およそ20年前に読んだ(はずの)村上春樹の「ノルウェイの森」をもう一度読んでみた。上巻は赤一色、下巻は緑一色の表紙がツヤツヤで美しく、持って歩くだけでおしゃれな雰囲気であった。当時はそういうブームだったのだろう。カバーを掛けたくない本であった。文庫とあわせて1000万部売れたらしい。
読み返してみると、ストーリーなどはほとんど忘れており、最初にルフトハンザ機でドイツに着陸するシーンから始まったかな、ぐらいは覚えているものの、ほぼ新しい本を読む気持ちで読むことができた。モノ忘れがひどくなるのも、何度も感動を味わえて得する面もあるようだ。
今読み返しても、なかなかおもしろい作品である。ただ、村上作品の独特の表現、例えば緻密な描写であったり、気の利いた比喩であったり、登場人物のもって回った言い回しであったり、そうしたものがこの作品の場合は前後の作品に比べるとかなり薄められているような気がして、そういう部分が村上ファン以外を巻き込んで国民的ヒットにつながったのかもしれない。
ついでに、映画の方もDVDを借りてきて見たが、こちらは予想どおり今ひとつだった。原作には忠実で(一部重要な部分がカットされているが)、登場人物のせりふもほぼそのとおりだし、どこが悪いというものでもないが、小説とは別のものだ。やはり繊細な村上春樹の作品を映像化するのは、無謀な試みのように思う。
ところで、この映画、70年代ごろの大学生を描いたものであるが、当時を再現するために、とある大学の築45年の学生寮でロケが行われたのだが、そこはまさに自分が学生時代の一時期に住んでいた場所である。映画ではあのころ(少し自分と時代は違うが)の演出がされているが、今もほぼそのままの姿で残っているようで、とてもなつかしい。(写真下がその建物)
ブログランキング参加中=いいね!と思っていただけたらクリックをお願いします