我が背子に我が恋ふらくは
奥山の 馬酔木の花の今盛りなり
万葉集 10-1903
貴方のことを想っている私の心は
(人知れぬ)奥山で咲いている馬酔木のように花 真っ盛りなんです
万葉集の表現の一つの素晴らしさが素直さだとすれば、この詩、まさにその通りですよね。
ところで、下世話な話、馬酔木って、いつも迷ってしまいます。このコンピュータの辞書。アセビだと片仮名にしか変換してくれない。でもアシビだと馬酔木って変換してくれるのです。ところが、アセビが今風の読み方らしいのですね。ウィキペディアでもアセビ(馬酔木)って出て来ますし。
私としては、あせびのはなのいまさかりなり なんて読み方はちょっと違和感があるし。
もう一つ、おまけで
磯の上に生ふる馬酔木を手折らめど
見すべき君が在りと言はなくに
大伯皇女
万葉集 2-166
磯の上に咲いている馬酔木の枝を折ってみたけど
見せたい貴方はもう(この世には)居ないのですね
大伯皇女の弟の大津皇子が謀反の罪で処刑されたのを悲しんで作られた詩なのですね。謀反人の弟のこと、彼の魂が夢の中に訪ねて来てくれたよなんて誰も口にしないのです。