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自縄自縛日記

國分功一郎『スピノザ』

2022-12-30 10:16:31 | 思想・文学

國分功一郎『スピノザー読む人の肖像』(岩波新書、2022年)。

この17世紀の哲学者についてどう捉えたらよいか。自分が以前に主著『エチカ』を読んだかぎりでは、完全性(実体)は神にのみありそれは唯一のものだ/様態などひとつのあらわれに過ぎない/人間精神もまた様態のように不完全でしかありえない/不完全性を知ることが精神向上への唯一の道である/それをしないこと(無知)はドレイへの道である、といった思想だと理解した。

本書は新書にしては厚めだけあってとても丁寧。

無限の完全性がある以上「なにか他の体系としての外部」はあり得ないし、それどころか、身体の外部についても、混乱した観念しか獲得できないということになる。つまり我々の意識とは「身体の変状の観念の観念」であり、我々はひとまずはそれを通じてしか世界と関与できない。ルイ・アルチュセールがスピノザを「ねつ造」して無数の出来事が偶然の出逢いや偶発時のように並行し雨のように降っていると想像したことも(市田良彦『ルイ・アルチュセール』)、ジル・ドゥルーズが世界について「たえずさまざまの個体や集団によって組み直され再構成されながら」形成されていると書いたことも(『スピノザ』)、ミシェル・フーコーがそこに無数のアーカイヴの可能性を見出したことも(『知の考古学』)、あらためて納得できる。おもしろいなあ。

それでは自由とはなにかと言えば、その意識のあり方がもたらす結果であるとする。こうなると確かに著者のいうように『エチカ』は実践の書。

●スピノザ
ジル・ドゥルーズ『スピノザ』
スピノザ『エチカ』
市田良彦『ルイ・アルチュセール ― 行方不明者の哲学』


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