2015-08-15
8月15日、70年前の今日は、やっと戦争から解放された日だ。
記念すべきこの日に、奈良岡朋子の「黒い雨」の朗読を聴いた。
会場は、宇都宮市のパルティホール。
ステージ中央の椅子に腰かけた彼女は、井伏鱒二の「黒い雨」を朗読する。
★閑間重松シゲ子夫妻は、同居している姪の矢須子を嫁がせようとしていた。
先方の仲人から、矢須子が8月6日に、何処にいたかを尋ねる手紙がくる。
8月6日、矢須子は爆心地から遠く離れたところにいたが、叔父夫婦の安否を確かめるために、広島へ向かう途中、瀬戸内海の船のなかで黒い雨を浴びていた。
黒い雨を浴びた矢須子は原爆症に罹り、次第に身体が崩れていく。
矢須子を入院させ、出来る限り看病する重松とシゲ子。
(結びの文章)
★今、もし向こうの山に虹が出たら、奇跡が起こる。
白い虹ではなくて、五彩の虹が出たら矢須子の病気が治るんだあ。
どうせ叶わぬことと分かっていても、叔父さんは向こうの山に目をうつして、そう占いました。
でも、私はこうして生きています。
どうして生きているのだろうと考えてみますが、いくら考えても分かりません。
8月6日のあの一日は、私の中では、ぽっかり空いた悪夢でした。悪夢以上の何かとしか言えません。
その中から、叔父さんは叔母さんと私を連れ出してくれたのです。
最後に何か言おうとすれば、やはり、こういうことでしょうか。
叔父さん叔母さんありがとう。
ありがとうという言葉以外には、何も思いつきません。
本当に本当にありがとう。