Sightsong

自縄自縛日記

むらさきの色に心はあらねども深くぞ人を思ひそめつる(Albedo Gravitas、Kみかる みこ÷川島誠)@大久保ひかりのうま

2017-11-06 22:42:15 | アヴァンギャルド・ジャズ

大久保ひかりのうま(2017/11/5)。

■ Albedo Gravitas

Keiko Higuchi ヒグチケイコ (vo, ds, p)
Sachiko (vin, vo, electronics)
Shizuo Uchida 内田静男 (b)

ヒグチケイコとSachikoによるユニットAlbedo Fantasticaに内田静男が加わり、Albedo Gravitas。

ヒグチさんは細いスティックとマレットとを使ってドラムを叩き、容赦なく破裂をもたらす。Sachikoさんの呪うようなヴォイスと内田さんの揺れ動きが増幅され、そのこだまが悪夢となって浸透してくる。ふたりのヴォイスは音叉のようにうなり、やがて禍禍しくも奇妙に神聖な世界が形作られる。苦しみの運命か、狂か凶か。Sachikoさんのピアニカもでんでん太鼓もどこか郷愁を呼び起こすものだ。内田さんのベースがみぞおちを叩き、それは身体を共振させて内臓を抉ってくる。そしてヒグチさんが身体を捩じらせて弾くピアノもまた不思議に神々しく響いた。

■ Kみかる みこ÷川島誠

Mico Kみかる みこ (as, ds, p)
Makoto Kawashima 川島誠 (as)

はじめはアルトの競演。みこさんはマウスピースを深めに咥え、音の中心部において不安定なあやうさをつくっている。一方の川島さんはじわりと音世界ににじり出て、やがて、その音は現状に我慢できないように上下左右に痙攣しのたうち回る。

みこさんがバスドラムを叩いてびりびりと周囲を縮緬のように震わせ、アルトを吹く。川島さんは濃霧を切り裂き、大声で哭き叫びも咽び泣きもする。ふっと気を抜き、そして声が失われた喉でうなり、美しい唄へと変わってゆく。「家路」のような懐かしい旋律の断片をまきつつも、川島さんは、辛さに震えながら再び叫ぶ。

川島誠のブロウを聴いていると、人間が生きのびるために発する声そのものだと感じる。それは戻るべき物語を持たない自己目的の声である。

やがて川島さんは脱出できない隘路に入ってしまう。突破に向けて這いずりまわる者の音。みこさんはピアノを弾き、ドラムスを叩き、またピアノを弾く。この振幅のおそろしさ。ふたりはすべてを絞り出した。

Fuji X-E2、Pentax-K 18mmF3.5、XF60mmF2.4

●ヒグチケイコ
Psychedelic Speed Freaks/生悦住英夫氏追悼ライヴ@スーパーデラックス(2017年)
Kiyasu Orchestra Concert@阿佐ヶ谷天(2017年)
第三回天下一Buzz音会 -披露”演”- @大久保ひかりのうま(2017年)

●内田静男
内田静男+橋本孝之、中村としまる+沼田順@神保町試聴室(2017年)

●川島誠
#167 【日米先鋭音楽家対談】クリス・ピッツィオコス×美川俊治×橋本孝之×川島誠(2017年)
川島誠『Dialogue』(JazzTokyo)(2017年)
Psychedelic Speed Freaks/生悦住英夫氏追悼ライヴ@スーパーデラックス(2017年)
川島誠+西沢直人『浜千鳥』(-2016年)
川島誠『HOMOSACER』(-2015年)


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