ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

特報! 霧の伊吹山で珍しい生き物に遭遇

2016-07-18 08:00:06 | 日記



2016年7月12日。滋賀県と岐阜県の県境にある伊吹山に向かった老夫婦はドライブウェイ入り口
の料金所に着きました。係員の「山頂は霧が深く何も見えないのですが・・・」との助言に、ひ
るむことなく料金を支払って前進。対向車も追従車も全くいない独占状態。暫くは霧に包まれる
ことはなかったのですが、山頂に近づくにつれ霧が濃くなったため、ライトをつけ、20km/H前後
で白線を見失わないようにしてソロリソロリと運転しました。係員の情報通りの五里霧中。山上
の駐車場には車が約10台のみで、広い駐車場は花の時期だというのにガラ空きでした。

夫: 日頃の行ないがいいから、ほら、霧が急に薄くなってきたよ。これなら遊歩道近くに咲く花
   を観賞するには十分だ。ラッキーだぞ。
妻: 伊吹山のお花畑は、この霧があればこそ。恵みの霧に包まれる花たちの気持ちを私も味わっ
   てみようかな?美しい花を育んでくれる霧に感謝しながらね。
夫: ウワ~、なんというポジティブな考え!ドライブウェイ入り口での情報を聞くと、普通の人
   なら諦めて引き返すと思うけどね。

二人は西登山道口から、山頂を目指して歩き始めました。

夫: 登山道に砂利が厚く敷き詰められていて、随分と歩きやすい道になったね。
妻: 遊歩道にも、私たち以外は誰もいない。こんな独占状態の中で小鳥のさえずりを聞きながら、
   ゆっくりと写真が撮れるのは幸せだわ。ヤマホタルブクロ、カワラナデシコ、ハクサンフウ
   ロ、シシウド、クサフジ、メタカラコウ、クガイソウ、キンバイソウが咲いているわね。
   そういえば、7月中旬にここへ来たのは久し振りよね。
夫: アレッ!?遊歩道の真ん中に金網の柵があるよ。きっと鹿除けだね。遊歩道にまで柵を作る
   ということは鹿や熊の被害がここまで来ているのか。それにしても金網の目が細かい。
   これじゃ、兎などの小動物も通れないよ。貴重な植物を守ることと動物たちの保護をするこ
   ととが両立しなくなったんだね。難しい問題だな。
妻: でも、柵の真ん中にある扉を開けて中に入れば、熊に出会うことは無いわよ。最近、熊に襲
   われたという報道が多いから、そういう意味では安心ね。さてと、これからは私のペースで
   花を写しながら登るから、お先にどうぞ。私が遅れても気にしないでね。

山頂に到着しても、観光客はほとんどいません。僅かに数名の影がチラホラ。土産物店で記念品を
物色し、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の石造前で記念写真を撮り始めたところで、霧が小粒
の雨に変わりました。

夫: どうだい、いい写真が撮れたかな?
妻: 満足できる写真が2枚撮れたわ。タップリと雫を付けたカワラナデシコとこちらを向いた小さ
   なカタツムリよ。それよりも、カメラを雨粒から守るのが大変!
夫: 後で見せてもらうよ。とにかく雨が大粒になる前に、下山しようね。

二人は下山ルートを歩き始めました。その時です。突然霧に包まれた草むらの中から動物が姿を現
わしました。草の周りをなにやら嗅ぎまわっている様子です。

夫: 狐だ!早くここに来て写真を写せ!俺はビデオを回す!
狐: おっといけねえ~、霧が深いから、こんな近くに人間がいるとは思わなかったぜ。だけど、
   濃い霧の中なら俺の姿は見えやしないだろうよ。大丈夫だ。人間と目を合わせなきゃいいん
   だ。俺の名前は霧隠コン太だ。人間なんかに見つかるものか。
妻: ヒャ~、本当にキツネだわ。あっ、消えた!エッ、今度は私の目の前に飛び出てきたわよ。
   パシャ、パシャ、パシャ。
狐: 俺が行きたい場所に人間が立っているから、遠回りになっちゃったよ。人間の近くに長居は
   禁物だ。パシャ、パシャと賑やかな音が聞こえたけど、まさか、俺の姿が見えていたんじゃ
   ないだろうな。ま、いいか。お二人さん、雨が強くなりそうだから、気をつけて帰れよ。
   ところで、俺はなぜ、この時間、この場所へ来たんだろう?誰かに言われて来たわけじゃな
   いんだけど。まっ、深く考えないことにしよう。
   それじゃ、お二人さん行くぜ。バイバイ。達者でナ~。
妻: ア~、もう行っちゃった。うしろすがたのしぐれてゆくか・・・って感じだったわね。

この間、時間としては1分程度でしょうか。狐が消えて行った稜線を暫く眺めていた老夫婦でした
が、我に返ると、二人そろってのガッツポーズ。本当に夢のようなひと時でした。

夫: 今のは、きっと動物村の仲良し3人組のコン太だよ。僕たちに挨拶をしに、出てきてくれたに
   違いない。先日、狐のコン太たちを主人公にした「動物村の七夕飾り」をブログに投稿した
   ばかりじゃないか。この巡り会わせは奇跡だよ。
妻: 私も、あれはコン太に間違いないと思うわ。ブログで動物村の仲良し3人組を取り上げてくれ
   てありがとうと、お礼を言いに来たのよ。絶対、間違いない。
夫: 今日は霧をものともせず、ここまで来たから会えたんだよな。これからも、ひるむことなく、
   臆することなく何にでも挑戦していくぞ。
妻: 但し、自分の年齢だけは忘れないことね。それより、コン太の写真がうまく撮れているかど
   うかが心配よ。濃い霧の中だから写っていないかも。狐だけに化かされただけかもしれない
   し、二度と撮り直しはできないし。早く駐車場に戻って車の中で確認するわ。

二人がどんな興奮状態にあったのか想像できますよね。それにしても、鹿除けの金網があるのに、
どうやってあの狐は山頂のお花畑までやってきたのでしょうか?今回は、たまたま濃霧だったこ
とと人間がほとんどいなかったという偶然が重なり、人間と狐が遭遇したのでしょうが、コン太
がブログ掲載のお礼のために出てきたという説も捨てがたいと思っています。




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