インターネット新聞JanJanに、小波津正光『お笑い沖縄ガイド 貧乏芸人のうちなーリポート』(NHK出版、2009年)の書評を寄稿した。
>> コント「お笑い米軍基地」芸人の『お笑い沖縄ガイド』を読む
著者は沖縄出身のお笑い芸人である。本書の冒頭では、まず、著者はウチナンチュ(沖縄の人)を体現する振りをして、ヤマトンチュ(内地の人)が沖縄に対していかにも抱きそうな幻想をすかし、からかい、砕く。ガチンコ対決ではなく、肩すかしだ。いきなり笑いのツボを刺激されてしまう。例えばこんな風だ。
Q.「沖縄旅行に行ったら、お土産にはなにを買えばいいですか?」
A. 「基本的には海ぶどう(フィリピン産)とマンゴー(台湾産)だよね。余裕のある人は琉球ガラス(ベトナムの工場で作られたやつ)かな。(略)地元の人はほとんど買わない「海人(ウミンチュ)Tシャツもお勧めやさ。」
特別にしつらえたステージと日常との間に、飄々と裂け目を入れているのである。そして、その「日常力」を生み出す現実の日常を紹介している。これがまた、ひたすら面白い。
ところが、著者がずっと行っている舞台「お笑い米軍基地」のコントとなると、無防備に笑うことへの躊躇が生じてくる。
もちろん、それは面白い。しかしそのとき、ウチナンチュと日常を共有してこなかった私(=ヤマトンチュ)は、後付けの<学習>に基づく土台の上に立ってギャグを受け止めているわけである。だから、受け止める時点で既に、当方の身体はあちこちに力が入ってカチコチになっている。頭で理解するギャグと、おそらくは多くのウチナンチュが日常、常識といったものへの<くすぐり>として感じるギャグとでは、全く効果が異なるに違いない。仕方のないことである。
著者は、2004年、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した事故のメディアにおける扱われ方が、沖縄と内地とで大きく違うことに怒りを覚え、この「お笑い米軍基地」を思いついたのだという。理不尽な敵には笑いで闘え、である。快哉を叫びたい話だ。
しかし、他人事ではない。ヤマトンチュが、自分たちだけの常識を疑ってかかるようでなければ、米軍基地と同様に、ヤマトンチュももっと彼らに笑い飛ばされてしまうぞ。それは今よりももっと恥ずべきことだ。まずは、みんなで彼らの差し出す裂け目を覗き込み、笑ってみようじゃないか。笑えないとしたら、その人はいつか裂け目に足をとられるのだ。
ここには書かなかったが、国頭村の奥間では、国頭村民と一緒だと、米軍基地の施設に出入りできるそうだ。初めて知った。その中のレストランで出てくるハンバーガーの話など爆笑。
奥間には、良い民宿の「やんばるくいな荘」がある。ここにある某航空会社のリゾートホテルよりも(泊まったことはないが)。歩いて行ける桃原(とうばる)の海岸も、チキンカツサンドがやたら大きい「パーラー三角」もお薦めだ。