が日本本土で無差別な空襲にシフトした経緯をたどる。類書であれば、目的は手段を正当化するという理屈で、憎き日本を早期に降伏させて戦争を終わらせるには、東京大空襲が必要だったと結論づけるだろう。

 しかし、本書はその点について、あえて明確な結論を出さない。空爆は必要最小限にすべきだと考える軍人たちの理想を紹介しつつ、それを許さないテクノロジーや戦場の現実を描きながら、無差別な空襲に踏み切った経緯を客観的に描く。その評価を読者にゆだねているのだ。

 本書の筆者であるマルコム・グラッドウェルはアメリカのジャーナリストで、社会現象の背後にある法則などを鋭く切り出すベストセラーを何冊も上梓している。日本でも翻訳紹介されている人気作家のひとりだ。その人気作家は本書を執筆するための取材で来日し、東京大空襲・戦災資料センター(東京都江東区)を訪れたときの驚きを次のように記す。

So when Jacob and I got in our taxi in Tokyo, I assumed that we would be going toward the area where the museums are―the center of town, near the Imperial Palace. But we didn't. We went in the opposite direction, away from the business districts and tourists.

「アシスタントのジェイコブと一緒に東京でタクシーに乗ったとき、いろんな博物館がある東京の中心部、皇居の周辺あたりに車は向かうのだとばかり思っていた。しかし、違った。タクシーはそれとは逆の方向に向けて走り、ビジネス街や観光名所からは遠ざかった」

 

東京大空襲に関して無関心な日本人

 筆者のグラッドウェルは世界各地で、戦争に関する立派な博物館をいくつも見てきている。それと比べて、日本における東京大空襲の扱いがあまりにも軽いことに驚いたわけだ。特に、日本人が広島や長崎に比べ、東京大空襲に関して無関心なことに疑問を持つ。次のように補足している。

Despite the incalculable loss of life, there remains no government-sanctioned memorial in Japan to the March 9 attack. Survivors of that night, who call themselves “memory activists,” have struggled to commemorate the Tokyo raid in the face of political and public apathy. Eventually they funded their own memorial―the Center of the Tokyo Raids and War Damage.

「多くの人命が失われたにもかかわらず、3月10日(米国時間で3月9日)の東京大空襲に関する公的な博物館が日本にはない。東京大空襲の被災者たちは、自らを”記憶の語り部”と称しているものの、東京大空襲の記録を残し追悼するのに苦労してきた。政治や社会が無関心なのだ。結局、自分たちで資金を集めて、東京大空襲・戦災資料センターを設立したのだ」

 アメリカ人の人気作家に、日本人が東京大空襲に対して無関心であることを指摘されるのはなんとも恥ずかしい。おまけに、取材した歴史研究者が語ったという次の体験談には日本人として愕然とした。

The historian Conrad Crane told me:

I actually gave a presentation in Tokyo about the incendiary bombing of Tokyo to a Japanese audience, and at the end of the presentation, one of the senior Japanese historians there stood up and said, “In the end, we must thank you, Americans, for the firebombing and the atomic bombs.”

That kind of took me aback. And then he explained: “We would have surrendered eventually anyway, but the impact of the massive firebombing campaign and the atomic bombs was that we surrendered in August.”

In other words, this Japanese historian believed: no firebombs and no atomic bombs, and the Japanese don't surrender. And if they don't surrender, the Soviets invade, and then the Americans invade, and Japan gets carved up, just as Germany and the Korean peninsula eventually were.

「歴史家のコンラッド・クレーンは次のような話をしてくれた――。

東京で日本人向けに焼夷弾による東京大空襲について講演したことがある。講演の終わりに、日本人の高齢の歴史家が集まっていた中で1人が席を立って次のように言った。『結局、日本人はアメリカによる空襲と原爆投下に感謝すべきだ』と。

この発言にはちょっと驚いた。その男性は続けてこう説明した。『日本はいずれにせよ降伏するしかなかった。しかし、焼夷弾による大空襲と原爆投下の衝撃のおかげで日本は8月に降伏したのだ』

別の言葉で言えば、この日本人はこう思っているわけだ。焼夷弾や原爆がなかったら日本は降伏しなかった。そして、日本がもし降伏しなかったら、ソビエトが日本本土に侵攻し、続いてアメリカが侵攻し、日本は最終的にドイツや朝鮮半島のように切り裂かれただろう」

 本コラムの評者も正直なところ、第2次世界大戦について日ごろは関心はない。むしろ、アメリカの歴史ノンフィクションで日本に関連する史実を学ぶことが多い。自分の無知を恥じるばかりだ。東京大空襲に関しても、本書を読んで初めて知ったことが多い。

 

東京大空襲の指揮官に勲章を贈った日本

 もっとも驚いたのは、東京大空襲を指揮したカーチス・ルメイという軍人の経歴だ。東京大空襲で成果を上げたルメイは戦後、軍人として出世を遂げ、アメリカ空軍参謀総長までのぼりつめた。しかも、1964年には日本から勲一等旭日大綬章を贈られた。日本の航空自衛隊の育成に貢献したのが叙勲の理由だったという。こうした史実を、アメリカののベストセラー作家に教えてもらうというのも日本人として情けない限りだ。

 東京大空襲で使われたナパーム弾(焼夷弾)は、ハーバード大学の化学者たちが喜々として開発に携わった。おまけに、アメリカ軍は、日本の住宅が木造で燃えやすいことも知っていた。障子までも再現した日本の住宅を砂漠に建築し新開発したナパーム弾の威力も実験していた。最初から、日本での投下を前提として開発し、無差別に大量の民間人を殺すつもりだったのだ。

 さらに、アメリカ軍による虐殺は、1945年3月10日の東京大空襲だけではない点も見逃せない。例えば、同年5月には横浜の半分を空爆で灰にし数万人を殺した。本書は次のように記す。

After the firebombing of Tokyo in March of 1945, Curtis LeMay and the Twenty-First Bomber Command ran over the rest of Japan like wild animals. Osaka. Kure. Kobe. Nishinomiya. LeMay burned down 68.9 percent of Okayama, 85 percent of Tokushima, 99 percent of Toyama―sixty-seven Japanese cities in all over the course of half a year. In the chaos of war, it is impossible to say how many Japanese were killed―maybe half a million. Maybe a million.

「1945年3月に東京を空爆した後も、カーチス・ルメイが指揮する第21爆撃部隊は日本のその他の都市を野獣のように荒らして回った。大阪。呉。神戸。西宮。ルメイは岡山の68・9%を焼き尽くし、徳島の85%、富山の99%を灰にした。半年の間に日本の計67都市を空爆したのだ。戦争の混乱のなか、何人の日本人が殺されたのか正確にはわからない。おそらく50万人、あるいは100万人が亡くなった」

 このほかにも、日本人の気象学者である大石和三郎についても本書で初めて知った。世界で最初にジェット気流を発見した学者だ。しかし、エスペラント語で論文を発表したため世界で認知されなかった。アメリカ軍は第2次世界大戦末期に、爆撃機を日本上空に飛ばして初めて、ジェット気流に遭遇した。激しい気流のために高い高度からの精密爆撃が不可能だったことも、東京大空襲の無差別爆撃につながった一因だった。

 本書がアメリカでベストセラーになったおかげで、多くのアメリカ人が東京大空襲の実態について知るのはありがたい。あわせて、日本人がもっと東京大空襲について知り、犠牲者を追悼し、世界に発信する必要を感じた。


コメント (3)    この記事についてブログを書く
« 沖縄戦は米軍のジェノサイド... | トップ | 気は確かか!デニー知事「日... »

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (amai yookan)
2022-08-30 00:29:19

● 今日のデニーの失言?あらん=本音

「沖縄をアメリカから、日本から取り戻す!」

これって・独立って事!=中共がすぐ侵攻=中共国・沖縄省って事ー!・ウクライナより酷い・香港・モンゴル並みだ

● youtube「玉城デニーうまんちゅ大集会」、、、8月22日
https://www.youtube.com/watch?v=kRb56vS1hDc * 13分58秒辺りから*
返信する
Unknown (Unknown)
2022-08-29 15:50:51
>広島の平和記念公園に「私達は2度と同じ過ちはしません」という言葉が書かれた記念碑がある。


慰霊碑には、「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」という文が刻まれており、「私達は2度と同じ過ちはしません」とは刻まれてはいないんだよ。
日本人のフリをしたってバレバレだよ。

いいですか。慰霊碑の一文は英文学者で当時広島大学教授の雑賀忠義が考え提案したもので、過ちとは全人類の過ちを指しているんだよ。
しかし、インドのパールという間抜けな法学者は、過ちとは日本人の過ちを指すという根拠のない主張をして騒ぎを企てたわけ。

キミが提示する情報は全てがこのような低次元のものだ。
返信する
本日の沖縄タイムス投稿欄 (カウンター58)
2022-08-29 12:34:34
.
オピニオン面に一般投稿7本(児童生徒の「ぼくも私も」など除く)。

「国葬反発 首相は予想の上か」の沖縄市・石川珠美さん(56)は、1月5日、2月15日、6月25日に続き今年4回目の掲載。
「国の借金念頭に政党へ一票」の金武町・仲間和男さん(62)は、8月16日に続き今年2回目の掲載。
「信号機調整で省エネしては」の豊見城市・上原兼治さん(72)は、4月3日、5月26日、7月8、26日に続き今年5回目の掲載。
「お盆に御三味 朝ドラに触発」の宜野湾市・石川真知子さん(64)は、2月8、22日、3月30日、5月30日、8月17日に続き今年6回目の掲載。
「沖縄独自 グスク技術に誇り」のうるま市・仲宗根清善さん(79)は、昨年12月9日以来の掲載。
「産業まつり 奥武山で 感染対策 来場者は協力を」の浦添市・仲間毅さんは、2020年7月22日以来の掲載。
「平日朝のちむわさわさ」の京都市・磯部五月さん(35)は、今年初掲載。
 
カギカッコは投稿欄における見出し。

.
返信する

コメントを投稿