オランダ風説書―「鎖国」日本に語られた「世界」 (中公新書)松方 冬子中央公論新社このアイテムの詳細を見る |
4月29日、「オランダ風説書―『鎖国』日本に語られた『世界』―」の著者松方冬子さんの講演を渋谷の「たばこと塩の博物館」に聴きにいきました。
現在「たばこと塩の博物館」では日蘭通商400周年記念展「阿蘭陀とNIPPON~レンブラントからシーボルトまで~(~7/2)」を開催しています。この講演は企画展の関連イベントです。
日本人の海外渡航を禁じていた江戸時代、オランダ東インド会社によって派遣された貿易船の船員がもたらした西欧および世界の情報を、応対した長崎通詞によってまとめられたオランダ風説書(ふうせつがき)についての講演です。
オランダ風説書は江戸時代200年以上にわたって江戸幕府に定期的に届けられました。鎖国日本においても江戸幕府は常に世界情勢について関心をもっていた証です。
オランダ風説書によって江戸幕府に世界の情勢がどのように伝えられたか、伝えられなかったかがお話の中心でしたが、小生の関心はオランダ東インド会社についてどんなお話が聴けるかでした。
小生がボランティアをしている中近東文化センターで開催されている企画展「海を渡ったペルシア陶器 ~17世紀中国・日本・イランの陶磁器貿易~(~6/20)」のキーワードのひとつが実はオランダ東インド会社なのです。
オランダ東インド会社は17世紀初頭成立した世界最初の株式会社で、ポルトガルやスペインのように貿易の目的の中に"布教"が入っていない純粋に営利目的な会社でした。
17世紀中頃、中国の明朝から清朝に移行する混乱期に、中国からの陶磁器の安定貿易が出来なくなったオランダ東インド会社が目をつけたのが、ペルシア陶器と生産されはじめたばかりの日本の磁器でした。
「海を渡ったペルシア陶器 ~17世紀中国・日本・イランの陶磁器貿易~」展ではこの時代のペルシア陶器や景徳鎮や日本の有田が比較できるように展示されています。
その中にはオランダ東インド会社のマーク(VOC)が書かれた大皿やアラビア語の言葉がかかれた中国陶器なども出展されています。
「たばこと塩の博物館」の「阿蘭陀とNIPPON」展にも、同様のオランダ東インド会社の注文で作られた磁器が展示されていました。
この二つの展覧会は、一枚の大皿から17世紀の世界情勢を読み解く旅に出発できると思います。
松方氏の講演でオランダおよびオランダ東インド会社の「性格」が少し判ったような気がします。
17世紀オランダ全盛時代、経済的に厳しかったイギリスが発行した国債を、近視眼的利潤追求のため購入したことにより、その資金でイギリスが産業革命を成功させヨーロッパの覇者となってしまい、オランダの没落が始まったという見解は現代にも通ずる示唆を含んだ話だと思いました。
イギリスとの覇権争いに敗れて1799年、オランダ東インド会社は解散しました。それにもかかわらずオランダ船は長崎出島に入港、オランダ風説書は数は少ないですが作られていきました。ミステリーです。
帰り「たばこと塩の博物館」ならびのAPPLE STOREでMACのカタログを要求したら店員に「一切紙のカタログは置いていません。WEBでご覧ください」と返答され、少々凹んで帰宅しました(笑)。