ボクの見た戦中戦後(9)
*夜な夜な亡霊が二つ*
同級生の兄が復員してきた。 どこで戦ってきたのかは聞かなかったが、敗走しているときに、怪我か病気で動けなくなった戦友を置き去りにしてきたらしい。
その兄の所へ、夜な夜な亡霊が二つ現れるという。
寝ている枕もとで、亡霊は兄の名を呼んで起こし、
「ヨクモ~オレヲ~オイテイッタナ~」
と、凄みをきかせるということだ。
同級生の兄はおそらく南方の島々に出兵されていたのではないだろうか。
軍の幹部は本土防衛のためにと、島々の兵隊たちを釘づけにしていた。 食料も弾薬さえも送らない状態だった。 援軍を送ることも、救助にも向かわなかった。 捨石にされたのだ。
残された兵隊たちは、なにを食べて生き延びようとしたのだろうか。 飢えに苦しみ、病気に苦しみ、敵の砲撃でジャングルを逃げまどい、多くの兵が死亡したであろう。
置き去りに去れた者も、生き残った者も悲惨だ。