四季の彩り

季節の移ろい。その四季折々の彩りを、
写真とエッセーでつづって参ります。
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「恋歌」に

2013年12月22日 11時02分57秒 | 短歌
 今回の歌集出版は私にとって、ささやかながら一大事業でした。短歌を志し詠まれる方のほとんどは 「いつかは歌集出版を!」と思っていると言ってもいいかも知れません。 しかし、作品の数、何よりも出版に値する作品の水準、質さらには、経済的な理由等々から あきらめている方も多いのがこの世界の現実と思っています。従って出版に値しない短歌ばかりの 拙い歌集であっても、出版までこぎつける幸運に恵まれたことは、細君の大きな協力と後押しが あったればこそと心から感謝しています。また、歌集をご覧頂いた方から温かな歌評と励ましを 頂き、この場をお借りし御礼を申し上げたいと思います。

 なお、作品の中に少なからぬ、いわゆる「恋歌」があり、細君のいらぬ心配を招いたことも否めませんでした。私の短歌、特に恋歌は、詠ったいきさつも背景、 情景も含めて仕事の場で出会った方、友人たちとの交流、さらにはボランティアの場で出会った 方達のイメージを膨らませて「作品」 として詠んだものがほとんどです。しかし、その作品が細君に癒しがたい不安を与えた事実は、私の作品作りの在り方として重く受け止めていきたいと思っています。

 細君は50代後半に大手術を受け、その施術の際に 声帯に傷つけ声が出なくなるという事態に陥りました。そこから来る不安、厳しさ、辛さを耐え偲び 乗り越えた細君の健気さを改めて感じています。よく頑張ったねと…。それらの経緯を 一番身近にいる夫として、見て、感じて理解し、心痛めてきたことも事実です。 一日として気の晴れることのない日々であったとも思っています。この事態の重さ、厳しさゆえに慰めの歌一首も詠めない自分の弱さを改めて知らされる思いが 致しました。

 長い苦悩と治療の後、病院の耳鼻咽喉科の診断で細君の喉に病巣もなく声が出るようになった瞬間の喜びは、涙の出るほど嬉しかったと今でも鮮明に思い出します。また、好きだった千葉へ旅行に行けるまでに回復した日も、同様に嬉しかったと記憶しています。

 なお、細君の母、私にとっては義母になりますが、結婚当初から不思議に馬が合い、 お会いすることが楽しく、一緒にいて癒される方でした。決して饒舌な方ではありませんでしたが、 四国遍路の旅を少女のように目を輝かせて語ってくれた事を懐かしく思い出しています。 そんな義母を詠んだ短歌は今回の歌集に載せることが出来ませんでしたが、改めて細君への想いとともに、 何首か掲げたいと思います。

     ☆ 秘めてなお気品の滲む義母(はは)なれば訪ねる度に温さ極まる
     ☆ 黒髪に楚々たる風情醸しつつ義母(はは)の語りし旅は楽しく
     ☆ 饒舌に遍路の旅を語りいる義母(はは)の瞳に妻と我あり
     ☆ 母という その哀しみと誇りをも黙して包む義母(はは)の生涯
     ☆ 幾たびもたつきの危機を救われし義母(はは)の温もり今にして思う
     ☆ 襲いくる術後の辛さ厳しさを分つに重き君が現実
     ☆ 病む君を見守るのみの吾なれど重き苦悩を共に担わん
     ☆ 襲いくる病いの不安と絶望を呑み込み耐えし君が半生
     ☆ 輝ける歩みに遠きものなれど君と歩みし道に悔いなし
     ☆ 越え来たる山坂泥道ぬかるみも妻の存在あればと思う
     ☆ 地固まる その理(ことわり)を諭すがの君の優しさ我の宝と

 今回は、木枯らしが吹きすさぶ中でも凛と咲く冬薔薇(マチルダ)の写真を載せます。
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