東京大学総合研究博物館で10月24日まで開催されいる「鉄ー137億年の宇宙誌」展を視にいってきました。
鉄という人類にとって非常に身近な金属を、宇宙開闢137億年の時間軸の中から考えようという壮大な企てです。
しかし会場は東京大学総合研究博物館奥の300㎡強の狭い空間です。展覧会場というよりは展示室という表現が適切でしょう。
展示の構成について紹介ホームページには
>こうした内容を展示という形で示すには困難があった.それは私たちが,10年前や100年前という,直感的に理解しやすい時代のみならず,数10億年前という感覚的には捉えにくい時代の現象についても,議論しようとしている点である.当然のことながら,100万年前の現象を,10年前のものと同じように細かく解析することはできない.しかし10億年前の現象よりは遥かに多くの物的証拠が残されているため,その年代に比べると詳しい議論を展開することができる.こうした状況は,ビルや山の上から周辺を観察することに類似している.つまり私たちに近いほど細かく観察することが可能であり,遠くなるほど解像度は落ちるのである.ところで解像度が低いからといって,科学的意義が少ないというわけではない.ビルに登ったとき,遠くに見える山を思い出して頂けると,ここで意図することがご理解頂けるであろう.その山の表面の細かい構造は見えないけれども,全体的な輪郭はむしろ捉えやすいはずだ.このような現象に常に直面している天文学や地球惑星科学の研究者は,時間スケール(時間尺度)という概念に慣れ親しんでいる.彼らは,ある現象を議論する際,適切な尺度の時間で考えると,その現象の本質をよりよく理解できることも知っている.例えばある現象が一定の時間間隔で繰り返し生じることもよくあるわけで,ある時間スケールで物事を見るということは,それよりも短い時間スケールで生じる現象も織り込んで考えるということになる.そこでこの展示では,時間スケールを10の冪乗であらわし,その冪を一つずつ繰り上げていくことで,137億年を概観しようと考えた.私たちはこれを,Powers of Ten Yearsと呼んでいる(表1).本展示ではさまざまな分野において第一線で活躍されている研究者の研究成果が多く紹介されるが、それらはPowers of Ten Yearsの形で整理されて展示されている.>
と書かれています。
"錆びない、柔らかい、塩酸に溶けない"など鉄の常識を覆す、話題の純度99.9999%の超高純度鉄(チラシの右上の金属)よりも、宇宙開闢からの137億年という時間を、10の冪乗の時間スケールで表現するというコンセプトが目玉の展示の展覧会だと思います。
この展覧会を視るためには、この展覧会にあわせて発刊された、鉄学137億年の宇宙誌 (岩波書店)を先に読んでいく必要がありそうです。
と、いうより読んでいかないと、企画者の意図が伝わらないと思います。
博物館という物理的な空間・時間の制限を越えるためコンセプトは魅力的です。
コンセプチュアル・アートとしての博物館展示と思って視ると更に魅力的です。
P.S.
写真撮影禁止の展示物の中で唯一「撮影可」だった展示物?
鉄欠乏症のイネと正常なイネが育てられています。
冷蔵庫のような人工気象器の中で育てられています。