ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

早春の雑木林を彩るスプリング・エフェメラルな仲間たち

2019-03-11 07:29:39 | 日記


1.早春の植物たち

雪が解けはじめた森は、広葉樹がまだ芽吹かず、春の日差しがいっぱい地表に降りそそぎ
ます。そこにはつかの間ですが、「スプリング・エフェメラル」と呼ばれる野草たちが姿
をあらわします。
「スプリング・エフェメラル」とは、春先のはかない命という意味です。早春のごく短い
一時期だけに、大きな花、華やかな色彩を持って姿をあらわしますから目につきますが、
いずれもみんな背が低くきしゃ、そしてすぐに姿を消します。そうした姿や生き方から
「春の妖精」とも表現されています。
早春の花たちのほとんどは、マルハナバチの新女王蜂や低温でも活動するハナアブ科のハ
エ類によって花粉を運んでもらう虫媒花です。春の妖精たちはそれほど多くない活動中の
昆虫の目を引き寄せる工夫をしています。一番多いのが花を小さくして、ガク片を大きく
花弁のように変形させて、大きな花のように見せかけるタイプです。大きな花なら蜜がい
っぱいありそうですよね。他にも、カタクリの花はチョウやハチが好む赤色光や青色光を
反射することで、これらの昆虫を誘引していると考えられています。他にも、目立つ鮮や
かな色彩をしているもの、蜜のある場所を工夫しているもの、花の構造が昆虫の止まりや
すいようにできているもの、そして時間差で複数を咲かせるものなど、それぞれに精いっ
ぱいの工夫が仕組まれています。
 一方、種子散布も昆虫、特にアリを利用して行われます。多くの妖精たちの種子には、
先端に白い団子状のものが付いています。この団子状のものはエライオソーム(種沈)と
呼ばれており、その中にはアリの餌となる物質(オレイン酸などの脂肪酸、グルタミン酸
などのアミノ酸、ショ糖などの糖)が含まれています。そのため、種子が熟すとすぐにア
リが集まってきて、その種子を巣の中に運び込みます。運ばれた種子は巣の中でエライオ
ソームの部分だけ食べられ、残った種子そのものは食べカスとして巣の中のゴミ捨て場に
捨てられたり、巣の外に土と一緒に捨てられたりします。いずれにしても、種子は発芽能
力を失うことなく、運ばれたことになります。アリにとっても、餌となるエライオソーム
を獲得できるので、両方が利益を得ることになり、アリと植物は共存共栄の関係にあります。

それでは代表的な妖精の仲間を紹介しましょう。
 
キンポウゲ科:・セツブンソウ・フクジュソウ・ユキワリイチゲ・キクザキイチゲ
       ・アズマイチゲ・イチリンソウ・ニリンソウ・サンリンソウ
       ・サバノオ・トウゴクサバノオウ・サイゴクサバノオ
       ・ミスミソウ(別名ユキワリソウ)

ユリ科:・カタクリ・アワコバイモ・トサコバイモ・コシノコバイモ・ミノコバイモ
    ・カイコバイモ・ホソバノコバイモ・イズモコバイモ・アマナ・ヒロハノアマナ
    ・ホソバノアマナ・キバナノアマナ・ヒメニラ

ケシ科:・ヤマエ

森や林では春の明るい太陽の日差しが、まだ芽吹いていない木々のこずえを通り抜け、地面
を暖めます。春の妖精たちはこの短い期間に葉を広げ、可憐な花々を咲かせその種子を残し
ます。やがて広葉樹が芽吹き、その枝葉を広げて森や林の地面は暗くなる5月には、次の春に
向けて静かに眠りにつくのです。彼らが地上に葉を広げて姿を見せるのは1年のうち、春先の
2ヶ月足らずの期間です。スプリング・エフェメラル(春先のはかない命)とは、このことを
表現しています。

2.早春の蝶

ギフチョウやウスバアゲハ(ウスバシロチョウ)など、春先のみに成虫が出現する昆虫のこ
ともスプリング・エフェメラルという人もいます。ギフチョウの場合、春先(4月始めごろ)
に羽化した成虫は、すぐに卵を産み、卵はすぐに孵化して、カンアオイなどの食草をどんど
ん食べて成長し、夏には蛹になります。その蛹がそのまま翌春まで、落ち葉の下で休眠して
しまうのです。ウスバアゲハの場合は、春に孵化した幼虫は6月初めに羽化し、成虫は落ち
葉などに産卵し、卵は翌春に孵化します。この生活史がスプリング・エフェメラル的だとい
うわけです。


私がそうであるように、一度スプリング・エフェメラルに魅せられた人たちは、生涯「春の
妖精たち」の観察者であり続ける事になるでしょう。
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