映画館や美術館などでは、シニアは入場料が割り引きや無料になる所がある。
65歳以上とか、70歳以上とか、年齢設定は会場によりことなっている。
割り引かれると得した気持ちになり、再度訪ねたくなるものだ。
普段は自分の年齢を言いたがらない女房も、この時ばかりは、高齢者であることを隠さない。
市内の映画館では、「シニア」と告げるだけで割り引かれるが、ほとんどの所では運転免許証などの身分証明書の呈示が求められる。
東京都美術館へ行ったときは、身分証明書を持っていなかったが、JRの大人の休日倶楽部のクレジットカードでOKだった。
カードには生年月日が書かれていないが、65歳以上でないと会員になれないことを担当者が理解していたからだ。
先日、某植物園へ行った。入園料は500円だが、70歳以上は1割引きとのことだ。
女房は運転免許証で割り引いてもらったが、俺はあいにく持っていなかった。
窓口の高齢女性は女房と一緒に来た俺に、「身分証明書を見せないと割り引かない」と言う。
俺は帽子をとって白髪頭を見せたがダメだった。
生年月日と干支を言っても、「ダメ・ダメ」。
証明書がないと絶対ダメとのことだ。
マニアルに忠実に受付係をしている高齢女性の姿は御立派とも言える。
しかし、白髪や顔のしわや、素振りなどを一目見ただけで超高齢者と分かるはずだ。
50円ばかり割り引かれなくても良いのだが、「ダメ・ダメ」と言われると、なぜか俺の心の奥底から、いたずら心がムクムクと湧き出てきた。
何とかして割り引かせようと考える。
何かお芝居をして、高齢者であることを示せばよいのだ。
そうすれば、シニア割引券をゲットできるかも知れない。
失敗すればもともとだという気持ちがあるから、気は楽だ。
俺はバックから、おもむろにカードケースを取り出す。
中には商店のポイントカードや図書館のカードなどが10枚ほど入っている。
俺は「カードに生年月日が書いてあるものがあるかも知れない」と言いながら、一枚ずつゆっくりとカードの表裏を調べ始めた。
生年月日が書いてあるはずはないことを十分知っているのだが、相手の反応を眺めながら楽しむのだ。
「生年月日が書いてあるカードはなかった」と残念そうに告げた。
彼女は俺を無視している。 割引券を貰えそうがない。
それで、俺は次の手段を考える。
手帳の末尾に年齢早見表があることを思い出した。
それには、家族の誕生年に赤丸をしてあるのだ。
俺は手帳を見せながら、「この丸印は俺の生まれた年だ」と説明したら、「証明にはなりません」と断られた。
俺のお芝居はこれでおしまいだ。 もう降参だ。
俺はのらりくらりとバッグに手帳をしまい、カードを1枚ずつケースにしまい始めた。
すると、「450円でいいよ」とのことだ。
てきぱきと、マニアルのとおりに受け付けをしていた高齢女性は、俺の、のらりくらり作戦に我慢が出来なかったようだ。
50円得したよ。(^^♪
50円サービスされたのでは、また植物園に行こう。
今度は証明書を持っていくからね。