ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

モミジとサクラ

2013-12-02 08:08:29 | 日記





モミジ:太陽が出てきたぞ。今日はいいお天気になりそうだ。

サクラ:モミジさん、オハヨ~。だんだん夜が長くなって、冷え込みも厳しいわね。

モミジ:うん、この寒さが僕を輝かせてくれるんだ。冬になる前のほんのひとときだけど

     ね。

サクラ:そうね。ここのところ、あなたの葉っぱがどんどんきれいな色になっていくわ。

モミジ:きれいだろ。僕は秋の主役だからね。

サクラ:あら、私だって1年のうちで一番輝きを増すのは、この時期なのよ。

モミジ:そこが、どうも変なんだよな。サクラが花を咲かせるのは春だぞ。

     それなのに、どうして君は今、咲いているんだい?

サクラ:私は「四季桜」。満開になるのは11月上旬から下旬で春には控えめに咲くのよ。

     私以外にも「不断桜」「十月桜」「コブク桜」「冬桜」など、春だけではなくて、

     秋から冬にかけても花を咲かせる仲間がいるの。

モミジ:へ~ェ、そうなのか。知らなかったな。僕たちがいるこの里山には君の仲間が随

     分たくさんいるよね。

サクラ:ええ、1,200本ほどいるわ。村全体では10,000本なの。村人たちがとても大切

     にしてくれているのよ。

モミジ:そんなに?だから、秋の主役は僕のはずなのに、ちょっと違うような気がしてた

     んだよ。君たちに負けちゃってるのかな。何だか悔しいぞ。


観光客:キレイね~。紅葉と桜のコラボレーションって、他の紅葉名所では、そうそう見ら

     れるものじゃないわよね。しかも、この山にはびっくりするくらいたくさんの桜

     が咲いていて、雪山かしら?と思うほどよね。その中にある紅葉が、これまた

     きれいだこと!お互いが引き立て合って素晴らしいわ~。なんだか夢の中にい

     るみたいよ。


サクラ:ネェ、今の声、聞いた?

モミジ:聞いたよ。「お互いに引き立て合って、素晴らしい」って言ったね。

サクラ:私たちは、そういう関係らしいわ。それぞれが主役で、さらにお互いの相乗効果

     で人間たちが「夢の中にいるみたい」なんて言ってくれるのよ。

     嬉しいじゃないの。

モミジ:そういう事か。君たちと一緒にいられることに感謝すべきだったんだ。

     負けちゃってるみたいで悔しいと言ったけど、撤回するよ。

サクラ:そうね、お互いに精一杯輝いて、観光客たちにモミジとサクラの競演を心ゆく

     まで楽しんでもらいましょうよ。  

(愛知県豊田市小原地区・川見四季桜の里にて)
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