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宇奈月温泉事件の現場を見る

2011-11-25 | 旅行・交通




今回はかなりマニアックな話題である。宇奈月温泉事件と聞いて、西村京太郎シリーズや女子大生が温泉で殺される安い湯けむりドラマを連想してはいけない。法律学を学んだ人なら、「民法総則」のかなり最初の方(あるいは法学概論あたり)で遭遇したはずの裁判事件である。有斐閣の民法判例百選の最初の判例である。事件というと一般的には犯罪っぽいのだが、単なる私人間の争いごとに関する裁判である。

この単なる一つの裁判が有名になったのにはわけがある。昭和10年のこの事件の概要は次のとおりである。
宇奈月温泉は、上流から引湯管(木管)で湯を引いていたが、全長7kmのうち6mほどがAの土地を利用権を持たずに通過していた。同地は急斜面の荒地だったが、原告XがAからこの土地を譲り受け、隣接するXの土地約3000坪と合わせて時価の数十倍の価格で買い取るようにYに要求し、Yが拒否すると、Xは土地所有権に基づき引湯管の撤去を求めた。

大審院(今の最高裁)は、Xの請求が「権利の濫用」であるとしてXの請求を棄却した。すなわち、Xにとっては利用価値のない土地で、請求を認めて引湯管を撤去すれば宇奈月温泉と住民に致命的な損害を与えることになり、このような結果をもたらす請求は所有権の目的に反するものであり、権利の濫用であって認められないとしたものである。

この引湯管、もう木管ではないが、今も黒薙温泉から山の斜面を通って延々と引かれているのが現地で実際に確認できる。宇奈月温泉から黒部峡谷を欅平に向かうトロッコ列車の車窓からも、川の反対側の斜面にはっきりと眺めることができる。知らないと何かわからないだろうが、トロッコ列車のアナウンスでもちゃんと説明がある。もちろん事件については触れてくれないけど。

ところで、驚いたことにこの宇奈月温泉事件の石碑が宇奈月温泉のはずれの方に建っているのを発見した。温泉街の中心部からは川を渡った対岸の上流にあり、近くに橋もないので、普通ではなかなか行かない場所である。石碑には、事件の内容と判決要旨が簡潔に記載されている。この説明文は、高岡法科大学が書いたようで、なかなかわかりやすかった。

この事件は、宇奈月温泉や宇奈月町にとっては死活問題であったようで、宇奈月温泉公式サイトや現地で目にしたいくつかの印刷物にも宇奈月温泉の歴史として記載されているし、観光マップにも石碑の場所が記載されている。ただし、旅館の仲居さんに聞いてみると、やはりテレビドラマの話だと思っていたようだ。(わかりにくいが、上の写真で画面下を左右に走っているのが送水管である。)

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1 コメント

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旧(大岡)E町の話 (ベル3)
2012-09-15 12:35:02
浅見探偵が出てくるのはT大仏市と風の盆市のみ。トロッコ辺りの殺人事件は無い。因みに某県ではラムサール認定町と竹人形町で事件は起きた。しかし、管つながりでどこかの合併町のようで。反古にされたその後は何も変わらない。
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