福岡のNew Comboで行われた、蓮見令麻・長沢哲デュオ(2019/2/20)。その際に録画されたものを観た。
Rema Hasumi 蓮見令麻 (p, vo)
Tetsu Nagasawa 長沢哲 (ds)
最初はそれぞれのソロ。それももちろん良い。しかし、むしろ、興味はデュオで何が起きるかにある。そしてそれは対話の過程として目が醒めるようなものだった。
蓮見さんは言葉を発し、長沢さんはブラシの領域の響きで世界を醸成しようとする。ここで蓮見さんが「What is the word?」と呟きピアノを弾いた直後に長沢さんが横の鐘で星を散らし、ちょっとぞくりとさせられる。ブラシにはノイズが混じってゆき、やがて、ドラムというマテリアルがマテリアルであることに開き直ったような迫力があって、それならばとピアノも並走し、強度が増してゆく。マレットに持ち替えると音が複層性を増し、それによる別の世界を創ろうとするように見える。
再び蓮見さんが言葉を紡ぐ、それに呼応する長沢さんのマレットは次の展開にむけて思索しているようだ。飛翔するピアノ、リズムを頑なにキープするドラム、このあたりに緊張感が走っている。発展させる響きが楽器によって異なることは当然なのだけれど、それらの差異と重なりとにずっと意識が引き寄せられる。スティックによる覚醒もその後にやってくる。そしてマレットとピアノとで、不思議なほど喜びが沸き起こってくる時間が訪れる。また鐘により星が空に撒かれる。
アンコールによる短めの演奏も、その共有しえた音世界をもとにしているようで、聴いていて嬉しくなってしまう。
●長沢哲
長沢哲+齋藤徹@ながさき雪の浦手造りハム(2018年)
長沢哲+近藤直司+池上秀夫@OTOOTO(2018年)
齋藤徹+長沢哲+木村由@アトリエ第Q藝術(2018年)
#07 齋藤徹×長沢哲(JazzTokyo誌、2017年ベスト)
長沢哲『a fragment and beyond』(2015年)
●蓮見令麻
蓮見令麻<COSMIC SOUNDSCAPE>@公園通りクラシックス(2019年)
Seshen x 蓮見令麻@喫茶茶会記(2017年)
蓮見令麻@新宿ピットイン(2016年)
蓮見令麻@荻窪ベルベットサン(2015年)