「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

土砂災害教育のキーワードは「住むならどこに?」:尊敬できるプロと一緒に仕事が出来ることの有難さ

2015-08-13 23:50:51 | 防災教育
明日14日の教員免許更新講習「土砂災害理解教育について」に向けて、
午後イチから1時間半ほど、建設コンサルタント業界トップN社のTさんが研究室を訪問して下さり、
最終的な打ち合わせとなる。

何回もブレストを重ねてきて、要素要素については相当具体的なイメージが出来ていたものの、
それらを貫く一本の心棒、それが見えていなかったようだった。

だが、そこは土砂災害の専門家であるTさん、ブレストの中で、心棒に相当するキーワードが見つかった。
それが「住むならどこに?」というもの。

とある高校の全校生徒800名近くに「尾根筋」「谷筋」という言葉を知っているか、と問うた時、
ほとんど全員が知らなかった、というのを、『近代消防』誌での連載の中で触れたことがある。

昨年8月の広島市安佐南区の八木地区を中心とする土砂災害を思い返してみても、
この「尾根筋」「谷筋」を見極め、谷筋とその延長上には住まない、ということ、
このことを徹底すれば、少なくても土石流については、かなりの程度、避けることが出来ると思う。
そして、教員免許更新講習では、そのノウハウを伝えればよいのではないか。
そのことに確証を持てたように思う。

小学校高学年か中学校で(多分前者で)、赤青の色鉛筆を使い、
谷筋と尾根筋を確認して地図上に線を書くようなことをしたと思う。
そのようなワークをもう一度はやっておくことが求められるのだろう。
(という訳で、明日の場合は受講される先生方にやってもらうことになる。)

そして、
「家を買う(土地を買う)前には500円を出して旧版地図を買い、
人間の手によって大きく改変される前の地形をしっかり見て、で、明らかにリスクのある場所は避けよう」
という考え方を先生方に持ち帰ってもらい、何かの際には子供たちに伝えてもらえれば、
それが、基本的なメッセージになるのだろう、と思った。

こう書けば、簡単に思えるのだろうが、このような整理にたどりつくまで、かなりの時間がかかった。
Tさん抜きでは、ここまで整理して考える&示すことも出来なかった、と思う。
防災を生業にしている者として、聞いてもらう人の腑に落ちてナンボ、と思っている。
尊敬できるプロとの議論を介して、ここまで煎じ詰めることが出来たからこそ、
簡単なフレーズ、簡単なワークで、本質を伝える講義が出来るようになった、そのように思っている。

とはいえ、毎度のことながら、前日になってドタバタするのは、情けないところ。
来年、またこのような機会があるかどうかはわからないが、
もう少し段取り良く進められるようにならなくては、であった。