これだけの情報量の作品を書きあげた著者の力量には感服するが、残念ながら物語そのものの面白さはどこかに消えてしまい、読むのがとにかく苦痛だった。
十二国記の初期の作品はストーリーの展開がとても面白く、次には何が起こるのだろう、次の展開はどうなるのだろうと読むのが本当に楽しみだった。
しかし、本作は、驍宗の行方や、ラストの展開が多分そうなのだろうと読んでいる途中で思ったとおりの展開で全く驚きがない。そして、そこに至るまでがひたすら長い。やたらたくさんの登場人物が次から次へと出てくるが、設定集を読まされているようでひたすら苦痛。そして、無駄に長いにもかかわらずラストが中途半端に終わり、伏線が回収出来ずと、なんでこんな構成にしたのか疑問が残る。
ひとえにこれは、著者が大作家になってしまい、編集がダメ出しをできなくなったことに原因があるのではないか。
文章を徹底的に削って、1から3巻をまとめた上巻で驍宗の消息に決着をつけ、4巻を加筆修正の上で下巻とし、上下2巻の作品とすれば戴国の完結編として気持ちよく読むことができたと思う。
可愛さ余って憎さ百倍という諺があるが、期待値が大きかった分、落胆もまた大きかった。