「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

映画『遺体 明日への十日間』から学び取るべきもの

2015-07-03 22:04:26 | 安全保障・安保法制・外交軍事
ジャーナリスト石井光太さんによる『遺体 震災、津波の果てに』。

現在は新潮文庫で読むことが出来る。
東日本大震災を題材とする多くの本の中でも、長く読み継がれるべき一冊と思い、
学生にも一読を勧めている本である。

金曜日は学外研修日。今日は週明け月曜日に学生に返却するレポートの添削に追われている。
情けないながら、先週末の両日に頼まれ仕事があり、添削が終わらず、2週間分を溜めてしまったがため。
ともあれ、赤ペンでコメントを書きつつ、気分転換にブログ原稿を書いている。

先週月曜日の講義では、その前の週の振り返りが終わった後、
石井光太原作、君塚良一監督の『遺体 明日への十日間』を学生と一緒に見た。

映画HP
http://www.reunion-movie.jp/

時間が足らず、「残りはレンタルビデオ屋等で借りてしっかり見ておいてくれ」となったのだが、
その感想がレポートとなり、目の前に積まれている。

震災後、何回か、この映画&原作の舞台となった釜石市の旧釜石第二中学校を訪問した。
何が出来る訳でもないのだが、小説『遺体』に取り上げられた方々が、ここで活動されていたのか、と、
その場に佇み、その方々に思いを馳せることはしたい、と思ったまでのこと。

現実の重さがある。その現場に携わった方々の思いがある。
それを受け止め活字に起こしたジャーナリスト・石井光太氏の思いがある。
それを読み、映画化を考えた君塚良一監督をはじめとする制作人の思いがある。
脚本は用意したが「それは参考で構わない」として、「感じたままを演じてくれればよい」
「ただ嘘だけは演じてくれるな」という、生半では出せない指示を出した君塚監督の凄さがある。
そして、現実の重さと携わった方々の思いを受け止めて、演技してくれた方々がいる。

現実の重さ、携わった方々の思い、書き手の思い、作り手の思い、演じ手の思い、……。
受け手である学生諸君は、それらの重さ&思いを、しっかりと受け止めてくれているのだろうか。

この話となると、いつも思い出すのは、2011年度に1年生だった女子学生のこと。
授業で『遺体』の抜粋を読ませたところ、「本を貸してくれませんか?」と現れた。
しかしその学生は、それからしばらくして「結局読めませんでした」といって返しに来た。

彼女は、極めて誠実に、この本の重みを受け止めてくれた、と思っている。
感情移入が高ぶれば、そう簡単に読める代物ではない。実のところ、映画も変わらない。
ではなぜ、そんな本を読ませ、映画を見せているのか、との声が飛んできそうだが、
もちろんその答えは明確で、「受け止められるかどうかはどうでもいい。まずは読んでくれ&見てくれ。」
そして、それだからこそ、わかったような&えらそうな、
あえて言うならば「先生受けするような」レポートには何の意味もない。

むしろ、今春卒業した女子学生のように、
「読み進めることが出来ませんでした。」「見続けることが出来ませんでした。」のほうが、
よほど誠実だと思っている。

で、学生レポートの評価は?となるのだが、そこは「お察しください」ということにしておいて下さい。


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