宮城大蔵、渡辺豪『普天間・辺野古 歪められた二〇年』(集英社新書、2016年)を読む。
1996年の日米SACO合意によって、普天間の返還はいつの間にか辺野古新基地建設とパッケージにされてしまったわけだが、実は、それさえも最初の形から極めて変質していた。その変質は、橋本首相が大田知事にサプライズで合意を迫ったときの曖昧さから、必然であったように思えてくる。
橋本首相は、大田知事に突然の電話をかけて、普天間返還を伝えるとともに、隣にいたモンデール大使に電話を替わり、そのモンデール大使が大田知事に対して「県内移設を条件として」と説明したのだと回顧している。しかし、それは「アメリカ」をだしにした虚構であった可能性があるという。この構造は、民主党政権時代にも過剰に機能した。
さらに、その「代替施設」も「ヘリパッド」に過ぎなかった。それが20年経った今では、機能を大幅に強化した辺野古新基地の建設強行に変貌している。過剰な政治化がもたらした歪みそのものだ。その暴力的な手法に抗して、沖縄の「民意」は逆に基地反対に収斂せざるをえなかった。
著者は次のように書いている。「後世、「なぜあのような愚策を」と指弾されることが避けがたい辺野古での「現行案」に対するあまりに近視眼的な執着」と。
●参照
渡辺豪『「アメとムチ」の構図』
渡辺豪『国策のまちおこし 嘉手納からの報告』
屋良朝博『砂上の同盟 米軍再編が明かすウソ』
前泊博盛『沖縄と米軍基地』
琉球新報『普天間移設 日米の深層』
琉球新報『ひずみの構造―基地と沖縄経済』
宮城康博・屋良朝博『普天間を封鎖した4日間』
大田昌秀『こんな沖縄に誰がした 普天間移設問題―最善・最短の解決策』
新崎盛暉『日本にとって沖縄とは何か』
新崎盛暉『沖縄現代史』、シンポジウム『アジアの中で沖縄現代史を問い直す』
櫻澤誠『沖縄現代史』
由井晶子『沖縄 アリは象に挑む』
ガバン・マコーマック+乗松聡子『沖縄の<怒>』
いま、沖縄「問題」を考える ~ 『沖縄の<怒>』刊行記念シンポ
林博史『暴力と差別としての米軍基地』
沖縄タイムス中部支社編集部『基地で働く』
高野孟『沖縄に海兵隊はいらない!』
高橋哲哉『沖縄の米軍基地 「県外移設」を考える』
エンリコ・パレンティ+トーマス・ファツィ『誰も知らない基地のこと』
押しつけられた常識を覆す
『世界』の「普天間移設問題の真実」特集
浦島悦子『名護の選択』
浦島悦子『島の未来へ』