動物村を囲む木々が紅葉の最盛期を迎えていたある日のことです。長老からフクロウ
博士が来ているから集まれとの連絡があり、仲良し3人組はいそいそと長老の家に向か
いました。
ミミ :フクロウ博士はいつも珍しい話をしてくれるから楽しみね。急いで行きましょう。
ポン吉:長老さえ知らない話が聞けるんだぜ。絶対面白いよ。
コン太:急いで来いと言っていたから、何か特別な話かもしれないね。楽しみだな。
仲良し3人組が長老の家に着くと、フクロウ博士と長老が珍しく大きな声で話していま
す。どうやら言い争いをしているようです。
ミミ :長老、フクロウ博士とはお友達でしょう。喧嘩はダメよ。
ポン吉:そうだよ。僕たちに喧嘩を見せたくて呼んだわけじゃないんだろう?
コン太:長老はいつも僕たちに仲良くしろって言っているじゃないか。
長老 :ハッハッハ、ゴメン、ゴメン。喧嘩じゃなくて、あまりにも信じられない話だ
から、それは作り話だろうって問い詰めていたんじゃよ。
博士 :お~、仲良し3人組よ、よく来てくれた。私は事実を話しているのに、長老は
どうしても信じてくれないんだよ。そこで君たちにも聞いてもらおうと思って、
呼んでもらったのさ。
フクロウ博士の話は確かに信じられないものでした。ここから遠くない人間の住む山に
は、夜になると山全体が火事のように燃えているのに、人間たちがその炎の中を楽しそ
うに歩いている場所があるというのです。
火の中を歩けるなんて、とても考えられません。
博士 :私も山火事は怖いので遠くから見ただけなのだが、不思議なことに熱くないし、
煙も出ていない。火の粉も飛んで来ないし、木が燃える時の音も匂いもしない
んだ。だけど、森の中は本当に真っ赤なんだよ。不思議だろう?
長老 :熱くない山火事なんてあるものか、信じろという方が無理じゃよ。
コン太:そこは遠いの?本当かどうかは、行ってみればわかるんじゃないの?
ポン吉:僕も行く。人間のように僕も火事の中を歩いてみたいな。
ミミ :私は怖い。でも長老やフクロウ博士が一緒なら行けるわ。
博士 :隣の山の裏側だから遠くではないぞ。私が道案内をしよう。人間たちの様子に
ついても私が責任を持って見張ることにするよ。
こうして全員で不思議な火の山を目指して歩き始めました。山歩きはお手の物です。
フクロウ博士の的確な案内で思ったよりも速く、目的の山にたどり着きました。
そして山の裏側に回った時、そこには信じられない光景が広がっていたのです。山全体
が真っ赤に燃え上がっているではありませんか!
恐怖で仲良し3人組はブルブルと身震いをしました。
ミミ :大変、山火事だ!早く帰って皆に知らせなくっちゃ。
長老 :ちょっと待ちなさい。フクロウ博士の言う通り、熱くないし、燃える匂いや
パチパチという音もしていないぞ。もう少し近づいて見よう。
博士 :どうだ、作り話ではないだろ?私もここから先は怖くて近づけなかったんだ。
ポン吉:本当に静かだね。でも森の中は真っ赤に燃えている。もう少し近づくと熱く感
じるのかも知れないよ。
コン太:僕は足が速いから偵察してくるよ。熱く感じたら直ぐに引き返すから待ってて。
暫くすると、コン太が興奮した足取りで戻って来て「火の中は熱くないぞ!」と言いまし
た。そこで、全員がコン太の後ろについて行きました。そして、恐る恐る森の中に足を踏
み入れたところ、赤い火の中は全く熱くなんかなくて、幻想的な色に染まった木々がこの
世のものとは思えないほど美しく、あかあかと照り輝いていたのです。
ミミ :まあ~きれい。これが火の中なの?信じられないな。もっと歩きましょう。
長老 :フクロウ博士よ、あなたが正しかった。だが、これは火事ではないぞ。人間は夜
になると周りが見えなくなるので、灯りというものを発明して、夜になるとそ
れを使っているそうだ。その灯りで紅葉した木々を照らしているのじゃな。
博士 :火事ではなかったのか。スマン、スマン。私の早とちりだったな。人間が灯りを
使うことは私も知っておったが、紅葉した木々に灯りを照らすと、火事と見間
違うような燃える赤色になるとは知らなかったよ。
ポン吉:灯りのことは僕たちにはわからないけど、危険なものではないようだね。
コン太:僕たちが知っている森とは全く違う景色だ。うっとりしちゃうよ。
長老 :あんまり奥には行くなよ。人間たちがこの景色を見ながら歩いているようだ。
ばったりと出くわす前に、そろそろ退散したほうがいいぞ。
ミミ :もう帰っちゃうの?真っ赤な森って素敵だわ。もうちょっとだけイイでしょ。
ポン吉:この場所のこと、友達にも教えてあげていいかな?
コン太:僕もお父さんとお母さんに教えてあげよ~っと。
長老 :それはダメじゃ。ここは人間の住む地域で危険がいっぱいだ。
私たちだけの秘密にしておこう。わかったな。
3人組:は~い。分かりました。約束します。
こうして、3人組は森を灯りで照らして楽しむという人間たちの不思議な行動を初めて知
ったのです。火事ではなくて本当に良かったね。
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