「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

地図の活かし方

2015-03-02 23:48:06 | DIG
昨日は京都駅南口近くの京都テルサで、
「京都府災害ボランティアセンター」の関係者を対象に、
広域での災害を想定したDIGの実践セミナー。

一口に広域と言っても、人それぞれ、イメージするものが異なる。
社会福祉協議会で、現場の施設を抱えている方々にとっては、
己の市町村の手に余る話となれば、当然広域ということにもなろう。
「旅の坊主」のように、防災を日々扱っている者からすれば、
南海トラフ巨大地震を意識した都道府県を超えた支援の枠組みづくりを、と言いたいが、
もちろんそれは、市町村社協職員の現場感覚とは違う。

ただ、普段の生活からすれば縁遠いものとは思うが、20年程先の超広域の災害は明らかな訳で、
頭のどこかに、そのイメージを持っておいてもらいたい、という思いも、当然ある。

デジタル地図が当たり前になっている昨今、紙地図でモノを考えるのは時代遅れに思うかもしれないが、
それは素人さんの考え。プロは今でも、紙地図であればこそ活かせることがあることを知っているのです。

今回の広域災害を想定したDIGセミナーでは、3種類の地図を用意してもらった。
それぞれの市町村単位での被害をイメージしてもらう地図として1/25,000図。
市町村境も入り組んでいるので、ピッタリとした地図はなかなか選べないが、
まずは参加者の所属を考え、中丹、京都市内、山城の3つの場所を選んだ。

一つ目の広域災害は、花折断層が動いたらどうなるか、というテーマ。
それぞれの地域は震度6教以上の揺れを受けるか、震度6弱か、震度5強以下で済むか。
これにより、己は支援側か、被災側(受援側)か、が概ね決まる。
花折断層が動くと、京都市内各区は軒並み被災地(受援側)とならざるを得ない訳で、
府下人口約260万人、うち京都市内に約148万人、
震度6強以上の揺れにさらされると思われる人口が単純計算で約156万人となる。

当該市町村は被災側か、独力対応を求められる場所か(震度6弱地域)、支援側かを、
ピンク、黄色、緑のポストイットに市町村名を書いた上で、今度は1/50,000図の府下全図上に示す。
この作業一つで、花折断層時の府内各自治体・各社協間の相互連携をどう考えればよいのか、
大きなアイディアを得ることが出来ただろうと思う。

そして原発の存在。
あくまでアナログ的なみえる化をねらい、A4の紙を細長く繋いだものに「30km」「50km」の矢印を大書させ、
5万図の上に置く。
そうすれば、原発からの避難がどれほど大変か、出来ると言っているのがどれほど絵空事か、一目で理解出来る。

地図は活かしてナンボ。地図を活かすには、多少の知恵は要るが、それは学べばよい。
寺田寅彦ではないが、「地図を眺めて」モノを考える、やはり地域防災はそれが基本。

もう一つの、一段ならぬ数段広域の災害である、南海トラフ巨大地震の広さをイメージしてもらうためには、
1/200,000の地勢図を用意してもらった。

「旅の坊主」にとっては日常茶飯な20万図を前にした語らいであるが、
多くの人にとって、この巨大災害の広さをイメージする経験はなかなかない。
この種の活動をもっと広げていかなくてはならないと、改めて思う。

府災ボラのスタッフに、この3種類の地図を用意してもらった。
当初は、何のために、ということがわからなかったかもしれないが、
実際に地図を使ってのDIGを見てもらえれば、
何を理解してもらうために、どの縮尺の、どの版面の、地図を用意してもらうのが効率的なのか、
わかってもらえたのではないか、と思う。

地図を前にして、その地図を活かして、メッセージを発するのがファシリテーター。
20名ほどと、大人数が参加したDIGではなかったが、
広域災害を考えることの意味、少しはイメージしてもらえたのではないか、と思う。

もちろん、地図を眺めるだけでなく、震度6強の揺れをイメージさせるワークや、
地域の地震被害を見積もらせるワークも実施している。
そこそこの手応えをいただけた5時間でした。

その前後については、どこかで稿を改めて。


コメントを投稿