夢職で 高貴高齢者の 叫び

          

新聞紙のような教科書  *ボクの見た戦中戦後(27)

2014年08月17日 | ボクの見た戦中戦後

 昭和21年4月、ボクは国民学校初等科3年生になった。

2年生の時は男女が同じクラスで勉強していたが、3年生以上は男女別のクラスなのだ。男子は松組で女子は竹組である。

先生が新聞紙のような大きさの紙を配り、これが教科書だと説明した。当時の新聞紙は紙質が悪く、現在の半分の大きさではなかったかと思う。

先生の指導で新聞のような紙を二つに折り、さらに二つに折り、折り曲げた所をナイフで切り、さらに二つに折って、折り目を糸と針で縫うと本が出来上がった。

ページを開くと縦書きに文字が並んでいた。これが国語の教科書なのだ。小さな文字で書かれていた。

ボクが姉から聞いていた国語の本の中身とは、まったく違っていた。兵隊のことや神話は書かれていなかった。

日本は戦争に負けて連合国軍の占領下に置かれた。

そして、軍国主義的な教科書の部分は墨塗りされた。

次年度の教科書は暫定的に作られたものであったろうと思う。

4年生になった時には、しっかりと製本された教科書を買うことができた。(当時の教科書は無償配布でなかった)

ボクは今でも3年生の国語の本の内容の一部を思い出すことができる。

「皿のおさかな」という詩や、「良寛さん」が子供たちと遊びながら、たけのこご飯とは、たけのこにご飯粒をつけたものだと言うが、子供たちはご飯の中にたけのこを入れたものがたけのこご飯だと言い合う物語だ。先生は子どもたちの言うことが正しいと説明したが、ボクは良寛さんの言うことが正しいと考えていたので、先生の説明に不満だった。そのため、印象深く覚えているのかも知れない。

「養老の滝」の物語もあった。親孝行息子が滝の水を汲みに行ったら、お酒になっていたというお話だった。先生は親孝行しているから、神様が水をお酒にしてくれたのだと説明してくれた。しかし、ボクはそんなことはない、息子は山の中でこっそりドブロクを作っていたのだと考えていた。

当時、ボクの村の農家ではドブロク造りが普通に行われていたし、ボクも酒米を蒸すお手伝いをしていた。ドブロクを造る過程をそばで見ていたから、山の中でも簡単にお酒が造れると考えたのだ。滝の水が酒になるはずはないと思い、神様が滝の水を酒に変えた話を信じなかった。

「かかし」が雀に米を食べられないようにと見張っている文があった。そこにはかかしのさし絵が描かれていた。強風が吹いてもかかしは「へのへのもへ」の顔をしかめて、風に向かって頑張って立っているというような物語であった。ボクたちは「へのへのもへじ」と平仮名で書きながら、人の顔を描く遊びをしていた。

どの教材も軍人や戦争のことではなく、平和なものになった。

算数の教科書も国語の教科書のように作ったのかも知れないが、思い出すことが出来ない。算数の時間に三角定規を使った。当時の定規は白っぽい金属で作られたものだった。戦争中に作った飛行機の材料の残りと聞いていた。2枚組の定規のある辺を重ねると長さが一致するはずであるが、クラスのどの子の定規も一致しなかったようだ。粗悪品である。

また、そろばんの勉強をした。記憶に残る教科書は新聞紙のような国語の本だけである。

紙が不足していた時代である。子供用の本を手に入れることは出来なかった。学校にも図書がなかった。活字に飢えていたのか、ボクは家でも国語の本を繰り返し読んでいたように思う。



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
2学年下です (70歳旅の途中)
2014-08-17 15:45:38
すけつねさんへ
私は15年2月29日生まれ 昭和21年入学です。
国語で良寛さんの「たけのこご飯」の話懐かしいですねえ。また養老の滝は婦人会のおばちゃんたちが劇をしてそのストーリーを知りました。
家でもどぶろくはつくっていました。私が働いていた村では、有線放送で「税務署が来ました」を繰り返すときは、税務署が摘発きた事を意味する放送でした。

ほぼ同じ時代にいきた来た方だから、相通じる考え方がありますねえ。

実は「子守唄の掘り起し?」に興味があって視聴を試みましたができませんでした。

私は保育の仕事を30数年してきて、幼児期はわらべうたが大事で西洋音楽はその後でいいという、コダーイシステム(ハンガリーの偉大な作曲家のコダーイ)の提唱を受け止めて、その勉強を少ししていたので。
日本の伝承音楽についても関心があります。

またうたごえ運動に永年関わっていたので、昔から歌い継がれている民謡や伝統文化にも関心があります。

また昔話の世界も多少かじって、小澤俊夫さんの講演をきいたり、自分でも子供たちにたくさんの昔話を話してあげました。

なんだか、見当違いのことばかり書いているかもしれませんが、相通じる年代、世界があるのかなぁと思います。
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70歳旅の途中さんへ (すけつね)
2014-08-17 21:30:17
年齢が近く、戦後は私と同じように農村で過ごされておられますので、
共通する体験をお持ちのことと思います。

子守唄の件ですが、私のブログのブックマークを開くことができない場合は、
【岩谷の子守唄】で検索し、ユーチューブをご覧ください。
そして地蔵様の画像をクリックしてください。
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戦後の教科書 (ひろし爺1840)
2014-08-19 10:00:16
>!(*^_^*)!すけつねさん、お早うございま~す!
>お盆休みも終り8月も後半に突入ですね。
> 気候の著しい変化が続いていますので体調管理に気を付けて今週も頑張りましょ~!
>ーーTo You PC--
>良く覚えていらっしゃいますね。
記憶を辿りながら拝読しました。
>ーーMyBlogへのお誘いーー
>('_')今日から四国遍路を再開しますが残暑厳しい時なのでお部屋で観光した気分に成って頂ければ嬉しいで~す!
>('_')ご覧頂いた感想やご意見を楽しみにお待ちしています。バイ・バ~ィ!!
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戦後の教科書 (内野 榮)
2014-08-21 10:11:20
懐かしく思い出します。同世代相通じます。
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