Sightsong

自縄自縛日記

マーク・トウェイン『バーレスク風自叙伝』、『ジム・スマイリーの飛び蛙』

2015-09-13 22:02:15 | 北米

マーク・トウェインの短編集を2冊読む。『バーレスク風自叙伝』(旺文社文庫、原著1871-1898年)と、『ジム・スマイリーの飛び蛙』(新潮文庫、原著1862-1898年)。どれも法螺話や与太話の類だが、これが矢鱈と愉快で、とても百年以上前に書かれたものとは思えない。トム・ソーヤーやハックルベリー・フィンの語り部のイメージだけでとらえていては、この作家の魅力を十分に味わうことができないのだということが、よくわかった。

前者所収の「西部の無法者 ジャック・スレイド」は、凶悪でありながら人間関係の手管を駆使して権力者となった男を描いている。おとぎ話のようでありながら、突き放して笑い飛ばすユーモアがあって、西部劇はこれでなければなと思った次第。だから、クリント・イーストウッド『許されざる者』は根本的に駄作なのだ。

後者所収の「風邪を治すには」や「経済学」は思わず声を出して笑ってしまうほどの騙りの技。「失敗に終わった行軍の個人史」は、南北戦争においてひたすらにミジメな目にあった若者たちの物語。アメリカではベトナム戦争時にも再度読まれたという。今また、戦争のリアル(システムではなく、精神の)を味わうに最適な短編ではないか。

そして「How to Tell a Story」は、前者では「秘伝 上手な話し方のコツ」と、後者では「物語の語り方」という邦題で翻訳されている。大久保博、柴田元幸ともに名翻訳家ではあるが、個人的には、文章がやわらかい柴田訳。いずれにしても、実際に人前で話すコツは得られないのだが。

●参照
マーク・トウェイン『トム・ソーヤーの冒険』


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