狼魔人日記

沖縄在住の沖縄県民の視点で綴る政治、経済、歴史、文化、随想、提言、創作等。 何でも思いついた事を記録する。

ソーミン・チャンプルーの極意

2007-01-25 07:15:12 | 食文化

納豆には何の罪もないのだが・・・。

テレビの誇大宣伝の為納豆業者は大迷惑だと聞く。

沖縄では最近でこそ納豆が日常の食卓に馴染むようになった。

その結果スーパーでは欠かせない食べ物になったが、米軍占領下の沖縄では納豆はなじみのない食品だった。

その一方最近では沖縄発の沖縄独特の食べ物が全国区になった例も多い。

ゴーヤーちゃんぷるーなどは今では説明なしでわかる人も多いだろう。

沖縄の居酒屋では沖縄料理、特にちゃんぷるー料理を欠かしてはやっていけない。

試しに先日新年会をした居酒屋のメニューの沖縄料理を覗いてみた。

豆富ちゃんぷる 580円 (豆腐)

ゴーヤーちゃんぷる 580円 
 
ソーメンちゃんぷる 450円 
 
フーちゃんぷる 580円 (麩)
 
チキナーちゃんぷる 580円 (からし菜)

堂々とちゃんぷる料理が4品覇を競っているがこの他にも「まーみなー(もやし)ちゃんぷる」をメニューに入れているところもある。

ただし「豆腐ちゃんぷる」と「まーみなちゃんぷる」では区別がつきにくいという人もいる。

両者とも豆腐ともやしの炒め物だが、その量の多さで「豆腐ちゃんぷる」になったり「まーみなちゃんぷる」になるとこが如何にも沖縄らしい。

沖縄で「ソーミン・ちゃんぷる」として親しまれているソーミンは勿論そうめん(素麺)の沖縄訛り。

沖縄の日本復帰以前は「ソーミン」は沖縄語で、それを大和口(標準語)で言うと「ひやむぎ」だと思う人が多かった。 

物の本によると、そうめん(素麺)は、小麦粉を原料とした乾麺のひとつで、日本農林規格(JAS規格)によれば、機械麺の場合、素麺の麺の太さは直径1.3mm未満とされている。

ちなみに直径1.3mm以上~1.7mm未満は冷や麦、1.7mm以上はうどんと分類される。

ひやむぎはそうめんと違い、西日本一帯では知名度が低いとも言われている。

今でも沖縄ではひやむぎという言葉は殆ど聞かない。

夏でも「ひやむぎ」ではなく「冷ぞうめん」が主流だ。

                    ◇

そうめん料理といえば夏場の冷ぞうめんも旨いが、一年を通してはなんといっても「ソーミン・ちゃんぷる」。

誰でも簡単に作れるが本当に美味しい「ソーミン・ちゃんぷる」となるとその奥義は深い。

たかが「ソーミン・ちゃんぷる」、されど「ソーミン・ちゃんぷる」。

友人の一人にその奥義を窮めた男がいた。

以下はプライベイト・サイトに発表した門外不出の秘伝の転載。

≪『Date:  2007年1月23日(火) 午後8時11分
Subject:  ソーミン・チャンプルー調理の極意

前に酒を飲みながらソーミン・チャンプルーを造るのは難しいという話をしたことがある。

麺が団子状になりとてもソーミン・チャンプルーとは言えない代物ができる。

たまたま合奏団の新年会で、団員の旦那がソーミン・チャンプルーを造って出してくれた。美味しかったので造り方を伝授してもらった。

彼の秘伝は、茹でたソーメンをざるにあけすぐ塩を振り、油を掛けて箸で解すというものであった。

この方法だと確かに美味しいソーメン・チャンプルーが出来る。

だが、ざるに空けてから油をまぶすと大匙3杯分ぐらいの油が必要であり、食べたときに脂っこさがどうしても気になる。

次に油をまぶした麺を具に絡めるのであるが弱火にかけた具の入った鍋に麺を移し弱火のまま麺に具を絡めるというものである。

麺を改めて具といためるわけではなく、麺に具を絡めたら火からおろして出来上がりである。

色々試した結果、この方法には幾つか問題があるというのが分かった。その問題とは、

1.麺をざるに空けた瞬間にざるのそこの麺は、塊になってくっついてしまう。油を塗しても固まりは解けない。

2.麺を解す油が大量に必要。約大匙3杯分の量が必要である。それでも十分解すことは困難である。

3.弱火にかけた具入り鍋に麺を移すとすぐなべ底に麺がくっついてしまう。

そこで幾つか改善を試みてみた。うまくいったので其の方法を皆さんに伝授する。試してみるかどうかは皆さんに任せる。

具の材料:適当な野菜;ナス、根菜以外であれば好みで使用できる。今日は、ニラ、ブロッコリー、キャベツを使った。

     トウーナー缶小

調味料:醤油、塩、味の素

主材料:ソーメン、サラダオイル

調理法;1.具を油でいためる、味付けをしておく。

    2.麺を茹でる。

ここからが肝心である。沸騰した湯に面を入れ、箸でくっつかないように解す。

麺を入れると湯の温度がおちるが、20~30秒ぐらいで麺が湧き上がってくるので直ぐ箸で麺を摘まみ茹で具合を確かめる。少々芯が残っているのがよい。

麺が浮き上がってきたら、油を小匙1杯分沸騰している湯に注ぐ。

沸騰している湯の中で麺は上下に回転しているので、30秒もすれば油が麺の表面に行き渡る。

ざるに空け、水気を切る。適当な大きさのボールに麺を移し、適当に塩を振る。沸騰水に麺を入れてからボールに麺を移すまで約2分。ボールに移したら箸で麺の解れ具合を確かめる。

麺の表面に薄い油膜が十分に行き渡っているので、麺が1本ずついとも簡単にほぐれるはずである。念のため箸で麺をよく解しておく。

    3.火から下ろした具の鍋に麺を移し具を絡める。これで出来上がり。具を絡めるときに鍋を暖めない。

注意:1.と2.の仕上がりを同時に仕上がるように手順を決めておくとうまくいく。

余談であるが、例年中元や歳暮としてソーメンが5,6箱仏壇に供えられる。今まで処分に困っていたが、これで何とか供えてくれた人に対して不義理をしないでも済みそうである。≫

この門外不出の秘伝で作る「ソーミン・チャンプルー」はきっと絶品だろう。                                             

だが、・・・よせばいいのにY君の「ソーミン・チャンプルー調理の極意」に疑問を呈し質問をしてしまった。

それが同君の「ソーミン・ウンチク」に火をつける結果となった。

因みにY君、大学時代は化学を専攻し、現役時代は外資系石油会社の試験室長を務めていた。

正に火に油を注ぐとはこのことだった。

               *

≪Y君

「ソーミン・チャンプルーの極意」ありがたく拝読しました。

機会があれば試してみようと思うのだが,・・・

一つ質問が、

茹で上げたソーミンがくっついてしまう前に、前以って油でいためてある具にそのまま混ぜてしまえば、ヒト手間省けて麺に油をまぶせられるのでは?(これはあくまで料理をしない男の机上の空論?だが)

つまり茹で上げてざるに入れ油をまぶす間に団子状態になるわけだから直接具の鍋に入れるということ。

質問ついでに、

★「ソーミン・プットゥルー」は「ソーミン・チャンプルー」の失敗作の別称なのか、

それともそれ自体立派な料理なのか。

「ソーミン・イリチャー」という料理はあるのか。

うーん、いや、ソーミン料理は奥深い!

狼魔人≫


                 * 
 
≪Date:  2007年1月24日(水) 午後2時03分
Subject:  RE: [MACS] Re: ソーミン・チャンプルー調理の極意


早速の講読有難うございます。

 さてご指摘の件について試行錯誤の結果を報告します。

茹で上げた麺を直接具の入った鍋に移して具をいためた油を麺に絡ませ一手間省く方法であるが、これにも問題が有る。

 1.具をいためた油は、具に吸収されまたその殆んどは具の表面に付着し、自由な油は、殆んど残っていない。

2.茹で上がった麺を麺スクイですくい上げると、麺は本来非常に水切れがいいのでざるに空けたときと同様に麺スクイの底の部分の麺は、やはり団子になる。

 

 伝授を受けた方法では、1.の油不足を補うためにソーメンをざるに空け、水切りをし、ボールに移して油を掛けまぶすということになっている。

 茹で上がった麺を蕎麦同様に麺スクイですくい上げてもソーメンの場合は水切れが早いので団子になることを避けることは出来ない。

麺スクイまたはざるに空ける方法で底の部分が団子になるのは麺は水切れが蕎麦より早く上の麺の重量により団子になるのである。

麺をすくい上げて1~2秒で既に団子状になっている。30秒も置くと全体が団子になる。扱いにくい代物である。

 僕の極意の方法では、1.で足りない油を、ざるに空けた麺に大量の油を掛け絡めることを避けることと2.の団子になることを避けることを目的としている。

 ”麺を茹でているときに沸騰水に小匙1敗の油をたらす。”これには元油屋としての経験を基にした考察が加わっている。

 
 余談であるが、茹でるという調理方法はパスタ類に共通した調理法である。

パスタの代表として日常的に我々が接するのは、蕎麦、ソーメン、スパゲッティーである。  

  その形状と材質から水切れは、ソーメンが一番早く其の次が蕎麦かスパゲッティーかというところである。

ソーメンとスパゲッティーは、小麦粉、蕎麦はそば粉である。

ソーメンやスパゲッティーを茹でると表面のデンプンが変質しねばねばしたデンプンに変わる。冷麦ではこの粘粘を落とすために冷水ですばやく洗い、スパゲッティーではオリーブオイルを塗すという方法をとる。

 形状は蕎麦が矩形でスパゲティーが円形でその茹で上がりの太さは、この両者は大同小異である。

一方ソーメンは円形でその茹で上がりは、前両者より細い。

何が言いたいかというと、一人前のパスタの体積が同じである場合、表面積は径が細いほど大きいということである。 

 茹で上がった段階でスパゲッティーにも大量のオリーブオイルを掛けるが、それより細いソーメンには、スパゲッティーの2倍ぐらいの油が必要になる。これでは”★アンダクェーボージャーになること必定。

 如何にして少量の油で大きな面積を被覆するか。

そこでひらめいたのが過去の経験である。

2,3滴の油が海面に落ちたら1~2平方mに簡単に広がってしまう。油が海面に落ちたら公害といって騒がれたが、鍋の中ではこの物理現象が非常に有益である。

 油は、表面張力が小さいので水の上では大きく広がる性質があるが、乾いたソーメンの上では広がらない。

乾いたソーメンの上では広がらないので無理やり油を広げるために油が油の上を流れる状況を作ってやる必要がある。それで大量の油が必要になってくるのだ。

 乾いたソーメンの上で広がらないのであればソーメンの表面がぬれている間に油をまぶせばいいと考えたわけである。

幸いなことに、沸騰している鍋の中では、麺が上下に回転しているので麺は、必ず表面を通過し冷えてなべ底へと沈んでいく。

これが短時間に何回も繰り返されるので、水より親和性のあるソーメンの表面に油が簡単にいきわたることになる。以上、

 
 ★ソーメン・プットゥルーは、ソーメン・チャンプルーの出来損ないか、定かでない。定番料理として出てこないのでソーメン・チャンプルーの出来損ないを揶揄したものではないか。ソーメン・イリチーは、聞いたことが無い。これについては、いずれ又の機会にしたい。

  Y ≫

これで「ソーミン・チャンプルー」の実技と理論は飲み込めたと思う。

ソーミンはその性質上、他の麺類に比べて茹で易く逆にそれが仇となって表面の粘りと相まって一寸気を許すと団子状になってしまう。

ソーミン・チャンプルーの極意は麺の団子化との戦いであった。

その点「冷ソーミン」は水に漬かっているので団子化は避けられる。

突然話が変るが、サッカー初心者の子供たちの試合を見ていると敵も見方もボールを奪い合って団子状になるのが常。

指導者はいかに選手同志の距離をとりパスでつなぐか、つまり団子状化を避けるかが直面する問題である。

元石油関連技術者のY君、ソーミンの団子状化防止の極意を昔悩ませられた「石油公害」に見出した。

大海の石油一滴は公害になるが、鍋の油一滴は「ソーミン・チャンプル」の極意につながった。

うーん、やはり、「ソーミン・チャンプルー」の奥義は深い!

 

★狼魔人注:「アンダクェーボージャー」「油食い坊主」と書き、沖縄の伝説上の盗賊で油が好物だった。

★注:「ソーミン・プットゥルー」、プットゥルーとはポテーとした語感から団子状になったものを意味するとこから「ソーミン・チャンプルー」がくっついて団子状になったもの。

【追記】9:08

昔は体も髪も同じ石鹸で洗っていた。

シャンプーやリンスが一般化され始めたのはそんなに遠い昔の話ではない。

未だリンスが普及する前の話。

石鹸で髪を洗うと汚れと共に油分が 取れてしまい、髪が縺れて櫛が通りににくくなり、場合によっては団子状になってしまうことがあった。

そんな時、髪油を使えば良いのだが油がべとつく難点がある。

そこで簡易リンス(すすぎ剤)として洗面器の水に数滴の油をたらし、これで洗髪後の髪をすすげば薄い油膜が髪の表面を包み一種のリンス効果を得た。

昔の女性はこれによって髪の縺れや団子化を防止した。

結局Y君の「ソーミン・チャンプルーの極意」は「簡易リンス」と相共通するものがある。

 

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