Sightsong

自縄自縛日記

スピノザ『エチカ』

2014-06-22 22:48:23 | 思想・文学

スピノザ『エチカ』(中公クラシックス、原著1675年頃)を読む。(なお、本版の邦題は『エティカ』とされているが、『エチカ』の方が通りがよい。)

300年以上前、スピノザの死後に公開された倫理の書である。

今頃こんなものを読んで面白いのかねと訊かれれば、まあ、確かにさほど面白くはない。定理によって体系的にまとめられたものではあるが、今の目で見れば決して体系的とは言えず、同じことを繰り返すのみ(定理はもっとシンプルで必要十分なものであるべきだ)。しかも、説明のための幾何学がいかにも中途半端。

かれの主な言い分はいくつかある。

完全性(実体)は神にのみあるのであって、しかもそれは唯一のものである。様態のごときものは実体の個々のあらわれに過ぎぬ。人間精神もまた同様なのであって、それぞれ不完全であらざるを得ない。善だの悪だのといった判断は、不完全なこちら側での不完全な決めつけである。だからこそ、不完全性を知ること、不完全な個々の人間同士を知ることが、精神向上への唯一の道である。如何に完全を希求しても不完全でしかあり得ない、しかし、それをしないこと(無知)は、ドレイへの道である。・・・といったところか。

所詮、個々の人間のセルフコントロールなんて何百年経っても進歩しないものであるから、確かに、読んでいると叱られているような気がしてくる。その意味では、アフォリズム集としても「使える」。新しい自己啓発本として『スピノザの言葉』とかどうかね。もう出ていたりして(確かめる気にもならないが)。


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