狼魔人日記

沖縄在住の沖縄県民の視点で綴る政治、経済、歴史、文化、随想、提言、創作等。 何でも思いついた事を記録する。

派遣・非正規は歴史の必然! 雇用機会の拡大のために

2009-01-29 08:13:29 | 県知事選

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 正義の味方が、実は悪魔の手先の場合がある。

一見優しく思える言動が、実は悪魔の囁きなのだ。

その一方、非情に思える箴言が、実は非情の裏に優しさを含む場合もある。

 

失業者の群れに「社会のくず」呼ばわりすることは決して優しさの表れだとは思わないが、

「企業が26歳未満の若者を雇用した場合に試用期間2年間は解雇理由を提示をすることなく解雇できる」

という法律は一見非情に見えても、失業者に雇用の機会を与える意味を含んでおり、既得権の上にあぐらをかく「正規雇用制度」の壁に穴を開ける試みであり、

失業者にとっては優しい法律のはずだったが・・・。

雇用機会の拡大を求める失業した若者に向かって、時の担当大臣が、

「ごろつき」だの「社会のくず」だの暴言を吐き、あげくの果てに雇用の機会均等のために発布した法案が初期雇用契約(CPE)で、その内容が、

「・・・解雇理由を提示をすることなく解雇できる」

というものだったら、その内閣はひっくり返るというのが日本の常識だろう。

だが、2005年当時のフランス内務相サルコジは、その後大統領になっているし、当時のフランス政府はこの初期雇用契約(CPE)で若者の「解雇が容易になり、企業は積極的に若年者を採用するようになる」効果があるものとマジメに考えていた。

2005年秋、パリの移民系若者によって起こされた暴動は3年後の日本が直面する「年越し派遣村騒動」を暗示していた。

当時の「燃えているパリ」の状況は 日本でも無関係ではないと思われたが、パリで騒動が起きると「革命」を期待する当時の「しんぶん赤旗」次のように報じていた。

 

2006年3月9日(木)「しんぶん赤旗」

労組・青年 一緒に行進

不安定雇用反対 フランス100万人行動

 【パリ=浅田信幸】青年の雇用不安定化につながる政府提案の「初採用契約(CPE)」に反対するフランスでの七日の百万人行動は、労働総同盟(CGT)ら八労組、仏全国学生連合(UNEF)、高校生連合(UNL)などが「CPE撤回」を統一スローガンに共同で呼びかけたもの。社会党や共産党など左翼諸党や学校父母会の全国連盟もこれに合流することを決め、約二十の大学で学生ストが実行されました。


写真

(写真)7日、不安定雇用の拡大に反対するパリのデモに参加した若者たち(浅田信幸撮影)

 労組、青年学生組織、左翼諸党らの指導者がそろってデモに参加したパリでは、大学生、高校生を先頭に、ホイッスルや太鼓、トランペットでにぎやかに行進。デモ開始後に降りだした小雨のもと、「みんなで一緒に、CPE撤回を」などのシュプレヒコールを繰り返しました。

 ティボーCGT書記長は「この行動を見て、首相がCPEへの態度を見直してくれることを期待したい。労組も学生たちも“解雇の自由”には反対で一致している。われわれはこのたたかいを緩めない」と語りました。

 またジュリヤール仏全学連委員長は「きょうは運動を広げる出発点になった。明日からの運動でこの力比べに勝つのは誰かを示すことになる」と発言。全国の学生に直ちに無期限ストに立ち上がるよう呼びかけました。

 CPEは、二十六歳以下の青年を対象に、採用から二年間を見習い期間とし、この間、経営者側による理由を提示しない自由な解雇を認める雇用契約。労組はこれが労働者の権利をはく奪するもので、労働法改悪と不安定雇用拡大の突破口になると、いち早く反対を表明。学生たちは「青年を使い捨て労働者にするものだ」と反発しています。

 政府はCPEを盛り込んだ機会均等法案の国会審議を急ぎ、上院での早期採択・成立をはかっていますが、労組や学生・高校生組織はあくまで「撤回」を要求して長期戦の構え。先週末に学校の冬季バカンスが終了したばかりで、たたかいはこれからが本番だと位置づけています。

                    ◇

公務員が何故人気があるか。

一旦採用されてたら、刑事事件でも起こさない限り、定年まで解雇されることはないという身分の安定にある。

労働者の敵は労働者と書いた。

労働者の敵は労働者 ワークシェアリング

既得権益を享受するグループは、その権益への新規参入に反対をする。 弁護士不足で弁護士資格のハードルを下げようとすると真っ先に反対するのは同じ弁護士であり、これは医師資格の場合にも当てはまる。

資格の伴う職業だけではない。 公務員は言うに及ばず民間の「正規社員」にも既得権益が生じている。

正規社員は限りなく公務員に近い既得権益があり、数ある権益の中でも特に「解雇できない」という権益が重要である。

沖縄タイムスが、「雇用」を特集で連載しているが、その中で企業側から見た「正規社員と非正規社員」について、沖縄県経営者協会の知念栄治会長は、

正規社員を採用してしまうと、簡単に人員整理をできない。特に沖縄の場合、ほとんどが第三次産業、サービス業。特別難しい技術がなくてもできる仕事に非正規雇用が増えると思う」と、企業にとっての利点を強調した。 

(非正規雇用が)コスト削減に役立つことは認めつつ、「子育て中の人など短時間で働きたいという労働者側のニーズもある。企業によっては待遇があがっているところもある」と働く側の事情に触れている。

そう、企業が右肩上がりで成長しているときは「正規雇用」も問題がなかった。

だが、昨今のように「100年に一度」の不況に見舞われる経済環境になると硬直した正規雇用では企業経営は維持できなくなってきた。 1950年代以来の雇用制度に疲労が見えてきたのだ。

 

今問題になっている「正規・非正規雇用」問題は、戦後日本経済を二人三脚で支えてきた終身雇用制度と年功序列制度を抜きにしては考えられない。

では、日本の企業は元々終身雇用や年功序列でやってきたのか。

いや、そうではない。

戦後1950年前後までに制作されて古い日本映画を見ると、「近く整理があるらしい」という社内のうわさにおびえるサラリーマンの姿が頻繁に出てくる。

整理とは現在でいうリストラと同じ意味で或る日突然社員に降って来ても誰も拒否できないといった風に描かれている。

つまり正規社員でも企業側の都合で容易に解雇できた。

それが1950年代以降、日本の企業は、大企業を中心に、欧米の企業とは異なる日本独自の雇用制度に移行していく。

経営学的に見れば、企業は生産の増減に応じて雇用調整をするのが企業の存続にとって一般的である。

 

それが1950年代になると、何ゆえ日本は雇用調整をせず終身雇用制度を実現することができるようになったのか。

①労働者側にシンパシーを持つ左傾裁判官の跋扈

左傾判事の作った判例法によって労働者の雇用が必要以上に保障され、労働者が企業から中途解雇されることはほとんど不可能になった。 その結果一旦就職したら一つの会社に残りやすいという事情があった。

②就職から就社への意識変換

年功序列賃金制度とは、労働者が一つの会社に長く勤めれば努めるほど、その地位や賃金が上昇していく制度であり、中途採用者は、労働者にとって著しく不利になる制度で、新卒採用者と中途採用者では昇進、待遇等に大きな格差を設けられた。

結果として企業への忠誠心が強くなり転職など考えないようになる。 その結果就職は人間一生の就社となった。

◆日本型雇用が成立するための必須条件

A:企業が安定的に右肩上がりで成長していくこと(上場会社が倒産するなんて神話だと思われていた)

サンウェーブや山陽特殊鋼の倒産は衝撃的だったが例外的だった。

B:社会全体の人口構成が常にピラミッド型になっていること(現在はピラミッドが変形し、雇用どころか年金も破綻しかかっている)

 

 

◆日本型雇用が崩壊した理由

バブルが崩壊した1990年代以降、長引く不況の結果企業の右肩上がりの成長神話が止まり、業務が縮小するに伴って、新規に従業員増やすことができなくなった。

一方人口構成も少子高齢化の進展によって若年労働力が中高年労働力に比べて豊富だとはいえなくなってきた。

もはや、年功序列賃金制度による中高年管理職の高い賃金を、低賃金の若年労働力で支えるスキームに作動しなくなった。

同じスキームの年金制度も年功序列賃金制度と運命を共にしている。

1990年代以降、人件費負担の重くなった企業は、賃金の高い中高年層を中心にリストラを積極的に行うようになるが、一方的に解雇はできないので、陰湿ないじめにより自主退社に追い詰める例が続出した。

⇒窓際の支店長(沖縄でも銀行の支店整理により、ソレまで花形だった支店長が「資料係り」として一室に集められ朝から晩まで新聞切り抜きをさせられたという話も良く聞いた)

そして、硬直した「正規雇用制度」の制度疲労に対処すべく登場した派遣社員制度は歴史の必然であった。(続く)

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