本屋で、もやしオムライスの作り方が書いてある本を見つけた。
早速手に入れ、帰り道にスーパーに寄った。
材料に「合いびき肉」とあるが、俺にはどんな肉なのか分からない。
肉のコーナーで「合いびき肉」という表示を探したが見つからない。
店員に尋ねようとしたが、あいにく見当たらない。
作り方の説明文を読むと「ひき肉を入れて色が変わるまで炒める」と書いてあるから、ひき肉の種類だろう。
だから、豚なら、ぶなんだろうと思って、豚のひき肉をかごに入れた。
もやし、しめじ、ホールトマトなども買って帰った。
まず、トマトソースを作ることにした。
ホールトマト缶詰を開けた。 400グラム入りだ。
俺はこの缶詰を初めて見た。
中にはケチャップ色をした液体の中に、半分くずれかかったようなトマトが入っている。
俺はこれを全部、耐熱ガラスのボールに移して中身をつぶした。
これに、しめじ、トマトケチャップ、バター、塩、コショウを入れてかき混ぜた。
ソースはこんなに多くて良いのかなと、変に思いながら電子レンジで加熱した。
次に、フライパンでひき肉と細かに切ったもやしを炒めた。
それから、ご飯を加えて混ぜ合わせた。
二つのお皿によそった。
これに、電子レンジから取り出したホールトマトのソースをたっぷりとかけた。
女房が2・3度、何か言ったようだが、俺は無視した。
女房はこんな高級料理を作ったことがないだろうから、俺に意見したって、聴くはずがないのだ。
俺は頭に入れた手順が思い出しながら、一生懸命調理しているのだ。
それから、フライパンに卵液を流し入れ、半熟状態にした。
これをソースの上にのせて出来上がりだ。
俺は女房が食べ始めるのをじっと見つめた。
多分、おいしそうな顔になることを期待して見つめた。
そして、女房から感謝の言葉がでるであろうと思った。
ところが、女房の顔がゆがんでいる。
おいしくないのだ。
俺も一口食べてみた。 まずい!!
ご飯が水っぽいのだ。皿の周りに水分がたまっている。
ホールトマトの水分のようだ。
テキストの写真と比べてみた。
テキストでは、ごはんの上に玉子、その上に少なめのトマトソースがかけられてある。
水分らしきものはない。
しかし、俺のは、まるで違う。
ご飯の上に水っぽいトマトソースが、たっぷりとかけられ、その上に玉子がのっているではないか。
順序が逆だ。
それに、余分な水分が皿のふちに溜まっている。
玉子だけは何とか食べられるが、ご飯は水っぽくて、まずくて食べられない。
なぜ、水っぽくなったのか、俺には分からない。
しかたがないから、俺はトマトケチャップを容器から絞り出してご飯にかけ、味付けをして口の中へ入れた。
あと味が悪い。
いつまでも、口の中が変な感じだ。
(レシピ)
(俺の料理)
《上から順に、半熟玉子、ホールトマトのソース、炒めご飯、余分なな水分、50年前に買った皿》