Sightsong

自縄自縛日記

ジョン・ミッチェル『追跡・沖縄の枯れ葉剤』

2014-11-05 07:49:07 | 沖縄

ジョン・ミッチェル『追跡・沖縄の枯れ葉剤』(高文研、2014年)を読む。

ベトナム戦争において米軍が多量散布した枯葉剤は、それを浴びた人々を死に至らしめただけではなく、多くの出生異常を二次的、三次的に引き起こす結果となった。ここまでは、従来の常識である。

この数年で新たな常識になったことは、太平洋戦争では日本に対して、朝鮮戦争では朝鮮に対して、米軍が枯葉剤を含む化学兵器を使用したがっていたということ(すなわち、ベトナム戦争は活用の機会)。ベトナムへの出撃拠点たる沖縄において、枯葉剤を密かに貯蔵するのみならず、試しに使っていたということ。その危険性を、米兵にも、もちろん沖縄の住民にも、まったく知らせなかったこと。少なくない量の枯葉剤を、杜撰に埋め立て処分したこと。知花弾薬庫からの毒ガス漏出事件(1969年)とジョンストン島への移送(1971年)の際に(森口豁『毒ガスは去ったが』)、毒ガスだけでなく枯葉剤も処分の対象となっていたこと。

著者は、元米兵や、沖縄の元基地労働者に対して取材を行い、裏付けを行っている。元米兵たちは、証言によって、被害を認定する退役軍人省に報復されるのを恐れ、なかなか口を開かなかったという。丹念かつ執拗な取材があってこそ明るみに出た史実なのだろう。

枯葉剤を浴びた人たちを通じて、また不適切に廃棄されたことが認識されていない場所を通じて、この恐るべき戦争犯罪の被害はまだ終結していない。

●参照
『米軍は沖縄で枯れ葉剤を使用した!?』
沖縄タイムス中部支社編集部『基地で働く』
枯葉剤の現在 『花はどこへ行った』
石川文洋写真展『戦争と平和・ベトナムの50年』
石川文洋講演会「私の見た、沖縄・米軍基地そしてベトナム」
石川文洋『ベトナム 戦争と平和』
大宮浩一『石川文洋を旅する』
森口豁『毒ガスは去ったが』
伊藤千尋『新版・観光コースでないベトナム』
ノーム・チョムスキー+ラリー・ポーク『複雑化する世界、単純化する欲望 核戦争と破滅に向かう環境世界』
ノーム・チョムスキー+ラレイ・ポーク『Nuclear War and Environmental Catastrophe』


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。