外の流しの、空になった赤いポリバケツの底に、
抜け殻と蝉が転がっていた。
不運なことに、ここが脱皮の場所になったようだ。
羽の片方は折れ曲がり、もう片方も乾く時に伸びきることができなかったのだろう、
小さかった。
つまみ出そうとしたら、いびつな羽で、それでも飛ぼうとしてか、
力の限り短くばたついた。
まだ生きている。
赤いポリバケツの底で死を迎えさせたくはないと思った。
ひと時でも蝉らしくと。
つまみ上げ、近くの木の葉の上に置いた。
だだ置かれている。
葉が大きく揺れれば地面に落ちるだろう。
そして、自然の摂理どおりに土の上の虫たちの食物になる。
1度も飛ぶことも鳴くことも叶わずに。
庭に響き渡る蝉時雨は、
いのちの歓喜の歌声であり、
弔いの声
抜け殻と蝉が転がっていた。
不運なことに、ここが脱皮の場所になったようだ。
羽の片方は折れ曲がり、もう片方も乾く時に伸びきることができなかったのだろう、
小さかった。
つまみ出そうとしたら、いびつな羽で、それでも飛ぼうとしてか、
力の限り短くばたついた。
まだ生きている。
赤いポリバケツの底で死を迎えさせたくはないと思った。
ひと時でも蝉らしくと。
つまみ上げ、近くの木の葉の上に置いた。
だだ置かれている。
葉が大きく揺れれば地面に落ちるだろう。
そして、自然の摂理どおりに土の上の虫たちの食物になる。
1度も飛ぶことも鳴くことも叶わずに。
庭に響き渡る蝉時雨は、
いのちの歓喜の歌声であり、
弔いの声