一昨日の深夜に放送された「決断なき原爆投下ーー米大統領71年目の真実」(NHK)は、見事なルポでした。
17発の原子爆弾を用意したアメリカ軍。
直前までの軍の方針=まず1発目は一般市民多数が住む京都へ投下。
これは、スティムソン陸軍長官(文民側)の強い反対により回避。
しかし、広島は日本軍の街という軍部の報告にだまされたトルーマン大統領。
トルーマンは、ポツダムからの帰りの船中ではまだ軍のウソに気付かず、ホワイトハウスに戻り、はじめて事実を知り、
「こんな破壊行為をしたのは、大統領のわたしの責任だ」と言い、うな垂れた。
その半日後、わすかの時間差で止められなかった長崎投下。
トルーマンは、8月9日の手紙に書いているー「人びとを皆殺しにしてしまったことを後悔している」と。
3発目以降の軍の計画は中止させたが、
トルーマンは、大統領として軍の最高責任者でもあり、2回の投下を正当化せざるをえなかった。
長崎投下の24時間後、全米のラジオ放送で、「戦争を早く終わらせ、米軍の犠牲者を減らすために投下した」という放送の直前に加えられた「ウソ」と、それを流布せざるをえなかった現実。ナチスのみならず、ここでも「悪」の凡庸。
赤裸々に真実に迫るこのルポは、
軍人と政治家の対立という問題を超えて、
人間存在の愚かさと悲しさ、
国家と戦争の現実を深く想わせ、
言葉を失う。
怒りや悲しみと共に、静かで奥深い感動に襲われる。
この《最優秀番組》(制作はNHK広島)というほかない見事なルポ、再放送とのことですが、再々放送も。
これは、いまの中学生以上は、皆が見るべき深い内容の番組だと思いますので、学校でもぜひ。
真実のもつ力。
武田康弘
本文と題を直しました。