磯部涼『ルポ川崎』(CYZO、2017年)を読む。
本書を手に取ったのは、川崎という街が好きであることや話題になっていたことが理由だが、なんとなく裏面を露悪的に見せてくれるのではないかと無意識に期待していたのかもしれない。しかし、そのようなものではなく、意外にもかなり真面目なルポであり、とても面白い。
川崎には色街があり、貧困があり、不良文化があり、やくざの構造があった(ある)。かれらがその生活から脱出する手段のひとつが、ラップだった(である)。
また、在日コリアンだけでなくさまざまなルーツを持つ人たちが多く集まっている。必然的に、個々のアイデンティティを、自問自答の形でも社会的にも問いなおさざるを得ない。ヘイトデモへのカウンターも、ラップも、そういった違いの数々を吸収し、人々の連帯のツールとして機能したというのである。
ああ、なるほどなあと不意をつかれた。コミュニティの変遷史としても秀逸。