4月20日の衆議院で、菅直人議員(民主党)から、沖縄の「集団自決」に関する教科書検定について質問があった。それに対して、伊吹文明文科大臣と安倍晋三首相の答弁がなされた。(『きっこの日記』から知った)
伊吹・安部両氏ともに、質問への回答にまったくなっていないのは明らか。
図らずも、今回の教科書検定に理屈が通っておらず、逆につつかれると痛い点であることを示している。
ちょっと長いが(↓最初の1時間ていど)、閲覧の価値があると思う。
衆議院TV
◆
今回の『週刊金曜日』(2007/4/20号)には、高嶋伸欣氏(琉球大学教授)による『文科省の沖縄「集団自決」軍関与抹消を許さない』という記事がある。
●従来の検定前の教科書について、文科省が「正誤訂正」の指導をしないことは、今回の検定に自信がないことのあらわれ
●岩波・大江訴訟を検定の一根拠にすることは違法
●もともと文科省の「検定基準」は、係争中の事象は最終判決まで待つとするものだった筈
●検定関係規定の解釈や運用を恣意的にするのは職権濫用(家永裁判の根拠)
●仮に慶良間諸島で直接隊長の命令がなくても軍の責任は問われるべき
●下村官房副長官は「自虐的教科書は官邸でチェックする」としている
(※上記、伊吹文科大臣の「検定にはタッチしていない」発言と矛盾)
●安部首相まわりの諸右派団体の動きと連動
●沖縄は勿論、海外メディアも関心を示しているが、本土の関心が低いのは残念
といった指摘である。
◆
ところで、『日本誕生』(稲垣浩監督、1959年)をDVDで観た。
しょぼさ、情けなさは今回の答弁と同等のレベル。
しかし中世以来千数百年、記紀を中心に「わが国の神話はこれにするからな」とトップダウンで周知されてきたこと、天皇制の正統性はそれと結びつけられていること、明治の近代化と軌を一にした神話復興などを考えれば、「しょぼい映画」と笑ってもいられないのだ。
三船演じる日本武尊は、記紀神話とは異なり、直接大和政権に裏切られ倒れる。その骸から白鳥が飛び立つところなどは、神話上の英雄を神話よりさらに美化する。最近の「男たちの大和」だとか、「俺は、君のためにこそ死ににいく」などの軍人美化と同じではないか(観ていないので無責任な発言)。同じ創世神話を扱ったジョン・ヒューストンの『天地創造』とは、どうしようもない無邪気さという点では共通しているが、偏った愛国心の推進が見えるだけにこちらのほうがタチが悪い。
『日本誕生』、興味があるのはマニアックなところだけ。
天照大神(原節子!)が閉じこもった天岩戸の前で、呼び出そうと、アメノウズメノミコト(乙羽信子!)がコミカルでエロチックな踊りをする。『日本神話120の謎』(安本美典、勉誠出版)によると、記紀神話に沿って、アメノウズメの満たしているべき条件として、以下の6点を挙げている。
●手に笹の葉または矛を持つ。
●裳(スカート)をつけている。
●ヒカゲのカズラでタスキをしている。
●マサキのカズラまたはサカキを髪飾りとしている。
●乳房をかき出している。
●紐が陰部に垂れそうになっている。
同書では漫画や北斎の画やこの映画などを比較し、得点付けをしている。それによるとこの映画は7点満点の3点。他も同様の得点レベルだが、東宝映画1000本を記念した映画にしてはあまりにもお粗末なのだった。
政府が「なかったことにする」つもりの「集団自決」も根拠はお粗末、冗談ではすまない。
日本武尊(三船敏郎)の骸から白鳥が飛び立つ
神々の間で踊るアメノウズメノミコト
伊吹・安部両氏ともに、質問への回答にまったくなっていないのは明らか。
図らずも、今回の教科書検定に理屈が通っておらず、逆につつかれると痛い点であることを示している。
ちょっと長いが(↓最初の1時間ていど)、閲覧の価値があると思う。
衆議院TV
◆
今回の『週刊金曜日』(2007/4/20号)には、高嶋伸欣氏(琉球大学教授)による『文科省の沖縄「集団自決」軍関与抹消を許さない』という記事がある。
●従来の検定前の教科書について、文科省が「正誤訂正」の指導をしないことは、今回の検定に自信がないことのあらわれ
●岩波・大江訴訟を検定の一根拠にすることは違法
●もともと文科省の「検定基準」は、係争中の事象は最終判決まで待つとするものだった筈
●検定関係規定の解釈や運用を恣意的にするのは職権濫用(家永裁判の根拠)
●仮に慶良間諸島で直接隊長の命令がなくても軍の責任は問われるべき
●下村官房副長官は「自虐的教科書は官邸でチェックする」としている
(※上記、伊吹文科大臣の「検定にはタッチしていない」発言と矛盾)
●安部首相まわりの諸右派団体の動きと連動
●沖縄は勿論、海外メディアも関心を示しているが、本土の関心が低いのは残念
といった指摘である。
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ところで、『日本誕生』(稲垣浩監督、1959年)をDVDで観た。
しょぼさ、情けなさは今回の答弁と同等のレベル。
しかし中世以来千数百年、記紀を中心に「わが国の神話はこれにするからな」とトップダウンで周知されてきたこと、天皇制の正統性はそれと結びつけられていること、明治の近代化と軌を一にした神話復興などを考えれば、「しょぼい映画」と笑ってもいられないのだ。
三船演じる日本武尊は、記紀神話とは異なり、直接大和政権に裏切られ倒れる。その骸から白鳥が飛び立つところなどは、神話上の英雄を神話よりさらに美化する。最近の「男たちの大和」だとか、「俺は、君のためにこそ死ににいく」などの軍人美化と同じではないか(観ていないので無責任な発言)。同じ創世神話を扱ったジョン・ヒューストンの『天地創造』とは、どうしようもない無邪気さという点では共通しているが、偏った愛国心の推進が見えるだけにこちらのほうがタチが悪い。
『日本誕生』、興味があるのはマニアックなところだけ。
天照大神(原節子!)が閉じこもった天岩戸の前で、呼び出そうと、アメノウズメノミコト(乙羽信子!)がコミカルでエロチックな踊りをする。『日本神話120の謎』(安本美典、勉誠出版)によると、記紀神話に沿って、アメノウズメの満たしているべき条件として、以下の6点を挙げている。
●手に笹の葉または矛を持つ。
●裳(スカート)をつけている。
●ヒカゲのカズラでタスキをしている。
●マサキのカズラまたはサカキを髪飾りとしている。
●乳房をかき出している。
●紐が陰部に垂れそうになっている。
同書では漫画や北斎の画やこの映画などを比較し、得点付けをしている。それによるとこの映画は7点満点の3点。他も同様の得点レベルだが、東宝映画1000本を記念した映画にしてはあまりにもお粗末なのだった。
政府が「なかったことにする」つもりの「集団自決」も根拠はお粗末、冗談ではすまない。
日本武尊(三船敏郎)の骸から白鳥が飛び立つ
神々の間で踊るアメノウズメノミコト