Sightsong

自縄自縛日記

ジャン・サスポータス+矢萩竜太郎+熊坂路得子@いずるば(齋藤徹さんの不在の在)

2019-05-19 09:24:01 | アヴァンギャルド・ジャズ

大田区のいずるば(2019/5/18)。

Jean Sasportes (dance)
Ryotaro Yahagi 矢萩竜太郎 (dance)
Rutsuko Kumasaka 熊坂路得子 (accordion)

ジャン・サスポータスのダンスを観るのは、2013年に齋藤徹さんが行ったプロジェクト『ユーラシアンエコーズII』以来だ。ヴィム・ヴェンダース『Pina』に愛犬スロッギーとともに登場するジャンさんも観た。ジャンさんは、テツさんの具合が良くないこともあって、急遽来日したのだった。そんなことを、ドイツに住むダンスの皆藤千香子さんからも聴いた。

会場に入ると、ジャンさん、矢萩竜太郎さん、熊坂路得子さんの3人がストレッチのような体操をしている。楽しそうだ。

始まる前には、竜太郎さんのアイデアで、皆で目を瞑ってテツさんに祈りを捧げた。ここからの休憩なしのパフォーマンスには大きな驚きがあった。路得子さんはふたりを見つめて優しくアコーディオンで介入する、千夜一夜物語の跳ねる魚のように。竜太郎さんは身体にも気持ちにもとても柔らかいバネがあるように跳ね円環を描いた。

そして、ジャンさんの踊りである。動きも佇まいも明らかに何かを超えている。静かで変わった動きもするのに欲や作為が皆無であり、そこに存在することの必然性がものすごい力で伝わってくる。ダンスを観てこんなふうに動かされたのははじめてだ。

終盤、ジャンさんは観客を次々に招き入れては一緒に舞った。ダンサーもそうでない人もいただろう。子どもも、竜太郎さんのお父さんも。路得子さんも竜太郎さんも、躍るみなさんも笑っている。共に在ることへの礼讃である。

実はこのとき、既にテツさんは亡くなっていた。公演が終わるまでは伏せておかれたのだろう。しかしここにはテツさんが確実にいた。おそらくこれからも色々な場にいることだろう。テツさん、安らかに。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、7artisans 12mmF2.8

●ジャン・サスポータス
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章
(2013年)

●矢荻竜太郎
齋藤徹+久田舜一郎@いずるば(2019年)
齋藤徹+沢井一恵@いずるば(JazzTokyo)(2019年)
近藤真左典『ぼくのからだはこういうこと』、矢荻竜太郎+齋藤徹@いずるば(2019年)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)

●熊坂路得子
酒井俊+会田桃子+熊坂路得子@Sweet Rain(2018年)
うたものシスターズ with ダンディーズ『Live at 音や金時』(2017年)
TUMO featuring 熊坂路得子@Bar Isshee(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)