京都大学などの入学試験で、試験問題の一部をネットの掲示板に書き込み、回答を求めていた事件が話題になっている。
入学試験といえば大学の最も重要な行事の一つで、どの大学もかなりナーバスになっていて、試験官の目を盗んでケイタイに文字入力などということができるとはちょっと考えにくい話である。トイレに持ち込めばデータ送信は可能だろうが、さすがに試験問題までは持ち込めないだろう。
ところで、カンニング自体を罰する法律はちょっと見当たらない。答案は自分の文書だし偽造でもないので私文書偽造罪も該当しないだろう。カンニング自体ではないが、入試問題をネットに書き込んだことで著作権法違反か。入試問題も大学の著作物だろうから、該当する可能性はあるが、一般に過去問などのネットへの書き込みはよくあり、今回だけ罰するのは公平でないだろう。
大学側は偽計業務妨害罪での告訴を考えているそうだが、それはちょっと無理なのではと思う。偽計業務妨害罪は、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の業務を妨害すること」が構成要件であり、当然のことながら「業務の妨害」に対する故意が必要である。ただし、「危険犯」なので実際に妨害されることは必要とされない。
彼(あるいは彼女)が、例えば大学に恨みがあり、大学の入試業務を妨害しようと思ってネットに書き込んだのなら該当する可能性があるが、そうではなくて、自分がズルをして合格したいためにネットに書き込んだのなら結果的に業務が妨害されたとしても故意は認定し得ないだろう。
やった者を擁護するつもりはまったくないが、罪刑法定主義が原則である。また、国が勝手に持ち込み禁止にすると息巻いても何の権限もない。地方からの受験生など持ち込み禁止と言われても預ける場所もない。さきのビデオ流出事件といい、感情だけが先行した非論理的な議論は危険である。
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