尖閣諸島の漁船衝突事故のビデオが流出した。どう考えても内部関係者の意図的な流出としか思えない。政府関係者は大慌てで原因究明や再発防止に当たっているそうで、政権の危機管理能力を憂う声もあるが、問題は違うところにもあると思う。
内部流出とすれば国家公務員法(守秘義務)違反であり、法を犯した者を擁護することはできないが、海上保安庁などには流出を歓迎する電話やメールが多く来ているという。また、霞が関はじめ多くの公務員や国民の間に「奇妙な共感」(日本経済新聞)が広がっているそうだ。申し訳ないが、その気持ちはとてもよくわかる。
この「奇妙な共感」は、船長を釈放した弱腰の外交やビデオを秘匿した国民の知る権利の侵害などに対する抗議から発生している部分もあるだろうが、政治主導という名のもとに、ちぐはぐな「主導」を行い、ときに責任を役人に押し付けたりして混乱を招いている政権への強い批判への共感でもあるだろう。
部下はリーダーの従属物ではなく、すなわち、役人は閣僚の部下だが従属物ではない。リーダーにビジョンがない、あるいはあってもそのビジョンに部下が共感できないような組織はこういう行く末をたどることになる。自分たちの属する組織のことを考えてみて心当たりがある人も多いのではないのではないだろうか。決して他人事ではない。