マルクス・ガブリエル『なぜ世界は存在しないのか』(講談社選書メチエ、原著2013年)を読む。
ここで著者がいう世界とは、すべてを統合的に説明し、すべての原理となり、すべてを包むものとしてのありようだ。しかしかれはそれを否定する。宇宙もまた別の形ではあるが、やはり否定する。
なぜか。かれによれば、数多くの(無数の、ではない)小宇宙が、あるいは対象領域が、たんに並んで存在するに過ぎないからである。逆に言えば、世界以外のあらゆるものが存在する。その存在は、文脈を抜きにしては考えられない。
語り口は平易だ。何と言うこともない思想に思えるかもしれない。しかし、この思想に付き合うことには大きな意味があるように思える。なぜならば、これは、ひとつひとつの存在を何か(世界など)に従属すると想定してしまう思考回路を、徹底的にしりぞけるものであるからだ。得られる大事な考えは、たとえば、「果てしない意味の炸裂」である。そして、思考は「人生の意味」にも辿り着く。
「人生の意味の問いにたいする答えは、意味それ自体のなかにあります。わたしたちが認識したり変化させたりすることのできる意味が、尽きることなく存在している―――このこと自体が、すでに意味にほかなりません。」