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キャラメル (2007/レバノン=仏)(ナディーン・ラバキー) 80点

2009-03-05 13:12:37 | 映画遍歴
むせ返るような女のさまざまな色。男の僕が見ていて恥ずかしいほど女の深部を掘り下げる。色は反射しさらに混沌としていく。これぞ世に言う女性映画なんでしょう。5人の女性の色鮮やかな群像劇をきびしくそして哀しく見させてもらいました。

美容院が女性たちの話の中心地だ。不倫真っ最中の若き女主人。エレガントでものすごく魅力的。大輪の花のような美人って彼女のことを言うのかな。気になる妻の足の爪を磨く屈辱の姿勢。それが彼女の今の置かれている状態だ。浮気女の品定めに来ている妻と対峙する女主人との対決シーンはきりりと緊張感があり、実にうまい演出だ。絶品。

もうアガッテいるのに見栄を張る中年女性。こんな見栄は前代未聞。恐ろしい。女性は怖い。やはり女性って不思議です。

そこはかとなく漂う同性愛の女たち。きれいな女なのになあ、プラトニックなのに髪をなでるタッチはとても肉感的だ。これも不思議。

結婚するために処女幕再生手術を実行する若い女の話が一番つまらなかったかなあ。センセーショナルとでも思ったのか。

痴呆症で且つ紙の収集狂の姉と同居している老女。人生のターニングポイントだったのに結局飛び立てず今いる場所に留まる。分かる。やはり人生は、「見る前に跳べ」なんだよね。考えたら駄目なんだ。深いなあ。

音楽も素晴しく弦楽器でマッチしており、深い読後感に浸ることの出来る秀作でした。レバノンの政治情勢はこの映画の場合一切関係なしで、人間洞察の鋭さは驚くばかりです。男の僕と女性とは見る視点が少々違うのかもしれませんが、その類まれなラバキーの才能には舌を巻くばかりです。もっと世に知られていい秀作です。

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